力がみなぎり、活躍し続ける7人の女性。そんな彼女たちに仕事論とともに、頑張るエールをくれて、自身を後押しする“メシ”を伺いました。“たぎるメシ”があるから彼女たちはいつだってキラキラまぶしい!
1.松本若菜さんのたぎるメシ
“少し贅沢をしたい時に。私にとっての小さなご褒美です”俳優 松本若菜さん
たぎるメシ ぐつぐつたぎる 血潮かな
お店により個性やおすすめが異なるのが焼き鳥の魅力。「東京やきとり亭銀座本店」は、ドラマの撮影終わりに仕事関係の方と伺ったのが最初です。主役は愛知から毎日直送される新鮮な名古屋コーチン。味つけはうまみを最大限引き出す塩、部位は「皮正」が特に好きです。これは皮の間に胸肉を挟み、備長炭であぶって余分な脂を落としながら焼いたもの。表面パリパリ、中はジューシーな食感がたまらなく、あっさりめなのでビールとの相性抜群です。
俳優の仕事のために約10年アルバイト生活を続け、多いときは週6日入っていたことも。開花できているかはわかりませんが、今、こうやってオファーをいただけているのは、目の前の仕事に一生懸命、まじめに取り組んでいたから。見てくれている人はいたんだな、と感謝でいっぱいです。現場で心がけているのは、自分よがりになりすぎず、できるだけ透明な状態でいること。メイクや衣装、監督の演出や共演者の方とのお芝居から発せられる多彩な色を取り込むためにも、透明であること。そこから自分だけの色をつくるためにも、周りの方からの色をいただくことは、仕事において大切な作業のひとつだと思うので。曲げられない芯の部分はしっかり持ち、常に周りや自分を客観視しながら、新しいことを取り入れたり、挑戦できる柔軟な人になれたらいいなと思います。頑張れたら、少しだけ贅沢。ときには美味しいものを食べ、自分にご褒美をあげたいと思います。
東京やきとり亭 銀座本店
「皮正」1本¥610
DATA
東京都中央区銀座7の3の13・1F
☎03(3289)1031
営業時間:17時30分~22時LO(土曜~21時LO)
定休日:日・祝日
※基本はコース(¥3850~)からスタート。「皮正」は追加で注文を
俳優
松本若菜さん
1984年生まれ。「復讐の未亡人」(テレビ東京系)で連続テレビドラマ初主演。2022年9月公開の『マリッジカウンセラー』と2023年公開の『みんな生きている~二つ目の誕生日~』と映画も続々公開予定。
2.蛙亭 イワクラさんのたぎるメシ
“優しい人が作るごはんは、やっぱり優しい。元気をもらえるんです”お笑い芸人 蛙亭 イワクラさん
辛いもの たくさん食べて 辛さ消す
辛い料理が大好き。特に韓国料理の唐辛子の辛さはうまみが強く、爽快なので、ストレス発散にもなるなって。芸人の先輩に連れていってもらったのがここ。サムギョプサルは分厚いバラ肉が魅力なのはもちろん、お代わり自由のキムチ類や葉野菜、自家製のおかずもいっぱい。味がいいし、ボリューミーだし、店員さんも優しいし。「温かい人が作ると、味も優しいなぁ」と感動して、つい先日も行きました(笑)。
自己肯定力が低いから、不安や後悔のほうが大きかったけど、現場でウケたり褒められたことを素直に受け入れられるようになり、「私にしかできないこともある」と思えるように。落ち込んでも芸人仲間と助言し合ったり楽しむことで回復。元気の源にもなっています。
