たとえば、住みたい家が東京で見つからないとき。旅の途中、そこで暮らす自分を想像したとき。家族の事情で引っ越すことになったとき……。転職よりもかなり大きな一歩ではあるけど「この選択肢、アリかも?」。キャリアや人生を見直した結果「地方移住」を決める人が増えています。暮らす場所を移すことのリアルに迫りました!
「地方移住」は増加傾向’14年から’22年で約4倍に
政府が地方創生政策に注力した’14年頃から移住希望者が急増。コロナ禍に人生の棚おろしをした人や、フレキシブルワークの浸透によって、’22年は過去最多(相談件数)となった。
私、移住しました「移住」先輩STORY
自分らしいワークライフバランスを移住でかなえた5人の暮らしぶりをレポート
【CASE1】仕事と生活を見直した矢先にワイン醸造家と結婚。二拠点を経て完全移住
フリーランスディレクター
田上陽子さん(42歳)
【TOKYO →→ HOKKAIDO】
25歳 PR代理店に勤務
30歳 マッシュビューティーラボに入社。スキンケアブランドを立ち上げる
35歳 メイクアップブランドを立ち上げる
39歳 独立。ジュエリーブランドを立ち上げる
40歳【移住決意】結婚。東京と北海道の二拠点生活を開始
41歳 北海道に完全移住。出産
【田上さんの移住ポイント】
☑︎「どこにいても働ける自分」を構築した
「1年かけてオンラインでも働ける体制を整えて独立。移住前に立ち上げた、ジェリーブランド『ENEY』のディレクションは、今後も大切にしたい仕事軸の一本です」
☑︎1年間の二拠点生活を準備期間に
「1カ月の約半分を北海道で過ごすという二拠点生活を、約1年とリミットを設けて実施。この間に、移住先の生活が自分に合うかや、東京での生活の整理をしました」
想像もしなかった未来だからこそウェルネスを実践できている
自らの手で一つひとつ丁寧に作り上げる本質的な豊かさ
PR業界を経て入社したマッシュビューティーラボ時代にオーガニックコスメブランドやメイクアップブランドを立ち上げ、多忙を極めた田上さんは、39歳で独立を果たした。
「ウェルネスを発信する側にもかかわらず、当の私は仕事中心。自分の生活がおろそかになっていることに矛盾やジレンマをずっと感じていて、暮らしを見直したかった。想像できない未来に進んでみたいという思いでフリーランスになりました」
コロナ禍を機に、日本国内を旅するようになっていた田上さんは、独立後すぐに、旅先の北海道でワイナリーを経営する現在のパートナーと出会い、結婚。移住を決める。
「1年と期限を決めて、まずは東京との二拠点生活をスタート。その期間に、東京での仕事を整理し、北海道の気候や生活スタイルに自分を慣らしていきました。正直、コンビニが徒歩圏内にあり、タクシーがすぐにつかまる便利な東京の生活とは正反対のこちらの暮らしは大変なことも多い! でも、そのギャップにも意外とすぐに慣れました」
現在の仕事は、パートナーが運営するワイナリーの業務と、独立後に立ち上げたジュエリーブランド「ENEY」のディレクター業の二軸。
広大なワイナリー。春から始まる栽培期は、朝5時に起きて夕方頃まで畑仕事に勤しむ。作業終了後は、畑仕事を手伝ってくれた方々と食事をすることも
昨年、ハーブの栽培と販売を開始
「ワイン農園は季節によって業務が異なり、ブドウの栽培期間である春からは、朝5時に起きて夕方まで畑仕事をする日々。冬は営業先の飲食店を訪問したり、ワインの醸造・瓶詰めなどをしています。経理業務やラベル貼りといった細かな作業も、チームで得意分野を分担していた会社員時代と違い、すべてが自分の仕事。これまで見て見ぬふりしてきた“苦手”や“できない部分”に向き合う毎日ですが、少しずつ成長する自分を感じられていいなと思っています。去年からは地域おこし協力隊の制度を通じてスタッフが一人増えました」
今、田上さんには密かな夢がある。
「先シーズンから自分のハーブ農園を始めて、今年は野菜も育て始めたいと思っています。というのも、ワイナリーには、畑仕事を体験したいという人が、よく手伝いに来てくれるんです。そういった方が滞在できる宿を作って、農業体験とワイン、あと、体にいい野菜やハーブで作る料理を提供できたら……と妄想中です。北海道に来て、料理が日常になって、食材作りを始めて、理想的な家も建てることができた。移住前は、こんな生活をまったく想像していなかったけれど、今着実にウェルネスな生き方に近づけていると思います。これからさらに生活の質を上げて、心身ともに豊かな暮らしのあり方を、世の中に発信していきたいですね」
「氷点下になる冬は、雪かきが必至。おかげで筋力がアップしました」
