家を買うにあたって必要な貯蓄や、お得な制度、ローンの返済方法まで。絶対押さえておきたいマイホームにまつわるお金の心得をラインナップ。
ファイナンシャルプランナー なごみFP事務所
竹下さくらさん
1998年にFPとして独立し、主に個人向けのコンサルティングを行う。『「家を買おうかな」と思ったときにまず読む本』(日本経済新聞出版社)や『書けばわかる!わが家にピッタリな住宅の選び方・買い方』(翔泳社)など著書も多数出版。
1.世間の「買いどき」と自分の「買いどき」はイコールではない
家の購入は、“物件価格”“税制優遇”“金利水準”“ライフプラン”という4つの要素を踏まえて検討しましょう。現在、物件価格は高騰していますが、金利は低く、お得な税制優遇もあります。物件価格だけで判断すると、“買いどき”とはいえませんが、「結婚・出産をしたから広い家が必要」「定年までにローンを返済したい」など、ライフプランが明確にあるのであれば、その人にとっては今が家を買うベストタイミングともいえます。
2.「売る・貸す」可能性があるなら、価値が下がりにくい家をチェック
転勤や異動で将来、家を売却したり、貸したりする可能性がある人は、“10年後も資産価値が維持できる物件選び"が重要です。特に、立地条件のよさはポイント。駅からの距離が徒歩10分以内の物件は、値くずれしにくいです。また、50㎡以上の広さで、街の住人層に合った住戸を選べば、買い手・貸し手が見つけやすいです。ほかにも、インフラが整備された街かどうかなども価値に直結します。
□電車の駅から家まで近い物件
□街の住人層に合った物件
□鉄道のアクセスが便利な物件
□街並みに魅力がある、住環境がよい物件
□管理が行き届いていて、古くさくない物件
3.購入時は現金も必要!まずはいくら貯蓄があればいいか知る
家の購入には、“諸費用”と“頭金”を現金で用意する必要があります。諸費用は、新築マンションなら物件価格の約3〜5%、中古マンションや建売住宅など仲介業者から購入するなら約6〜8%が目安です。頭金は、ローン返済に不安があれば物件価格の約1〜2割を準備しておきましょう。近年は、融資条件として“頭金ゼロ”でも家が買えますが、おすすめはしません。また、予備費として、生活費の半年〜1年分も残しておくと安心。
例)5100万円の新築マンションを購入するとしたら…(金利1%、返済期間35年間)
諸費用とは
◦印紙税(1万~2万円)
◦登録免許税(10万~15万円)
◦司法書士報酬(10万~15万円)
◦不動産所得税(3万~15万円)
◦融資手数料(1万~5万円)
◦火災保険(10万~20万円)
◦ローン保証料(約60万円)
+仲介手数料(物件価格の3.3%+約6万円)
頭金・手付金とは
頭金とは、住宅購入代金のうち、現金で支払う金額のこと。手付金は、売買契約を交わすときに、買主が売主に渡す現金のこと。契約の成立を担保する目的のため、無事に契約が成立すれば、頭金に補塡される。
4.共働きの夫婦であればペアローンを検討してみて
夫婦で住宅ローンを借りる方法は、ペアローンと連帯債務型、連帯保証型の3つ。特に、夫婦どちらもが税制控除を受けられる、かつ、所有権を持てる前者二つがおすすめです。お互いに年収300万円以上の夫婦であれば、二本のローンでひとつの住宅を購入する“ペアローン”を検討する人が主流。住宅ローン契約者と連名で一本のローンを契約する“連帯債務型”もありますが、取り扱う金融機関が限られています。
[ペアローン]
【住宅ローン契約】両者が主債務者で、別々に返済する
【住宅ローン控除】それぞれに適用される
【事務手数料】二人分
【団体信用生命保険】両者加入が必須。片方が死亡した場合、死亡した人の返済だけが免除になる
【所有権】お互いにあり
[連帯債務]
【住宅ローン契約】片方が主債務者、もう片方は連帯債務者に。それぞれが返済義務を負う
【住宅ローン控除】両者に適用される
【事務手数料】一人分
【団体信用生命保険】連生団信で一方の死亡時に全額が返済免除
【所有権】お互いにあり
5.購入後、毎月かかる費用をきちんと把握しておくべき!
