連続テレビ小説「虎に翼」で主人公の弟・直明役を演じ注目を集めた俳優の三山凌輝さん。2月7日より公開の主演を務めた映画『誰よりもつよく抱きしめて』では、強迫性障害による潔癖症を患う繊細なキャラクターを熱演しました。明るくポジティブな彼が新境地を開拓した、難役挑戦の舞台裏に迫ります。

映画『誰よりもつよく抱きしめて』
鎌倉の海沿いの街で同棲する、絵本作家の水島良城(三山凌輝)と書店員の桐本月菜(久保史緒里)。互いのことを大切に思い合っているものの、強迫性障害による潔癖症を患う良城は、恋人の月菜にも触れることができず、手をつなぐことすらできない日常が続いていた。二人の溝が次第に深くなっていくなか、月菜の前に、恋人と触れ合っても心が動かない男イ・ジェホン(ファン・チャンソン)が現れる。新堂冬樹の純愛小説を映像化。
三山凌輝さん 映画『誰よりもつよく抱きしめて』公開記念インタビュー〈前編〉
自分とは正反対に思えるような役との出会い

──映画『誰よりもつよく抱きしめて』で初タッグを組んだ内田英治監督との出会いは、韓国だったとか?
2年前にある番組のロケで韓国に行ったときに、ちょうど知り合いのプロデューサーの方も韓国にいて、「凌輝に会わせたい人がいる」と引き合わせてくれたんです。同じ鍋でラーメンをつつき合ってお酒を飲んだのが「初めまして」でした。
そのときの僕は赤坊主だったし、ガツガツと飯を食いながらあーだこーだしゃべっていたので(笑)、まさか自分とは正反対に思えるような良城役をオファーいただくなんて。不思議だったけどありがたかったですね。俳優としてはやりがいがあるし、楽しそうだなと思いました。
──演じた水島良城は、強迫性障害による潔癖症を患っている設定です。同棲する恋人を愛しているのに触れることができず、生きづらさを抱えながら不器用にもがくキャラクターは、明るくポジティブな三山さんとは確かに正反対に見えます。
選択する行動は真逆ですけど、人として共感できるポイントは実はすごくいっぱいあったんです。僕も良城みたいなところがあるし、なんなら家では、良城かもしれない(笑)。
──BE:FIRSTのRYOKIとして活動する際は、ステージ上で自我を爆発させながらパフォーマンスする姿が魅力です。“良城”的要素はご自身の中にどのくらい存在しているのでしょう?
表裏一体だと思います。いろんな違和感に気づく繊細さを持っていないと、結局は強い芯を持つ人間には辿り着けないし、ネガティブになったことがなければ、ポジティブに変えていきたいとも思えないわけで。
僕にもネガティブなところはいっぱいあるし、もがいたり、苦しんだり、壁にぶち当たって、すり減らしちゃったことも過去にはありました。それでもあきらめずに覚悟を持って生きてきたから、今のポジティブな自分につながった。
だから僕という人間の枠の中に良城は当然のようにいます。自分の経験を含めて考えながら具現化したものなので、良城は僕にしか表現できないキャラクターだったと思います。

──撮影が行われたのは2024年の1月。BE:FIRSTのアリーナツアーの真っ最中だったと思うのですが……。
しかもクランクアップの次の日に自分の写真集の撮影でフランスに行くことが決まっていたんです(笑)。
あの頃は人生で初めてくらい、いろいろなことを考える時期でもありました。ちゃんと立ち止まって整理できるような時間もなかったので、なかなか大変でした。スケジュールがとても過酷だったんです(笑)。
──強迫性障害や潔癖症については?
自分なりに色々と調べたり、監督と話し合って作っていきました。素の自分でいるよりも役でいる時間のほうが長かったから、役か自分かわからなくなってしまう感覚はありました。
「虎に翼」に関われたことは人生の宝物

──ほかの作品でも役に影響されることはありますか?
映画『HiGH&LOW THE WORST X』でゴリッとした不良を演じていた時期はちょっとイラッとしてしまったり、普段生活している時間も役と同じ感情になるときはあります。撮影期間が終われば手放しますけどね。
そういう意味で言うと、「虎に翼」で演じた直明役は自分と似ていたので作り込む必要があまりなかったです。あれだけ長い期間演じるとなると、自分の性質に近いほうが僕には向いているかもしれない。
──連続テレビ小説「虎に翼」は本当に多くの反響があったと思います。三山さんにとってどんな経験になりましたか?
これだけ長い期間、同じ役を演じる経験はなかなかないですし、何よりも題材や脚本、出演者やスタッフさんを含め、本当に素晴らしい作品に携われたことが嬉しくて。人生の宝物になりました。
しかも直明はこれまで演じてきた中でダントツに僕に近いキャラクター。あそこまで好青年かと言われたらわからないけれど(笑)、素直さやまっすぐなマインドはすごくよく似ていたので、役にも恵まれたと思います。
映画『誰よりもつよく抱きしめて』

2月7日(金)よりTOHOシネマズ 日比谷ほか全国ロードショー
配給:アークエンタテインメント
出演:三山凌輝、久保史緒里(乃木坂46)、ファン・チャンソン(2PM)、穂志もえか、永田凛、北村有起哉、北島岬、竹下優名、酒向芳
©2025「誰よりもつよく抱きしめて」HIAN /アークエンタテインメント
撮影/岡本俊 ヘア&メイク/西村裕司 スタイリスト/朝倉 豊 取材・文/松山梢 構成/渋谷香菜子