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韓国の人気作家イム・ソヌさんインタビュー! フェミニズム運動、日本の作家からの影響とは

韓国の人気作家イム・ソヌさんインタビュー! フェミニズム運動、日本の作家からの影響とは

読書の秋、新しい読書体験をしてみたいなら、今人気の韓国文学はいかが? 今回は、話題の一冊『光っていません』の著者イム・ソヌさんにインタビュー。幻想的な物語に込めた想いとは? 韓国書籍専門店の情報も必見。

CONTENTS

  1. 話題の一冊『光っていません』作家イム・ソヌさんが紡ぐ「私たちの物語」
  2. 今すぐ行きたい! 聴きたい! 韓国文学に出合えるスペース

話題の一冊『光っていません』作家イム・ソヌさんが紡ぐ「私たちの物語」

悲しみから読者を解き放つ幻想的な物語に込めた想い
8つの物語からなる短編小説『光っていません』は、孤独や喪失感を抱える私たちを、不思議な世界へと誘い出し、自由にしてくれる一冊。
「この小説を書いたきっかけは、数年前のある夜。ふと目覚めて鏡をのぞいたとき、そこに映っていた自分が、見知らぬ他人のように感じられたんです。普通なら恐怖を覚える場面ですが、どこか慰められるような温もりを感じて。その感覚をメモに残し、しばらくして『幽霊の心で』を書き上げました。そして残りの7編もその温度感で仕上げることにしたんです」

収録作品の執筆当時、念頭にあったテーマは“哀悼”だという。
「高校生のときに大好きな叔母を亡くして以来、喪失感とどう向き合えばいいのか悩んできました。だからこそ、人が最も大切な存在を失ったあと、どう回復し、再び人生を歩んでいけるのかを書きたかったんです」

その言葉のとおり、収録作には様々な哀悼の形が描かれる。
「小説でも人生でも常に意識しているのは、“他人が自分の救世主になるべきではない”ということです。人と意味のある時間を共有し、そこから力を得ることはあっても、決定的な瞬間には自分で選び、一人で立ち上がる。そんな物語を心がけました」

本作には、『幽霊の心で』や『見知らぬ夜に、私たちは』など、シスターフッドを感じさせるものも多い。
「“女性の連帯”も、私にとって大きな主題のひとつです。韓国では2016年にフェミニズム運動が活発になり、当時大学生だった私は、“女性は可愛くあるべき”や“おしとやかであるべき”といった外からの声に蝕まれる感覚を覚えました。そんな中で自分を守る力を与えてくれたのが、同じ怒りや恐怖を共有する女性たちでした。その支え合う素晴らしさを作品にも込めたかったんです」

作家イム・ソヌさん

©Lee Hyeseung

他人を自分の救世主にしない。作品に描く、一人で立つ瞬間

“私なりに”を大切にするバイラ世代作家の読書事情
現代社会の閉塞感や困難を描きながらも、本作にはたゆたうムードがある。クラゲになる人や木に変身する男といった独特な設定も、その一因だろう。その発想の源とは?

「私はいつも『私の小説はファンタジーではありません』と言っています。なぜなら登場人物の内面をそのまま描いているから。韓国では、深い悲しみを『胸に石の塊があるみたいだ』と表現しますが、私はその石を吐き出そうとする人の姿をただ書いているだけ。言葉にできない感情を、イメージや場面で表現しているんです。日常生活や散歩の途中に出合う、内面を象徴する風景を書きとめておき、それを題材にすることも多いです。たとえば、料理にハマっていた時期に書いた作品は、別れた恋人が食材に変わってしまい、それを鍋に入れて煮込んでスープを作るという内容です」

そんなイム・ソヌさんのユニークな視点を育んだカルチャーというと。
「日本の作品も多いです。挙げるなら、panpanyaさんの漫画。主人公の子どもが、突然幻想的な世界に入っていく話が多くて大好きです。あと、岡崎京子さんの漫画も。登場人物が自分の欲望をきちんと理解していて、それを恐れずに表現している姿を見るとパワーをもらえるし、解放感を得られます。それから、韓国で昨年話題になった、赤瀬川原平さんの1980年代に出た路上アートの記録『超芸術トマソン』にも刺激を受けました。私も街の中で意味のないものを探しながら散歩をしました」

こうしたコアな作品との出合いは、約5年前から女性三人で月一回開催している読書会にあるという。
「先月は、近代日本文学の作家・横光利一さんの本を読みました。読書会の魅力は、参加者同士の本の好みが合うと世界が一気に広がるところ。同じ本を読んでも、人それぞれ捉え方が違うので、感想を聞くのが楽しいです。そういえば最近、韓国では20〜30代の読書熱が高まっていて、“テキストヒップ”という言葉が生まれるほど。本を読むことがカッコいいという空気が広がっているんです」

最後に、読者へのメッセージ。

「私がいちばん好きな韓国語の単語は『나름(自分なりに)』です。辞書で引くと、各自が持っている固有のやり方、とあります。私は私なりに生き、私なりに書くことを心がけてきました。だから読者の皆さんも、自分なりに生きていってほしいです」

イム・ソヌさん

作家

イム・ソヌさん


1995年、ソウル生まれ。2019年、歴史ある文芸月刊誌『文学思想』新人文学賞を受賞し作家デビュー。’23年には短編「ラクダとクジラ」で第3回金裕貞作家賞を受賞。初の日本翻訳本『光っていません』は、韓国で’22年に「小説家50人が選ぶ今年の小説」の第3位にランクインした。

『光っていません』

『光っていません』
イム・ソヌ著 小山内園子訳
東京創元社 ¥2310

今すぐ行きたい! 聴きたい! 韓国文学に出合えるスペース

【東京・神保町】韓国書籍専門店「チェッコリ」

日本における韓国文学ブームを牽引する出版社「クオン」が運営する韓国書籍専門店。小説や詩、エッセイ、絵本、コミック、料理本など、幅広いジャンルの翻訳本や原書、ZINEがそろい、本棚をのぞくだけで韓国文学の“今”を感じられる。文学やエンタメ、歴史、韓国語などをテーマに、有識者によるトークイベントも常時開催されている。

韓国書籍専門店「チェッコリ」

DATA
東京都千代田区神田神保町1の7の3三光堂ビル3F
☎03(5244)5425
営業日:水〜金曜12時~19時、土曜11時~19時
定休日:日・月曜、年末年始、お盆休み(※月曜が祝日の場合もお休み)
https://www.chekccori.tokyo/

今年は11月22日〜23日に開催!「K-BOOKフェスティバル 2025」@神保町

韓国書籍の翻訳や関連本の販売をするイベントで、日韓56の出版社が参加。作り手の話を直接聞けるほか、来日する著者のトークイベントや、今年は文学にまつわる上映会も予定している。最新情報は、Instagram(@kbookfes)で随時チェックを。

ポッドキャスト番組『聴いて、読んで、楽しむ★K-BOOKらじお』

『聴いて、読んで、楽しむ★ K-BOOKらじお』

韓国発の本の魅力を発信する「K-BOOK振興会」の番組。韓国文学の新刊やイベント情報はもちろん、編集者や翻訳家など“本づくりの現場”で活躍するプロの話は超貴重!

撮影/wacci 通訳/清水知佐子 取材・原文/海渡理恵 編集/久保田梓美  ※BAILA2022年12月号掲載

BAILA編集部

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30代の働く女性のためのメディア「BAILA」。ファッションを中心にメイク、ライフスタイルなど素敵な情報をWEBサイトで日々発信。プリント版は毎月28日頃発売。

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