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【働く30代を癒す“現代短歌”のすすめ】自分でも歌を詠んでみよう!初心者のための短歌のはじめ方

読者として短歌を味わうのもいいけれど、実際に詠んでみるのもおすすめ。言語に対する感覚がさらに豊かになるはず。歌人東 直子さんに初心者のための短歌のはじめ方を教えていただきました。スーパーバイラーズが詠んだ短歌にも注目。

歌人東 直子さんに聞く 初心者のための短歌のはじめ方

自身の創作活動はもちろん、数々のメディアで選評も行う歌人が伝授する、短歌をつくる方法と楽しみ方。

歌人・東 直子さん

短歌を詠むことで、自分の感性や言語感覚が研ぎ澄まされます

1990年代から作歌を始め、30年近く第一線で活躍中の東さん。今の短歌シーンをどう捉えていますか?

「2010年頃からX(旧Twitter)が普及し始めたのを機に、若い人が言葉で自己表現し、短歌を発表したり読んだりする場が増えました。その流れは今も続いていて、短歌はブームを超えてひとつのカルチャーとして定着したと思います。私の場合は結社という短歌を学ぶ会に所属して第一歌集を出版しましたが、SNSが発達した今は、結社の師匠からお墨つきがないとデビューできない、みたいな空気もないですし。いろんな方法で楽しめる時代になったのは嬉しいことです」

これから歌をつくりたい人は何をすればいいですか?

「様々な短歌作品が載ったアンソロジーを読み、先輩たちの作風を学んでみましょう。ある程度、歌がつくられた時代の時系列もわかる本だといいですね。並行して、作歌の入門書からルールを学ぶことも大切です。実際に歌をつくり始めるときは、まず心が反応したことをメモに残す習慣をつけてみてください。私も最初から五七五七七の形にまとめることはなく、そのメモから感情を掘り起こし、イメージを飛翔させて三十一音にしています。完成したら新聞や雑誌に投稿したり、歌会に参加して周りの意見を聞いてみたりするといいですね。最近はWeb上で開催する歌会もありますよ。喜怒哀楽を自分の言葉で詠む現代短歌は、感性を解き放ち、のびやかにしてくれるはずです」

東 直子さんが教える、短歌創作を楽しむための4Step

【Step1】歌集や入門書を読み、短歌に慣れる!

【Step1】歌集や入門書を読み、短歌に慣れる!

「おすすめは解説つきの短歌のアンソロジー本と具体的な入門書、両方を読むこと。好きな歌人や歌を見つけながら作歌の技術を学ぶことで、短歌の世界を理解しながら創作に入っていけます」

【Step2】自分の心が動いた瞬間をメモしてみる

【Step2】自分の心が動いた瞬間をメモしてみる

「箇条書きのようなメモでもいいし、簡単な日記をつけてみても。その瞬間や一日に感じた自分の思いを書き留めておくと、短歌をつくる際にイメージをふくらませやすくなるんです」

【Step3】メモを「五、七、五、七、七」にする。声を出して読み、リズムも確認!

【Step3】メモを「五、七、五、七、七」にする。声を出して読み、リズムも確認!

「書き留めていたメモなどを基に、定型の形にまとめましょう。短歌は歌なので、韻律(リズム)も大切。完成した歌は読み上げ、つっかかるところがあれば滑らかな音になるよう推敲を」

【Step4】投稿欄などに挑戦を。歌会に参加して講評し合うのも楽しい

【Step4】投稿欄などに挑戦を。歌会に参加して講評し合うのも楽しい

「歌会では詠み人を明らかにせず、事前につくった短歌の一覧表(詠草集)を前に、感想を話すことが多いです。いろんな人の歌を読み、自分の作品への意見にも耳を傾けることでよい学びに」

スーパーバイラーズが短歌制作に挑戦!

「三十一音」以外はすべて自由。スーパーバイラーズがつくった短歌を東さんが講評する、誌上歌会が開幕!

