毎日の買い物も、仕事で得る給与も、投資も、お金を介して私と社会はつながっている。お金に自分の意思を込めてもっとお金と仲良くなるために、今回は、クラウドファンディングに焦点を当てて、お金にできることを考えてみたい。日本で初めてクラウドファンディングを展開した「レディーフォー」の代表、米良はるかさんにインタビュー。
クラウドファンディングがあれば社会課題の解決に少額から支援ができる
READYFOR代表取締役CEO
米良はるかさん
1987年東京都生まれ。慶應義塾大学経済学部卒業。スタンフォード大学留学の後、2011年にクラウドファンディングサービス「READYFOR」をスタートさせ、2014年に株式会社化。日本人史上最年少でダボス会議に参加。「人生100年時代構想会議」や内閣官房「新しい資本主義実現会議」の民間構成員を務める。
自分の気持ちにフィットする活動に資金を届けて応援
クラウドファンディングとは、インターネットを介して、個人や組織の思いや活動を発信し、応援したい、サポートしたいと共感した個人から資金を募るサービス。寄付や出資の手段として市民権を得て久しい通称“クラファン”を、初めて日本で展開したのが米良はるかさん率いるレディーフォーだ。
「大学生の頃から、個人が持つ課題解決への強い思いを、周りの人々が応援しながら前進させ広げていくことが、よりよい社会をつくると考えていました。アメリカの大学に留学した際に、クラウドファンディングという概念を知り、帰国後にレディーフォーを創設。支援した人に対して、モノや権利、またはふるさと納税のような税額控除が得られる仕組みを取り入れました。プロジェクトを立ち上げる実行者とコミュニケーションをつくることで、支援者は自分が支援したお金が何に使われ、どう社会を変えていけるかを見届けられます」
このとき実行者と支援者の間で起きているお金の流れは、ちょうど“寄付と投資の間”。米良さんは、クラファンでのお金の役割をどうとらえているのか。
「ひとつは、何かを成し遂げようと行動するときに欠かせないものだと思います。活動内容がいくら尊くても、資金がなかったら実現が難しい。また、ビジネスはマーケットの大きさで決まるので、ある特定の人には大きな課題であっても、市場がニッチだとお金が集まりません。資本主義において光が当たりにくい領域にもお金を流していきたいと思います。もうひとつは、応援の可視化。私も起業家なのでわかるのですが、信念や強い思いを持って活動しても、周りが反対する人ばかりだったら実行する気持ちが続きません。プロジェクトを終えた実行者の方がおっしゃるのは、『自分の活動がより多くの人たちに広がって知ってもらえた』という実感。お金を通して、実行者も支援者も仲間を見つけることができます」
まさにクラファンは、自分の課題をその大小にかかわらず表明でき、またプロジェクトに共感した人は少額から支援できるため、「できることから始める」という社会活動の第一歩として、個人の意思を伝えやすい手段である。
「コロナ禍で、困っている人を助けたい、社会課題の解決に貢献したい思いが強まったと思います。そんな方は自分がワクワクしたり、自分の感性と似ていると感じたりするプロジェクトを見ていただくと新しい発見があります。私は去年出産をしたのですが、仕事と子育ての両立や産前産後の女性の体の変化を経験して、お母さんが欲しい情報を手に入れることが思ったより難しいと気づいたんです。プロジェクトを見ると、同じ問題に取り組む人がいて心強かった。レディーフォーは、課題を抱える人同士が自分の意思や気持ちを素直に伝え合える場でもあるんです」
READYFORがおすすめする3つのプロジェクト
飼い主のいない犬と猫に医療を届けるしくみを|ハナコプロジェクト
達成
支援総額 72583000円
最終目標金額 50000000円
リターン 3000円〜
テレビディレクターの山田あかねさんと俳優の石田ゆり子さんが立ち上げた、飼い主のいない犬と猫の医療費を支援する団体。動物の保護活動で負担となる不妊去勢手術や子犬子猫のケアなどの費用を募り、救える命を増やすことを目的としている。
from READYFOR
アメリカでは、多くの俳優やセレブリティが社会課題にアクションを起こしています。日本でもSNSの普及で著名人がファンの方に日頃から自分の生活や考えを発信しやすくなり、社会活動がしやすくなっていると感じます。
ウクライナ避難民学生支援
募集中
目標金額 3000000円
募集締切 8月14日午後11時
リターン 3000円〜
日本経済大学が、ウクライナからの避難民学生と交換留学生68名に、継続した学びの機会を提供するために日本経済大学ウクライナ避難民学生支援基金を設立。支援金は、大学が受け入れた避難民学生の生活支援費、教育活動費などとして活用。
from READYFOR
レディーフォーでは、現在世界で起きている問題をプロジェクトとして取り上げている実行者も多く、ニュースではうかがえない活動現場の声を知ることができます。興味のある社会課題を自分ごと化する手段としても有効です。
遍在する音楽会|8/25 世界は、音楽に満ちている。
募集中
目標金額 5000000円
募集締切 8月8日午後11時
リターン 3000円〜
落合陽一氏と日本フィルハーモニー交響楽団が手がける"テクノロジーによってオーケストラをアップデートする"音楽プロジェクトの制作費に充てる資金を募集中。視覚と聴覚の融合や、音楽というメディアが放つ身体性と祝祭性の表現を形にする。
from READYFOR
これまでにない新しい文化、エンターテインメントが生まれる場に立ち会うことができる魅力的なプロジェクト。本音楽会の実施は決定していて、目標金額の達成の有無にかかわらず、支援金を受け取るAll In形式を取っています。
撮影/小渕真希子 取材・原文/力石恒元 ※BAILA2022年9月号掲載