装丁が美しいものが多く、モノとしても魅力的な歌集。読みやすく、手もとにあるだけでも満たされる作品を、歌人 木下龍也さん、コトゴトブックス 木村綾子さん、ライター 石井絵里さんに薦めてもらった。
歌人・木下龍也さん推薦の2冊
『たやすみなさい』 岡野大嗣著 書肆侃侃房 2200円
「『たやすみなさい』は、風景や感情が映像のように浮かび上がってくる歌集。描かれている物事がまるで自分のことのように感じられるんです。岡野さんの歌は、言葉の使い方が優しいのも魅力的。この歌集はイラストやブックデザインも可愛いので、手もとにあるだけでも満足感が高まります。」
『気がする朝』伊藤紺著 ナナロク社 1870円
「『気がする朝』は恋愛の歌が多い歌集ですが、どれも伊藤さんなりの捉え方があり、読んだときに印象に残ります。彼女の感覚は、初めて短歌に触れる人にも、伝わってくるものがあると思います」
同世代歌人の代表格!
木下龍也さん
1988年、山口県生まれ。’13年に第一歌集『つむじ風、ここにあります』を出版。3つの歌集と、歌人の岡野大嗣さん、詩人の谷川俊太郎さんとの共著もある。’21年に発表した『あなたのための短歌集』は大きな話題に!作歌の息抜きはボクシング。プロの資格も保有。
コトゴトブックス・木村綾子さん推薦の3冊
『くるぶし』 町田康著 コトゴトブックス 2860円
「『くるぶし』は聖と賤、怒りとあきらめ、おかしみとかなしみが渦巻くように押し寄せ、脳髄が揺さぶられる一冊。読んだあとには、世界に立ち向かう力が湧きます。」
『歌集 Dance with the invisibles』 睦月都著 KADOKAWA 2750円
「『歌集 Dance with the invisibles』は、孤独をじっくりと愛でたいときに。寂しさや切なさを感じられるのは、豊かで幸福なこと。自分を形づくるものの輪郭を、なぞるように味わえます。」
『煮汁』 戸田響子著 書肆侃侃房 1870円
「短歌に共感や癒しを求めるなら『煮汁』。毎日の一滴一滴を煮詰めたらこんなふうにあふれ出すのか、と思えるはず。日常の中で見逃しがちな事象や心の動きを、言葉で輝かせてくれます」
コトゴトブックス
木村綾子さん
オンラインのセレクト書店&出版社『コトゴトブックス』代表。町田康さんの歌集は版元として最初の一冊となる。
ライター・石井絵里さん推薦の3冊
『現代短歌パスポート1』 榊原紘、伊藤紺ほか著 書肆侃侃房 1100円
「『現代短歌パスポート』は若手歌人10人の作品を集めた、短歌のアンソロジーシリーズ。作風の違いを楽しみつつ、推しの歌人や歌集を見つけられる一冊。現在、3号まで刊行中です。」
『サラダ記念日』 俵万智著 河出書房新社 528円
「『サラダ記念日』は1980年代の大ヒット作ながら、今読んでも充分に瑞々しい歌集。日本語の豊かさや三十一音が持つリズムの美しさにも感動が。」
『うたわない女はいない』 働く三十六歌仙著 中央公論新社 1980円
「現代女性のリアルに触れる短歌&エッセイ集なら『うたわない女はいない』。様々な職業や立場で働きながら短歌を詠む彼女たち。バイラ世代を癒し、エンパワメントしてくれるはずです」
撮影/森川英里 イラスト/髙橋あゆみ 取材・原文/石井絵里 ※BAILA2024年7月号掲載