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満島ひかりさんインタビュー「多分、人生は一度じゃ足りない」【映画『ラストマイル』8月23日公開】

映画『ラストマイル』が8月23日に公開。大人気テレビドラマ「アンナチュラル」「MIU404」の制作陣が集結した話題作で、約7年ぶりに劇場映画で主演を務める満島ひかりさん。
作品に取り組んだ時間の心の動きから、大切にしている日々のことまでじっくり語っていただきました。

満島ひかりさん映画『ラストマイル』インタビュー 笑顔 横顔

目次

  1. 映画『ラストマイル』の見どころは?
  2. 【INTERVIEW】満島ひかりさんが挑んだ「パンクな冒険」
  3. 『ラストマイル』公開情報

映画『ラストマイル』の見どころは?

映画『ラストマイル』満島ひかりさんのシーン

(c)2024 映画『ラストマイル』製作委員会

ドラマ『アンナチュラル』や『MIU404』をはじめ、数々の名作ドラマの演出を手掛けてきた塚原あゆ子。そして、同作品で脚本を務めた野木亜紀子。この二人が再びタッグを組んで世に送り出すのが、映画『ラストマイル』だ。
流通業界最大のイベント“ブラックフライデー”の前夜、世界規模のショッピングサイトの巨大物流倉庫から配送された段ボール箱が爆発する事件が発生。満島さんが演じるのは、事件の舞台となる倉庫のセンター長に着任したばかりの舟渡エレナ。「流通を止めずに連続爆破を止めることができるのか?」チームマネージャーの梨本孔(岡田将生)とともに、未曾有の事態の収拾にあたることになる——。

【INTERVIEW】満島ひかりさんが挑んだ「パンクな冒険」

熱海の温泉旅館にひとりで泊まり、お風呂に浸かりながら、脚本を読んだ

——スクリーンには「アンナチュラル」や「MIU404」の登場人物たちの姿も。映画『ラストマイル』は塚原組が作り上げてきた作品がひとつの世界でクロスする“シェアード・ユニバース・ムービー”としても大きな注目を集めています。満島さんはそんな大作の主役を演じているわけですか、今作のオファーを引き受けようと思った理由とは?

野木亜紀子さんや塚原あゆ子監督といつか出会えたらいいなと思っていたので、お話をいただいたときはとても嬉しかったんです。ただ、今作に入る前の私はしばらくこういう大きな作品の主演をやっていなくて、映画やドラマに出るための筋肉が弱っているのを感じていました。「私でいいですか?」とプロデューサーの新井順子さんに確認したのを覚えています。「会って話しましょう」ということになったので、野木さん、塚原さん、新井さんと会ってお話をしました。その後もう一度、脚本を読むために、熱海の温泉旅館を予約したんです。

——熱海の温泉旅館で脚本を読んだんですか?

はい(笑)。自分でお風呂のついているお部屋を予約して、温泉につかりながら脚本を読み、外の景色を眺めて、また読んで……。そこで「この作品で私とやりたいと言ってくださるのって、けっこう冒険なのかもしれないな」と、そう感じたからこそ「やってみたいな」と。再度「私で本当に大丈夫ですか?」と確認したうえで「やってみます、お願いします」と、熱海からお返事をしたんです(笑)。

満島ひかりさん ノースリーブとデニム

「わからない」こともおおいに楽しみながら前に進む

——ちなみに、脚本はいつも変わった場所で読まれるのでしょうか。

作品ごとにそれぞれ、いろんなことをしています。家の中で読むこともありますし、違う国で読んだこともあります。その作品からパッと思いついたことをするんです。

今回の熱海は……どうしてだろう、人を感じないところで地平線を見つめて脚本を読みたかったのかな。というのも、最初脚本を読んだとき、よくわからなかったんです。刑事さんでも弁護士でもなく、巨大ショッピングサイトの、物流倉庫のセンター長の役で、彼女は爆破事件そのものより「いかに流通を止めずにすむか」が頭の中にあって……。

完成した作品を見たときに改めて思ったんですけど、私が演じたエレナは周りがミクロの世界の話をしているのに、ひとりでマクロの世界の話をしている人なんですよね。世界的な大企業の中で働いて、自分ひとりの力ではシステムや社会に対抗できないのをよく知っていて、さらには「あなたじゃなきゃダメ」でなく、「あなたじゃなくてもいい」ような、そんな厳しい世界の中で生きている。物事との折り合いが、“感情”だけではまるで付けられないというか……エレナの持つ何層もの視点がすごく難しくて、撮影に入ってからもしばらく、わからないままカメラの前に立っていた感じがします。