私、困ったときに食べ物を分けてもらえる人でいたいと思っていて。それは大阪時代、飲食のバイト先で人のぬくもりやまかないに救われたから。恩返しとしていつかお腹をすかせた芸人が気軽に通えるごはん屋さんをつくりたいです。
韓国料理 カンガンスルレ
「生サムギョプサルセット」 1人前¥1320
DATA
(東館)東京都港区赤坂3の12の13・2F
☎03(6459)1188
営業時間:11時30分〜翌5時
土・日・祝日 12時〜24時
無休
※「生サムギョプサルセット」のご注文は2人前から(写真は2人前)
1990年生まれ。ネタ作りを担当。「キングオブコント2021」のファイナリスト。YouTube「蛙亭のケロケロッケンロール」も人気。
3.BiSH セントチヒロ・チッチさんのたぎるメシ
“ルールがないし奥深い。気合注入のときも心を整えたい日もカレーです”ガールズグループ BiSH セントチヒロ・チッチさん
きみまもる 愛と勇気と 美味いカレー
BiSHに加入して活動をするようになり、初めて訪れた都会のカレー屋さんが「喜楽亭」。ここで初めて食べたのが「はやしかれー」です。カレーはもちろん、子どもの頃からハヤシライスも大好きで「両方のエッセンスが融合したメニューなんて素敵すぎる!」と、ときめいたのを覚えています。お店では優しいおばさまが迎えてくれ、一人でも居心地がいいところも好きでした。今でもカレーは勝負の日には必ず食べるし、ツアー中に地方でその土地について知りたいときも地元のカレー店を探します。また、心を静めたいときには自分で香辛料をブレンドし、無心でスパイスカレーを作ることも。
幸せがあふれているときに「たぎってる!!」と感じます。好きなものを食べられる瞬間は、生きるうえでこの上なく幸せな時間。私もそうだし、皆さんもたくさん頑張っているからこそ、幸せに生き抜きましょう。好きなものを食べ、好きなことをして、そして可愛い“イケおば”になりましょう!
ビストロ 喜楽亭
「はやしかれー」¥1485
DATA
東京都世田谷区池尻3の30の5 ニュー池尻マンション
☎03(3410)5289
営業時間:11時〜23時
不定休
ガールズグループ BiSH
セントチヒロ・チッチさん
“楽器を持たないパンクバンド”のメンバー。熱い歌唱と繊細な歌唱を使い分け、感情を全面に出すBiSHの支柱。12カ月連続リリース中。
4.スタイリスト郡山雅代さんのたぎるメシ
“慌ただしいさなかにすする、代えのきかない至極の一杯”スタイリスト郡山雅代さん
だいすきな ターメンだけは やめられない てへ(字余り)
雑誌のメイクテーマや化粧品のカタログの撮影のスタイリング、化粧品ブランドの発表会のディスプレイ——。多忙を極めると、なかなか家に帰れず、充分な睡眠がとれない日が続きます。仕事のことで脳内がパニック状態になったときの最上の癒しがラーメン! おかげで週に2〜3回、いや2日に一度は食べております。30年前から足しげく通うのが「こうや」。白濁の豚骨ラーメンがポピュラーな鹿児島から上京した私、初めて食べたときはひっくり返るほどの衝撃を受け、未体験の美味しさにも感動。豚骨と鶏ガラの澄んでいるのにコク深いスープ、特注麺、自家製のチャーシューやメンマ……以来、代えのきかない存在です。
車で四谷を通るたび、たとえお腹がすいていなくても(笑)、吸い寄せられてはカウンターで「支那麺」をすすります。ここで最高の癒しをもらい次の仕事場へ。現場では常に楽しく、気持ちよく! 落ち込むことがあっても、食べて飲んで寝る! 引きずらない、以上!
