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働いていると本が読めなくなるって本当? 三宅香帆さんが解説する5つの理由

新書『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社)がベストセラーに。著者で文芸評論家の三宅香帆さんとともに「私たちが読書から遠ざかりがちな要因」を探った!

三宅香帆

文芸評論家

三宅香帆


1994年生まれ、高知県出身。学生時代は『万葉集』の研究をしていた。会社員との兼業を経て、専業の文芸評論家に。『人生を狂わす名著50』(ライツ社)など、本にまつわる著書多数。

働いていると本が読めなくなる5つの理由

働いていると 本が読めなくなる5つの理由

〈理由1〉そもそも日本人は平均労働時間が長すぎる

「週5日働くのが、日本人の平均的なワークスタイル。厚生労働省のデータ※では、毎月の平均残業時間は9.9時間ということがわかっています。これに飲み会や家事、日々の雑用などが加わると、“一人で本を読む”精神的な余裕は、どんどん削られていくことに。私自身、会社員時代に身をもって体験しました」(三宅さん・以下同)
※出典:厚生労働省「毎月勤労統計調査」(令和6年9月)

〈理由2〉効率重視の勉強法・ファスト教養がトレンドに

「YouTubeやSNSの発達で、断片的な情報をキャッチするのに慣れてしまった私たちバイラ世代。それはそれで効率がよいけれども、しっかりとした前提に基づいた情報や、文脈のある物語を読む忍耐力が低下。“長い”“重たい”と感じやすくなっていると思います」

〈理由3〉時間に余裕がないと、結論以外の文脈を“ノイズ”に感じてしまう

「これは労働時間の長さとも関係する話ですが、忙しい毎日を過ごしているからこそ、“すぐに結論を知りたい!”という気持ちに陥りがちに。行間を読む、結論までの道のりを楽しむといった、読書ならではの魅力を“ノイズ”と思いがちになっているかもしれません」

〈理由4〉手軽な娯楽を求めてしまい、書店を訪れる機会が減った

「スマホやタブレットがあれば、ゲーム、映画、音楽と何でもその場で楽しめる今の時代。それ自体はいいことですが、書店へ出かけて『面白そうな一冊を見つける』機会が減ってしまいましたよね。もっと主体的に書店へ足を運び、未知の本を探す時間も必要なのかもしれません」

〈理由5〉仕事に“全振り”してしまう人が多い傾向が

「『読書はあまりしないけど、仕事に関係ある本なら読んでいる』という人が意外といるんですよね。裏を返せば、それだけ“仕事に全振り”している生活になっているとも言えます。仕事に全力投球しつつも、プライベートな時間とのメリハリを意識してみては」

己と向き合える、大人の読書。読むためには“設定”を下げて!

大学院卒業後、企業に就職した三宅さん。会社員生活を送りながら、あまりに本を読めない生活に愕然としたそう。

「すき間時間はあったものの、日々の仕事と、それまで愛読していた日本の古典やイギリス文学とのギャップがありすぎて内容に集中できず……。兼業で文芸評論も始めていたので、目先の課題図書に追われていたのも、趣味の読書から遠ざかっていった理由でした。

再び読書の習慣をつくるには、自分の中で読書のハードルを下げてみるのがおすすめです。SNSにアップしたい可愛い装丁の本を探してみるだけでもOK。それから、生活の中に読書の時間を設定する、ルーティン化も有効。たとえば“通勤の片道だけ本を読む”“寝る前の15分は読書時間にする”など。友達との約束と違い、読書は一人でするものだから、つい予定をキャンセルしてしまう人も多いのでは? そこをグッとこらえて一度ルーティンにすると、静かに自分と向き合う読書習慣がつくれると思っています」

撮影/田村伊吹 取材・原文/石井絵里 撮影協力/UTUWA ※BAILA2025年2・3月合併号掲載

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