映画『ラストマイル』撮影メイキングカット、満島ひかりさん、塚原あゆ子監督

撮影中に言葉を交わす満島さん(右)と塚原監督/(c)2024 映画『ラストマイル』製作委員会

——その「わからない」を撮影現場では塚原監督にも伝えていたのでしょうか。

はい、伝えました。監督からカットの声がかかったあと「私、わからないままやっているかも。どうしようって」。そしたら、塚原さんはこう言ったんです。「そうだよね。でも、大丈夫だよ。私、さっき“カット”って言ったじゃん。その言葉が出てきたってことは、きっとちゃんと撮れているんだよ」って(笑)。

その言葉を聞いたときに思ったんですよね。「ああ、私はこの現場が好きだな」って。野木さんもそういう人なんですけど、彼女たちは世界の見方がすごくフラットなんですよね。「ここを目指すんだ!」と周りを引っ張りながらも、「本当にそうなのかな?」という疑問も小脇に抱えて、「わからないこと」もおおいに楽しんでいるというか。そこが本当にとても素敵だと思いました。

今思えば、私自身も「わからない」を楽しんでいたような気がします。そもそも「わからない」から、冒険だと感じたから、「やってみたいと」と思ったというか……。「大きな作品でパンクな気分でいたい」という気持ちがあったんですよね。

満島ひかりさん 全身 デニム
満島ひかりさん おどけたポーズ

「この撮影が終わるまで、何ひとつ仕事を入れない」という役作りをした

——今、満島さんから飛び出した「パンクな気分」というキーワードがとても気になります。役作りもまた、今までとは違う方法で挑んだりしたのでしょうか。

実は、「この撮影が終わるまで、次の仕事を何ひとつ入れない」と決めて臨んだんです。私が演じるエレナは「あなたじゃなくてもいい」世界で生きている人。明日、仕事を失うかもしれない、自分じゃない誰かに自分の仕事を取って代わられてしまうかもしれない。その危機感を私も持って演じたいと思ったんです。「明日、撮影が終わったら、私はこの仕事をやめるかもしれない」という状態を自分の体に作ることが、役作りだったと思います。とにかく、安全と安心が、この映画が終わった先に待っていてはいけないって。

——それはまた、本当にパンクな役作りですね! ある意味、役者としてはとてもリスキーな行動だと思うのですが、怖くはなかったのでしょうか。

リスキーだし、超危険だし、超パンクですよね(笑)。クランクアップの日に泣いてしまったんですけど、それは作品から離れる寂しさだけでなく、「明日から仕事がない、どうしよう」と「今までありがとう」が合わさった涙でした。まぁ、私はその危機感が欲しかったから、それでよかったんです。

「今までの全てを宝物にして、また新たな筋力を鍛えてみよう!」、「冒険してみよう!」と思った

——わからないことへの覚悟といい、パンクな役作りといい、今の満島さんからは「新しいことにトライしながら、新しい自分へと進化していきたい」という思いを感じます。

今作の前に主役を務めたのが『First Love 初恋』という作品だったのですが。撮影が終わったあとに「今までのやり方は、ここで終わり」と決めてみたんです。一つの道を極めてすごい人を目指すより、「今までの全てを宝物にして、また新たな筋力を鍛えてみよう!」と思って。人にはいくつも可能性があるはずだ、「冒険してみよう!」って。

そこから少しずつ、自分と違う職業の方に会いにいく数を増やしたり、ぼーっとする時間とか遊ぶ時間も増えたし、子供の頃に好きだった音楽の世界に制作者になって関わってみたり……新しい懐かしい感覚を見つけながらの『ラストマイル』だったんです。久々の主演作では、現場に立つ体幹や視点が、自然と変わっていました。

脳みそのなかには“記憶”しかないなら。考えず、触れて、感じて、気づきたい

——そういう思いがあってこその、新しい冒険の数々だったんですね。

冒険しながら状況に気づくという感じで、まだまだ自分自身に翻弄されてもいます(笑)。個人で立っていた私が、さらに自然に、さらに社会に溶けはじめた感覚なのかな。それがはじめから得意な方もいると思うけど、私は集中し過ぎると力んでしまうところがあったので、そんな自分を、心惹かれることに「夢中」になって「もっと柔らかい」、元の自分に帰したくなって……元の自分と言っても、今までのことを宝物に持っている新しいバランスなので、まだ全然「わからない」ところだらけですが。それでも「とりあえずやってみよう」って、人生を面白がっています。

——頭で正解不正解を考えるのではなく、「わからない」まま、「とりあえずやってみよう」と進む、それもまた満島さんにとって「もっと柔らかい」新しい冒険であり、きっと意味のあることだったのでしょうね。