ジュエリーブランド「ENEY」の打ち合わせの様子
【CASE2】「今までと同じ仕事」を軸にスムーズな子連れ転勤帯同を実現
富士通 戦略企画
城 愛美さん(35歳)
【TOKYO →→ OSAKA】
22歳 実家のある名古屋で大学卒業。上京し、富士通へ入社
28歳 結婚
32歳【移住決意】育休中に夫の大阪転勤が決定
33歳 復職。ワンオペ期間を経て大阪へ移住
【城さんの移住ポイント】
☑︎ 保育園+職住の近接を優先事項に
「家は保育園と夫の職場への近さを重視。最終的に、入園可能な保育園があった都心部に決めました。公園やスーパーも充実していて子育てしやすく気に入っています」
☑︎ 勤務先の遠隔勤務制度を利用
「家族の転勤や介護といった家庭事情がある場合に利用可能な『遠隔勤務制度』で、大阪からフルリモート勤務。月1〜2回は、日帰りで東京オフィスに出社しています」
思いがけない移住で暮らしに生まれたちょっとした余裕
第一子の育児休暇が明け、職場復帰のタイミングと、夫の大阪転勤が重なった城さん。
「家を購入した矢先の出来事で、子どもと東京にとどまるか悩みましたが、3カ月のワンオペを経験し、両立の大変さを痛感。『遠隔勤務制度』を活用して家族で大阪へ引っ越すことに。土地勘もなく、転園先と家探しの同時進行は大変でしたが、夫の勤務先と保育園が近いことに条件をしぼり、リモートワークも快適にできる家を見つけることができました」
生活の準備に手間がかかった一方で、仕事はスムーズに移行。
「東京勤務時代から、私の部署は基本的にリモートワークがメイン。また、今回の制度活用に伴う職種の変更もなかったため、これまでどおりの働き方で、新天地で仕事を再開できたことは、精神的な拠り所になっていました」
大阪移住は、思いがけず、時間に余裕を生むことにもなった。
「職住近接がかなったこと。また、愛知と滋賀に住む私たち夫婦の両親に、子育てのフォローアップを頼みやすくなったことで、以前より出張も躊躇せずに引き受けられるようになって。仕事のパフォーマンスが上がったと思います」
今は、関東とはまったく異なる文化を持つ関西を家族全員で満喫中。
「京都や神戸に1時間ほどで行けるため、休日は、近隣県に足を延ばして、1泊2日のホテルステイを楽しむことも。夫がまたいつ転勤するかわかりませんが、限られた期間の中でも、この土地にできるだけ根ざしていきたいと思っています。できれば、自分だけのローカルなつながりができるような余白を作ることが今の願望ですね」
景色を一望できる開放感あふれる部屋でリモートワーク
大阪駅にて。休日は、家族全員で再開発が進む大阪の建築めぐりを満喫
【CASE3】もっと近くで応援したい!カープ愛を単身移住の原動力に
人材派遣 キャリアコンサルタント
板倉真弓さん(44歳)
【TOKYO →→ HIROSHIMA】
16歳 神宮球場で広島カープの試合を初観戦
23歳 北海道へ移住。アルバイト中心の生活
30歳 東京へUターン移住。正社員としてIT企業に勤務
36歳【移住決意】広島へ移住
41歳 広島の人と結婚
【板倉さんの移住ポイント】
☑︎ 「1年後に移住」と目標を立てて準備
「当時の家の更新期限もあり、翌シーズン終盤には広島移住の計画で、貯金や家探しを開始。その結果、’16年の25年ぶり7度目のリーグ優勝のパレードは現地で祝えました」
☑︎ 居住地としての広島を知るために行動
「片道の交通費を自治体が負担してくれる『片道交通費支援制度』を使い市内を“住む目線”で視察。広島にゆかりのある人たちの飲み会にも参加し生活イメージを深めました」
“好き”を突き詰めたらパートナーにも出会えて幸せに満ちた毎日に
高校生で広島東洋カープのファンになった東京出身の板倉さん。
「30代になってからは試合のために遠征して応援を満喫していました。そんな2015年10月、シーズン最終戦をテレビで観戦。試合に敗れ、クライマックスシリーズ進出を逃したときに悔しさで号泣、カープへの愛が最高潮に。『カープが近づいてくれないのなら、自分が近づこう』と思い立ち、移住を決意。まずは情報収集のために、有楽町にある『ふるさと回帰支援センター』へ。相談員の方に、移住の先輩に出会える集まりの存在や、片道交通費支援制度を紹介され、観光ではなく、暮らす視点で広島を見ることを始めました」
そうして、広島の風土や生活について具体的にイメージをふくらませると同時に、転職活動も開始。
「試合観戦の予定を確保できるよう土日休みで、平日は18時には終業でき、かつ球場に近い地元企業をハローワークで探しました。希望に合う事務職に就けました」
