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【お金と私の幸せな関係】文筆家ツレヅレハナコさんは女ひとりで家を建てて、自分にとっての優先順位が明確に

お金にまつわることで、素敵な経験を重ねた人生の先輩たちにインタビュー。お金とのつきあい方が、すっきり晴れやかになる視点が満載‼︎ 文筆家のツレヅレハナコさんは思い切って家を建てることを決意。人生で一番大きな買い物をしたことで、自分の価値観を再認識したそう。

女ひとり家を建てて、お金の見え方が変わった

ツレヅレハナコさん

文筆家

ツレヅレハナコさん


食と酒と旅を愛する編集者・文筆家。台所用具や料理についてのイベントや商品開発にも携わる。著書に家づくりの経緯を書いた『女ひとり、家を建てる』(河出書房新社)、ほか、『女ひとりの夜つまみ』『まいにち酒ごはん日記』(ともに幻冬舎)など多数。

人生でいちばん大きい買い物をしたら自分にとって何が必要で、何が必要でないかがわかった

30代半ばまではお金に無頓着。変わるきっかけは家づくり

食べること飲むことにお給料を使い切った20代。そして、お金が動くことについて、格別の面白みを感じないまま過ごした30代……出版社に勤めていて、この特集のようなお金に関する記事をさんざん作ったものの、自分ではまったく実行しませんでしたね(笑)。お金の意味が変わったのは、40代の初め、自分で自分の家を建てたこと。それは「どんなふうにお金を使うと、自分の人生を豊かに楽しくできるか」ということに気づく経験でした。    

それまで長く住んでいた古い賃貸マンションは、台所のコンロわきの窓から光が差し込む造りがお気に入り。一人暮らしの家賃にしては少々割高でしたが、好きな家だから払い続けてもいいや、と思っていました。周囲の友人もマンションを買い始める時期、でも、まったく他人事、ローンに関する事務処理なんて面倒すぎて想像もつかない。  

最初のきっかけは、知り合いの建築家に「いつまでここに住むの?」と聞かれたことでした。「台所が素敵だから、ずっと暮らしていきたいなー」と答えたら、「賃貸は、自分の財産には決してならないんだよ。今の金額を払い続けるなら、購入ということも考えたほうがいい」と。今後消えてゆく金額を具体的に思い浮かべてみると、確かに! そこでやっと、リノベーションを前提とした、中古マンションの購入を考えたのです。同時に、自分のお金の“見える化”にも着手しました。フリーランスである私は、今、一体いくらお金を持っていて、将来、どれくらい稼げるのか。プロに聞くのがいちばんと、税理士さんに学びました。自分の人生において、入るお金と出るお金を把握することも初めてでした。    

そうして始まった物件探しですが、「家のメインは台所」しかも「サイドから光が入る窓のある台所」が必須条件。そんな特殊な住宅が予算内で見つかるわけもなく(笑)。ある日、雷に打たれたように「もしかして私の理想の物件は、この世に存在しないのでは?」と気づきました。不動産屋さんは「はい、ですからハナコさんにはずーっとそう伝えていました」と苦笑い。そりゃそうですよね……。自分が一生住むつもりの家なのだし、予算はギリギリまで出すつもり。ただし、自分の理想がかなわないのなら、一切妥協するつもりはありません。あきらめかけたとき、建築家から鶴のひと声。「いっそ切り替えて、建てる方向でいかがですか?」「何それ? 私にも建てられるの?」と衝撃!

お金の使い方によって自分の楽しませ方を知る

早速、今あるお金で、土地を購入して家を建てるにはと、あらためて自分の優先順位を見直しました。絶対譲れないことについての意志は固いし、決断も早い性格。最終的には希望の沿線という条件をあきらめ、今の土地に出会い、1カ月で購入を決意。もちろん「サイド光の入る台所」は死守しました!    

家を建てるには、照明ひとつとっても、自分で選んで買わねばなりません。買い物に対する考え方が変わる体験でもありました。普段はこっちの大根のほうが20円安い、とか言っているのに、万単位のお金が小さいことのように思えてくるんです。その一方で仕事のモチベーションも上がりました「この原稿で柱一本稼げる!」って(笑)。    

人生でいちばん高い買い物をして、自分と向き合い、何が必要で、何が必要でないかをひたすら考える。なかなかしんどい作業でもありましたが、振り返ると、やっぱり楽しかった! お金と全然仲よくなかった私が、お金についてきちんと考えるようになったのもすごいことです。    

食べること、飲むこと、旅すること、今まで好きなことをみんな仕事にしてきたので、私は、好きなことにお金を使えば、自分に戻ってくると考えています。「女ひとりで家を建てる」こともそのひとつ。自分の価値観も変わったし、新たな仕事につながっています。興味を持って、楽しんで、だからみんなに広めたいと思ったことについて、お金の出し惜しみはしたくない。それは将来への投資でもあるからです。    

景気がよくなる兆しは見られないし、老後が不安という気持ちもよくわかる。でも、今を生きる人たちには「使うことを怖がらない」でいてほしいと思います。お金は有限なので、どうするかはその人の価値観で決めるのがいちばん。ただ、自分にとっての優先順位を決めるのはとても大事。みんなが持っているから欲しい、とか、みんながよくやっているから私も、と、漠然と流されて消費するのではなく、「その使い道は自分にとってどんな価値があるか」を見極めると、お金の使い方って、変わってくると思いますよ。

新居設計の当初から、暮らしと仕事の中心として考えられた台所。

新居設計の当初から、暮らしと仕事の中心として考えられた台所。2階の半分のスペースを使って自分好みに

サイドから光が入る台所 これが欲しくて家を建てた!

サイドから光が入る台所 これが欲しくて家を建てた!
「このために家を建てた」と言っても過言ではない、ガスコンロのわきから差し込む“サイド光”

柱も、床も、どこにお金を かけるかは、自分で決断

柱も、床も、どこにお金を かけるかは、自分で決断
施工中の新居。「たとえばフローリング、長くいるリビングにはいい材質を使い、代わりに寝室や書斎には値段を抑えたものを。など、考え抜きました」

ツレヅレハナコさんのお金と人生哲学

□ どんなふうにお金を使うと楽しく豊かになれるのか。自分の価値観に従って、優先順位を決める
□ 漠然と消費するのは禁止。だけど好きなことに惜しみなく使ったお金はきっと自分に戻ってくる

取材・原文/久保田梓美 ※BAILA2022年9月号掲載

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