そうですね、とにかく脳みそを通過しないっていうのが今の私には大事なことみたいで。というのも、脳みそのなかには“記憶”しかないから。言葉のほうが脳みそよりも前だし、手の感触のほうが前だから、触れて、感じて、気づけばいい。自分をそういう感性にしていたかったんでしょうね。

満島ひかりさん映画『ラストマイル』インタビュー 笑顔 横顔

日々の優先順位は「まず生活、次に遊び、それから仕事」

——映画『ラストマイル』では様々な仕事も描かれています。今ではネットで注文した商品があっという間に自分の手元に届くのが当たり前になっていますが、それはたくさんの仕事に支えられているからこそ。普段は見えない人たちや、それぞれの仕事への思いが描かれていて、そこにも胸を打たれました。だからこそ、満島さん自身の、役者という仕事をするうえで大切にしている思いも聞いてみたいと思いました。

これまで大切にしてきたのは「世界中の、街中に溢れている色んな人の声にならない声」になること。そして「大きなところでは冒険する」、「小さなところで、技術的に深みのあることしっかりやる」ことだったかなあと思います。世界を色んな角度から見ることで「あ、ここに豊かなものがあるんだ」と気づけるかもしれないし、やっぱり役者さんはこういった別の世界への窓の中にいるので、「澄んだ光」とか「清らかな静けさ」が内側にあることを感じていたいと思っています。プラス、パンクな心(笑)。

——今作でも、まさに大きな作品でパンクな冒険をしていますもんね。ちなみに、以前、日々の優先順位について聞かれた満島さんが「1位は生活、2位が遊び、3位が仕事」と答えているインタビューを見たことがあります。“1位が仕事の人”だろうと勝手に思っていたため、その回答に驚いたのを今でも覚えているのですが。その優先順位は今も変わりませんか?

そうなんですよね、なぜか“仕事が1位”と思われがちなんですけど、今も変わらず順番は変わらないんです。順番をつけることでもないんだけど……生活も遊びも仕事も影響し合うものですもんね。年々ほら、隠しきれなくなっていくというか、表にそれぞれの生き方が現れてくるわけで。恐ろしいなってドキドキするけど、どれも私なんだなって妙に愛おしくもなったりして。私はやっぱり、生活がちゃんとしている時が色々と巡る感じがします。

あと、単純に掃除や料理をしていて楽しいんです。「やらなきゃ」でなく「やりたい」って気持ちになるから、好きなんでしょうね。作ってもらって食べる方も、もちろん大好き(笑)。

子供の頃からとてもユニークで特殊な家庭環境で育って、いつのまにか歌って踊ってテレビの中の人になって、俳優さんになっていて。それが自分の財産になっているとわかっているんだけど、もっと静かに普通でいたかったと思う贅沢な自分もいて……。

でも、どんなに普通を求めても絶対にこの仕事に引っ張られてしまう。いくら逃れようとしても、その波が押し寄せてくるので、もう抗うのはやめました。この波に乗っていたほうがいいんだなと、30代後半になってやっと思えるようになってきました(笑)。

その人が持つ思いに触れたときに「この人の代わりはいないんだ」と思える

——それはまた以外な一面で驚きです。その答えを聞くと「2位が遊び、3位が仕事」の理由も聞きたくなってしまうのですが。

仕事って、ずっと突き詰めていると「これでよかったのかな」って思うときが必ずやってくるというか。魔法が使えなくなるときがやってくると思うんですよ。それこそ、「自分じゃなきゃダメなんだ」という思いで向き合っていたのに、「もしかしたら、自分じゃなくてもいいんじゃないか」と思うようになってしまったり……。

本当、知らないうちにいろんな情報を目にする機会が増えてきたので。最近は隣にいる誰かと自分の境目がないというか。オシャレひとつにしろ、自分が選んでいるのか、時代に選ばされているのか、わからなくなってしまう。そんなことも増えているからこそ、きっと自分だけの何かを見つけて、自己を確立するのってすごく難しい気がして。

満島ひかりさん 水を飲んでいる

だからこそ、私はとにかく暇な時間とか無駄な時間、起きていることと向き合えるような“余白”を大事にしているんです。

昨日も、友達と一緒に自転車に乗ってカレーライスを食べに行ったんです。その途中にコーヒー屋さんに寄り道をしておしゃべりを楽しんで。そこで、彼女はこんなことを言ってくれたんです。「ひかりは小さな頃から本を読んでいるから、感性のざわっとした部分を上手に言葉にできるじゃない。私はそれがあまり得意じゃないから。仕事でお客さんと対応しているときに、もどかしくなるときがある」って。彼女は中学校からの友達で、すごく長い付き合いになるのに、こうやって会って話すと今でも新たな思いに触れることがあるというか。そんなふうに、友達の「そんなことを思っていたんだ!」という一面を見たりすると、なんだか愛おしくなるんですよね。みんな違う仕事をしているけど、悩んだり迷ったりするのはきっと同じで、そうやって自分だけの人生を作っていくんだなって。