体力の
衰え感じる
30代
進んでくれない
自転車のペダル

土井陽菜花さん(メーカー・32歳)
買い物には自転車を愛用中。20代の頃はスイスイと漕いで前へと進めたはずなのですが、最近は……という30代の悲哀の気持ちを込めました。

東さんのコメント
「体力の衰え感じる」を別の表現にするのも手。30代は、まだ全然若いですよ(笑)!でも20代に比べると責任を感じたり、次のステップについて考える時期。そんな気持ちを織り込み自転車と重ねれば、広がりが出そうです。

推しがいる
いつか会えるの
期待して
理想もあがる
婚活どこへ

斎藤珠衣さん(IT関係・34歳)
平野紫耀さん、Snow Manなど推しが心の安定剤。あんなふうに肌がきれいで面白い人がいたら……と、現実でも理想が上がりまくっています。

東さんのコメント
推し活に夢中な方、増えていますよね。ぜひコメントの「心の安定剤」「肌がきれい」を歌にも盛り込んでほしいです。グループ名や人名を入れるのも◎。推し活未経験者が読んでも興味が湧き、作者の思いに寄り添えると思います。

鼻歌や
料理の味付け
選ぶ服
私はやはり
母の娘

鈴木日菜子さん(会社員・27歳)
親元を離れて10年。色々な場面で「私って母親に似てるな~」と思うように。大人になったからこそ、改めて感じた気持ちを短歌にしました。

東さんのコメント
題材がいいと思います。ただし情報が少し多い。短歌は三十一音なので、要素をどれかひとつにしぼりましょう。鼻歌をこんなふうに歌っていたな、とか。その上でコメントにある「親元を離れて10年」という具体性を入れるといいですね。

つい覗く
見守りカメラ
ペット用
画面に映るは
父の寝姿

山田沙織さん(フリーライター・34歳)
愛犬のために買ったカメラなのに、昼寝中の父親の姿ばかりを確認することに……。たまには本来の機能を使いたいなと思いました(笑)。

東さんのコメント
着眼点が面白いですね! ペット用カメラに映っちゃったお父さん。可愛いような哀愁があるような(笑)。その姿をより具体的な言葉で書いてみるといいかも。画面に映るはの「は」は取ってOK。より自然な口語になります。

月曜日
準備完璧
ドア開けて
会社で気づく
マウス忘れた

河原彩加さん(会社員・30歳)
休み明けの月曜日って、きちんと準備をして職場へ向かったつもりでも、必ず何かを忘れてきている。そんな実体験をもとにしています。

東さんのコメント
週の始まりへの思いを詠んだ歌ですね。もしかしたら、土日の間も自宅で作業をしていたのでしょうか。「準備完璧」が少し説明的ですね。たとえば「かばん抱えてドア開けて」などと情景を入れていくと、実体験が“歌”へと変わります。

五月晴れ
年中続けと
願うけど
毎年すぐに
梅雨が来る

加納頌子さん(メーカー・33歳)
暑くも寒くもない5月が大好きです。この快適な気候が一年中続けばいいのになと、いつも一瞬で梅雨入りする悔しさを詠んでみました。

東さんのコメント
爽やかな気候が好き。その気持ち、わかります。コメントの中にある「一年中続けばいいのにな」をそのまま生かしたほうが、心の声が伝わるいい歌になると思いますよ。きれいな文章にまとめすぎない、というのも大事なことです。

「伝えたい」意志を感じた歌たち。くだけた言葉も、あえて使ってみて(東さん)

「スーパーバイラーズの皆さんが、工夫を凝らしながら作歌された感じが伝わってきました。どの歌も誠実な表現ですが、よりくだけた日本語で詠んでも大丈夫! カジュアルモードでつくった歌の中に、その人らしいメッセージがにじみ出ますから。楽しんで続けてみてくださいね。」

教えてくださったのは
東 直子さん

歌人

東 直子さん


1963年、広島県生まれ。歌人・作家・イラストレーター。1996年に歌壇賞を受賞し、第一歌集『春原さんのリコーダー』を出版。以来、短歌を軸 に多彩な表現活動を続けている。日記に一首の短歌を添えた『十階』は、東さんの発想の飛躍を楽しめる、短歌初心者にもおすすめの一冊。

『十階』 東直子著 ふらんす堂 2200円

『十階』
東直子著 ふらんす堂 2200円

撮影/森川英里 イラスト/髙橋あゆみ 取材・原文/石井絵里  ※BAILA2024年7月号掲載

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