文芸評論家の三宅香帆が、バイラ世代におすすめの最新本をピックアップ! 今回は、心を休めたい日に読む本として『納税、のち、ヘラクレスメス のべつ考える日々』他、3冊をレビュー。

文芸評論家
三宅香帆
みやけかほ●1994年生まれ、文芸評論家。熱量の高い書評で注目を集め、『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社)はベストセラーに。
今回は心を休めたい日に読む本
緊張のスイッチを読書でオフにする無駄話が楽しい日記本

拙著『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』でも書いたとおり、毎日忙しかったり疲れていたりすると、本をじっくり読むのも難しいと思っている方は多いのではないだろうか。そんな方に、働いてくたくたで帰ってきたあと、平日の夜や週末の貴重な時間を使ってでも読みたい本を3冊ご紹介したい。
特に推したいのは、ダ・ヴィンチ・恐山こと品田遊さんの日記本。彼は2000日以上毎日1500字もの日記を書いている。「もしもフルーツを友達にするならだれがいいか」「むかし通っていた公文式の話」など、彼が日常を見つめるユニークな視点に不思議と心の緊張がふっとゆるんでくる。仕事に疲れた夜、ここではない場所に逃避して休みたいときに読むのにぴったりな一冊だ。
『納税、のち、ヘラクレスメス のべつ考える日々』
品田遊著
朝日新聞出版 1760円
日々を過ごすなかで生まれる、ふとした思考や記憶をつづった日記。人の日記をのぞき見ることの快楽を伝えてくれる一冊。エピソードにまつわる漫画や、巻末にはエッセイストの古賀及子さんとの対談も収録。
これも気になる!

『雨の日の心理学 こころのケアがはじまったら』
東畑開人著
KADOKAWA 1760円
家庭内で誰かの心が疲れてしまったり、職場で誰かが来なくなったり……突然始まる「他者の心のケア」にどう対応したらいいか、臨床心理士が教えてくれる本。

『睡眠の起源』
金谷啓之著
講談社 990円
1998年生まれの新進気鋭の若手研究者によるエッセイ。実験の魅力を語る彼は「睡眠」や「意識」を生物学から解明しようとする。みずみずしい言葉が心地よい一冊。
イラスト/おおさわちか ※BAILA2025年4月号掲載