なんだろう、人と向き合って、その人の思いに触れたときに「あ、全然替えはきかないんだな」、「この人の代わりはいないんだ」と思えるというか。それはきっと、自分だけじゃなく相手も同じで……。この世の中には、替えの効くような仕事はたくさんあるのかもしれない。この役者という仕事もそうで、私じゃなくたって映画は作られるわけで。でも、脚本があって、感情を向ける相手がいて、その人と人との間にコミュニケーションが生まれる。そこに、私にしかできないものを作るというか。それが本当にとても大事だなって思うんです。

今、決めなくてもいい。答えはひとつじゃなくてもいい

——映画『ラストマイル』では“替えがきかない”満島さんのお芝居を強く感じました。すでに役者として高い評価を受けているのに、同じ場所に居続けない、新しい自分に出会うために、どんどん進化していく……今回のインタビューではそんな満島さんの姿に驚かされました。最後に、その進化は普段から意識していることなのか聞いてもいいですか?

私に意識があるとしたら「前に進む」じゃなく「迂回すること」かな。

右側ばっかり見ていたから、今度は左から見てみようとか。もうちょっと斜めから見てみるか、横から見てみようかって、ぐるぐると360度まわりながら物事を眺めている感じ。そうやって、ひとつの軸のまわりをぐるぐる迂回していると、「こんなこともあるんだ」「じゃあ、こうしてみようか」「ああ、こんな一面がまだここにあるんだ」って……気付かぬうちに感性が深くみずみずしくなっていくんです。そこには「今より良くなろう」とかそういう思いはなくて。「何が起こっているんだろう?」と思いながら見ている感じ。

時間がかかってもいいんです。多分、人生は一度じゃ足りないから。

私ね、人生には“続き”があると思っているんですよ。今の私にバトンタッチした、私の何かの感性の意識層みたいなもの、俗にいう“前世”のようなものはきっと存在していて。それが今の私に続いたように、このあともずっと続いていく……。だからね、今の私だけで人生を100%作ろうと思っていなくて。2%くらいでいいと思っているんですよ(笑)。少ないと思った人もいるかもしれないけど、2%だって、100年くらいかかりますからね!(笑)

今、ひとつに決めなくていい。答えはひとつだけじゃなくていい。何通りの答えを持っていてもいい。答えをひとつだけ持って、それがダメになったら立ち上がれないような人生よりも、私はそっちの人生のほうが面白くて好きだなって思うから。この先も、いろんな可能性を抱き締めながら、あっちから眺め、こっちから眺め、ぐるぐるとまわり続けるんでしょうね(笑)

満島ひかりさん カメラを構える
満島ひかり

満島ひかり


みつしまひかり●1985 年11月30日生まれ。鹿児島県生まれ、沖縄県育ち。97年に音楽グループ「Folder」でデビュー。俳優を中心に、歌い手・書き手としても多彩に活躍している。著作『回文物語集「軽いノリノリのイルカ」』を 7 月 17 日に発表したばかり。パーソナリティをつとめるラジオ「ヴォイスミツシマ」(NHKラジオ R1)、60役以上の声をつとめるアニメ「アイラブみー」(NHK Eテレ)がレギュラーで放送中。

『ラストマイル』公開情報

映画『ラストマイル』メインカット 満島ひかり、岡田将生

(c)2024 映画『ラストマイル』製作委員会

出演/満島ひかり、岡田将生、ディーン・フジオカ、火野正平、阿部サダヲほか
監督/塚原あゆ子 脚本/野木亜紀子
配給/東宝
公開/2024年8月23日(金)より全国公開

映画『ラストマイル』公式サイトはこちら

【衣装】トップス¥24200/ミディアム〈info@mediamconnect.com〉 インナー¥14300(カスカアーダ)/MIC〈casuca@micbra.jp〉 パンツ¥52800(リュウ カガ)・指輪¥30250(ミリット ウェインストック)/セメント〈03-6915-3282〉  シューズ¥60500/レペット〈03-6439-1647〉 帽子¥35200(エントワフェイン)/インターナショナルギャラリー ビームス〈03-3470-3948〉 ピアス¥57200(グエルマートショールーム)/アテュール〈atur.jp〉

撮影/石田真澄〈the few〉 ヘア&メイク/石川奈緒記 スタイリスト/皆川bon美絵〈the few〉 取材・文/石井美輪

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