支那そば屋 こうや
「支那麺」 ¥850
DATA
東京都新宿区四谷1の23・1F
☎03(3351)1756
営業時間:11時30分〜23時
定休日:日曜
スタイリスト
郡山雅代さん
静物やインテリアのスタイリングを中心に活躍。イベント会場や店舗ディスプレイ、カリグラフィ制作も。
5.アナウンサー宇賀なつみさんのたぎるメシ
“食べることは生きること! 明日への活力になると信じています”アナウンサー 宇賀なつみさん
ホテルの洗練された空間、背すじがスッと伸びる雰囲気が好き。“ホテルが似合う大人”でありたいので、自分へのご褒美として宿泊したり、仕事することも。「パレスホテル東京」は、局アナ時代から足を運ぶ場所。早朝の番組を担当していたので、早い時間からお酒やディナーを楽しんでいました。必ず注文するのは、トリュフのフライドポテト。ゲランド塩のトリュフソルト、トリュフオイルをからめ、削ったトリュフまでのせた完璧さといったら! お酒とともに優雅に味わいたいのに、つい夢中でパクパクと……。あまり細かいことは考えず、食べたいものを食べたいタイミングで味わうことで、明日への活力になると信じています。
アナウンサーに必要なのは、体力と気力、そして好奇心かなと思います。落ち込むことや悩むことがあったら、そのときはひたすら書く。書きながら反省や自己分析をして、次に生かそうとします。そうすると、失敗ではなく成功のためのステップになるので。
パレスホテル東京「グランドキッチン」
「トリュフとトリュフソルトを添えたフライドポテト」 ¥1600
DATA
東京都千代田区丸の内1の1の1パレスホテル東京1F
☎03(3211)5364
営業時間:7時〜22時(土・日・祝日は6時〜)
無休
※サービス料別
アナウンサー
宇賀なつみさん
1986年生まれ。テレビ朝日を退社後、テレビ朝日系「池上彰のニュースそうだったのか!!」、フジテレビ系「土曜はナニする!?」などに出演。
6.小説家 千早 茜さんのたぎるメシ
“私にとって「命のスープ」。このお店のようにプロ仕事を長く続けられたら” 小説家 千早 茜さん
忙しいときほど栄養があり、体に優しいものを食べます。となるとスープがいちばんで、大きな仕事があると、自分で仕込むところから始まります。執筆も原稿直しも大抵はひと晩や一日で完成しない、地味でこつこつやる仕事。長く静かにたぎらせることが大事だと思っています。それこそ「コム・ア・ラ・メゾン」のように。
ここは開店から21年、メニューも味も変えない堅実さと安心感があるビストロ。スープ・ド・ガルビュールはフランス南西地方の郷土料理で白いんげん、じゃがいも、ポロネギ、根セロリ、かぶ、ちりめんキャベツなどを形がなくなるまで骨つきの生ハムや鴨脂とともに強火で煮たとろとろのスープ。見た目は地味だけれど、うまみがすごい。ひとさじごとに心身が豊かになっていく。
単身で東京に引っ越し、真っ先に行った店がここでした。スープを食べると体の力が抜け、疲れが霧散。初めて住む東京は不安だけれど、こうやって一人で幸せになれる場所があれば大丈夫だと感じました。
コム・ア・ラ・メゾン
「スープ・ド・ガルビュール」 ¥1980
DATA
東京都港区赤坂6の4の15
☎03(3505)3345
営業時間:17時〜22時LO
定休日:日曜
小説家
千早 茜さん
1979年生まれ。『透明な夜の香り』(集英社)など著書多数。『わるい食べもの』(ホーム社)など食にまつわる著書も必読。
7.美容エディター&ライター森山和子さんのたぎるメシ
“幸せがあふれ、エネルギーは満タンに。食は頑張るモチベーション!”美容エディター&ライター森山和子さん
あぁ美味しい! だから大人は最高だ!!
元気が出ないときや疲れ切った日、パワーをつけたくて焼き肉と向き合うのに、こってりすぎるとむしろ体調不良になることが(苦笑)。でも炭火で焼く「焼肉東京パンチ」は別。タン塩も、鮮度が高く片面焼けばいいロースも飲めるほどやわらかく、食べごたえがあるのに後味あっさり。注文ごとにもみ込む自家製ダレも上品。つまり最高! 幸せが体中を巡り、エネルギーがみるみる回復します。美味しいものを好きなだけ食べ、飲み、「また来よう」と話したり、あと何日で美味しいものが食べられると考えるだけで仕事を頑張るモチベーションになる。大人になってよかったと思える瞬間です。
食でエネルギーを補給したら、いざ仕事。ページの編集や原稿書きではルーティンにならないよう、愛をもって常に楽しみや新しさを見つけて取り組む。一人では成立しない仕事ゆえ、関わるスタッフを尊重し、個々の魅力やパフォーマンスが最大限発揮できるような環境や空気をつくりたい。日々精進です。
焼肉 東京パンチ
「ロース」¥1880・「タン塩」¥1980
DATA
目黒区鷹番2の13の8・3F
☎03(6451)0902
営業時間:17時〜23時
不定休
美容エディター&ライター
森山和子さん
ハイブランドからプチプラまであらゆるコスメに精通。卓越した審美眼とセンスで、誰もがためになる&洒落感あふれるページを作る。
撮影/湯浅 亨 取材・原文/広沢幸乃 構成/渡辺敦子 ※BAILA2022年10月号掲載