プロの作家が書くものから一般の人のものまで、幅広く日記作品を楽しんでいるという文芸評論家・三宅香帆さん。人の日記の面白さ、楽しみ方、また“読み手がいる”日記を書くときのコツとは?
誰の日記もそれぞれ面白い!全人類に書いてほしいと思っています――三宅香帆さん

三宅香帆さん
みやけ かほ●1994年生まれ。文芸評論家。著書に『なぜ働いていると本が読めなくなるのか』(集英社)。バイラでも書評連載を担当。
人の日記を読むことは、私にとって癒し。
特に、自分とまったく違う日常が余すことなく書かれている日記が好きです。
起承転結がなければ、問題提起もしていない、ごくごく平凡な生活の描写ほど不思議と、読んでいてホッとする。
マインドフルネスの状態に近いのかもしれません。
SNSを見たり、考えさせられる小説を読むと疲れちゃうときでも、日記なら読めたりして。
人の日記を読むのが大好きな私としては、全人類に日記を書いてほしいくらいです(笑)。
人に読んでもらうならば、衝撃的な出来事とか感情を大きく動かされた経験を盛り込んで“引き”をつくらなきゃ!と感じる人が多いのですが、読者にとっては、自分とまったく違う日常そのものが完全なる未知であり、最高のエンタメ。
変に盛ったり、難しく書こうとしなくていいんです。
大事なのは、細かく丁寧な描写!
読み手は他人ですから、共通言語がない人にもきちんと伝わるように、固有名詞の説明を加えるなど気をつけてください。文章力に自信がない人は、まずは自分のための日記をつけてみると◎
継続して書くことでライティングスキルが上がり、抵抗なく文章を書けるようになるはずです。
この世に、自分とまったく同じことをして、まったく同じように感じる人は、存在しないですよね?
つまり、日常を綴った日記は、自分だけの作品。
そう考えると、ワクワクしませんか!?
人の日記を読むのが大好きな三宅さんに聞いた!「日記を書くときのエトセトラ」
日記初心者に向けて、“人が読んだときに楽しいと思ってもらえる日記”を書くポイントを伺いました。
“人に読ませる日記”は内面よりも“その日起こったこと”を細かく書いてみる
「人の日記を読む面白さは、自分とはまったく違う日常を知ることができること! 人気が高い日記は決まって、出来事を事細かに描写しています。感情の変化を書く際は、その理由を明確にすることを忘れずに。見も知らぬ人が読んでいることを、常に意識してください」
登場人物の説明など、少しのサービス精神があるといい
「他人に読んでもらうためには、誰でも理解できるようにまとめることが鉄則。書き終わったら、客観的な視点で読み直すことをおすすめします。初めて登場する人物は丁寧に描写したり、自分との関係を説明したりすると、読者が置いてきぼりになりません!」
文体はそろえたほうがそれっぽいし読みやすくなる
「まとまった期間の日記を読むと、筆者の気持ちの変化や出来事の関連性を知られて、思い入れが強くなります。しかし、日によって“です・ます調”と“である調”が変わると、別人の日記を読んでいるような感覚になってしまう。そろえれば、文章の個性にもなります」
“自分のための日記”はメモ的に使っても楽しい
「私は自分用の日記ブログに、その日に読んで面白かった記事のリンクや撮った写真を貼りつけることがあります。それらがヒントとなって関連する出来事を思い出すこともありますし、“この頃そういえば忙しかったな〜”と思い返すだけでも面白かったりするんですよ」
続けるコツは何度途切れてもやり直すこと
「自分のための日記も人に読ませる日記も、連続して書くことで日々の解像度が上がります。面倒になってしまう人は、続けられることを探してみて。服が好きな人はコーデ写真を投稿するとか、料理が好きな人はその日の献立を書くとか。まずは日課にしましょう」
構成・原文/中西彩乃 ※BAILA2025年7月号掲載






















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