ローンの返済額に加えて、マンションを購入した場合は、管理費と修繕積立費が毎月かかります。この金額は、住んでいる間に上がる場合も。ほかにも、年1回の固定資産税や都市計画税の支払いがあります。購入後のランニングコストは賃貸のように単純ではないので、あらかじめシミュレーションしましょう。
例)5100万円の物件(頭金100万円、金利1%、返済期間35年間)
①毎月の返済額→14.1万円
②毎月の維持費(管理費+修繕積立費)→約2万円
③固定資産税+都市計画税→月1万円相当
①+②+③=毎月約17.1万円
6.よく聞く金利って?種類を知っておこう
住宅ローンを契約するとき、まずは金利を選ぶ必要があります。金利は大別すると、借入期間中は金利が変わらない“固定型”と、経済情勢の変化で金利が変動する“変動型”の二つ。近年は、低金利時代のため変動型が人気ですが、貯蓄の少ない人には固定型がおすすめです。金利は毎月変わる上に、銀行によって金利額が異なるので比較検討を!
変動型
金利は半年ごとに、返済額は5年ごとに見直し。金利は低めに設定されているが、将来上昇する可能性が
(全期間)固定型
借入時に全期間の金利が固定される。金利水準が上昇しても、返済額は変わらない
7.家購入のタイミングで保険を見直すのがベスト
住宅購入には、「団体信用生命保険」と「火災保険」の加入が必須です。そのため現在加入中の保険に、団信と重複する保障がないか見直しましょう。また、ケガや病気で働けなくなったときの生活費の補塡といった、団信ではカバーできないリスクがあります。万が一のときに必要な保障額を把握して、足りない保障があれば加入しておくと安心です。
団体信用生命保険
ローン契約時に原則全員が加入する生命保険。返済者が、死亡もしくは高度障害になった際に、保険金で住宅ローンが完済されるため、残された家族は自宅に住み続けられる。
火災保険
基本的に、住宅ローンの借入先の銀行で火災保険に入るか、自身で契約して保険証券を銀行に提示することが必須。建物だけでなく、家財の火災保険への加入も忘れずに。
地震保険
地震・火山の噴火、またはこれらによる津波を原因とする火災・損壊・埋没・流出に備える保険。火災保険は、地震による火災、倒壊などは補償していないため加入を推奨。
8.「戸建て」or「マンション」は自分のライフプランに応じて要検討
自由度の高い暮らしを求めるなら“戸建て”、資産価値や利便性を重視するなら“マンション”がおすすめです。金銭面でいうと、ローンを完済すれば、戸建ての場合は毎月の返済がなくなりますが、マンションの場合は維持費の支払いが続きます。自分が望むライフスタイルと、厳しく試算した今後のマネープランをすり合わせて、どちらがよいか判断するとよいでしょう。
[戸建てのよさ]
□暮らしの自由度が高い
□ペットを気兼ねなく飼える
□好きなタイミングで修繕できる
[マンションのよさ]
□資産価値が高い
□立地のよさを追求できる
□光熱費を抑えられる
9.お得な減税制度も家選びの基準にしてみよう
家の購入時にかかる税金は、一定の条件を満たすと軽減されます。代表的な減税制度が、“住宅ローン控除”です。控除の対象要件には原則として、「登記簿面積が50㎡以上」をはじめとした要件があり、2024年からは、新築物件は省エネ性能の高い物件を対象とする点に注意。3000万円の物件なら最大で年間21万円、13年間で273万円が減税されます。
住宅ローン控除
住宅ローン残高の0.7%相当額が、新築住宅・中古住宅の買取再販だと13年間、中古住宅だと10年間、住民税から控除を受けられる。“所得が2000万円以下”や、“借り入れるローンの返済期間が10年以上”など、控除には条件がある。
贈与税の非課税枠
一定の要件を満たせば、親や祖父母から住宅取得資金として受けた贈与が非課税となる制度。省エネ・バリアフリー住宅は1000万円、その他の住宅は500万円まで課税されない。
10.いずれ「繰り上げ返済」を考えるのも手
たとえば、子どもが独立して教育費が浮いたり、ボーナスが入ったりして、お金に充分な余裕が生まれたら、ローンの「繰り上げ返済」を検討してください。返済方法は、返済期間を短縮する「期間短縮型」と、毎月の返済額を軽減する「返済額軽減型」の2タイプがありますが、将来の支払い利息を減らせる効果は前者が大。住宅ローン減税の期間中であっても、繰り上げ返済を行ったほうが、ローンの総支払い額を抑えられる可能性が高いです。
[最低限残すお金]
教育費など支出が決まっているお金
6カ月分の生活費
取材・原文/海渡理恵 ※BAILA2024年2・3月合併号掲載