41歳のときには、市内でレストランを営む地元出身の男性と結婚。
「移住の取材を受けたときに、連れて行ってもらったのが夫のお店で。勤務先に近かったので定期的に通うようになり、今に至ります。もちろん二人で試合観戦に行くことも。カープがつないでくれた縁には感謝しています!」
カープ愛で移住した広島市は、暮らしやすさも抜群だという。
「コンパクトな町で、病院や役所も近距離にあり、少し足を延ばせば、海も里山もあり、野菜もお米も絶品。カープ仲間も増え、試合のチケットは東京にいたときよりも断然入手しやすいです(笑)。移住して、本当に幸せです」
仕事後は、本拠地「マツダスタジアム」でビールをお供に試合観戦
広島市から約1時間強。厳島神社でカヌー体験
コックコート姿の夫と、お店で結婚記念写真を撮影
【CASE4】自分を満たす環境を求めて実家へUターン移住を決断
監査法人 会計監査職
三上舞子さん(31歳)
【TOKYO →→ TOYAMA】
22歳 カリフォルニアの大学を卒業し就職
24歳 米国公認会計士の資格を取得
26歳 東京への転勤に伴い帰国
27歳【移住決意】PwC Japan有限責任監査法人に入所
28歳 富山にUターン移住
【三上さんの移住ポイント】
☑︎ ビジネスの基礎として会計の道を選択
「ビジネスの共通言語である“会計”は、キャリアプランの幅が広く、国内外どこでも働ける点が魅力。人生の選択肢を増やしてくれると思ったので仕事にしました」
☑︎ 出社したときは必ず同僚とランチに
「出社日は、同僚とランチに行って、積極的にコミュニケーションをとっています。また、オンライン上でも、上司に進捗や気づきを共有することを意識しています」
自然豊かな環境の中家族と暮らしてかなった充足感に満ちた生活
アメリカの大学を卒業後、働きながら米国公認会計士の資格を取得。現在は東京にオフィスを構える監査法人に勤める三上さん。
「コロナ禍の中、富山の実家からリモートワークをしてみたら、のびのびとした環境で、家族のサポートを受けながら働くことで、自分が心身ともにヘルシーでいられると気づきました。そこで、ハイブリッドワークの制度を利用して、Uターン移住を決意。通常期の出社は3カ月に1回程度で、繁忙期になると週2〜3回出社することもありますが、新幹線で片道2時間半程度。数日続けて滞在するときは、東京在住の弟の家に泊めてもらうことも。交通費は会社が一部補填、あとは自己負担しています。上京したときは、東京にしかない美容クリニックや、テーマパークに行くなど、地元ではできないことを満喫しています」
移住して最も変化したことは、“食生活”だという。
「東京での一人暮らし時代は、多忙を理由に、デリバリーやコンビニエンスストアで買ってすませることもしょっちゅう。でも今は母の手料理のおかげで、繁忙期も健康的に暮らせています。また、車社会だからこそ、以前よりアクティブになりました。休日は、家族とローカルの人しか知らないお店に海鮮を食べに行ったり、ショッピングに行ったりと楽しい時間を過ごしています。プライベートが充実していると、仕事のパフォーマンスも上がると思うんです。だから、今後も自分にとってベストなワークライフバランスを保ちつつ、場所にしばられない働き方をしていきたい。いつかまた海外で働きたいと思っています」
仕事は、パソコン1台で完結。勤務時間はフレキシブル
会計学を学んだ、アメリカの大学卒業式にて
豊かな自然に癒される毎日。休日は車で遠出することも
お手頃価格で食べられる海鮮は、どれも絶品
【CASE5】何度も訪れるうちに人にも土地にも惚れ込んだ
自営業・喫茶店運営、企画・ブランディング支援
西田優花さん(39歳)
【TOKYO →→ SHIMANE】
20代 飲食業界やスタートアップを経て独学しWEBデザインに従事
28歳 結婚
31歳 情報系IT企業に入社。携わった地域支援事業で島根に数回訪れる
35歳 ドイツに留学。コロナ禍のため1年で帰国
37歳【移住決意】起業
38歳 島根県に移住
【西田さんの移住ポイント】
☑︎ 準備期間にマニュアル免許を取得
「それまで持っていなかった自動車運転免許を、島根に通うようになり取得。MT車の多い軽トラックも運転できるので、近所で荷物を運ぶといった場面でも対応可能に」
☑︎ 移住支援スタッフとしても活動
「’23年には、島根県大田市への移住体験プログラム『遊ぶ広報』にも参画。移住経験者の一人として応募者の選考や参加者のサポートをお手伝いしました」
「地域文化の発信や継承に貢献したい」その思いが「仕事」から自分の生活に
「以前勤めていた会社の地域支援プロジェクトで、島根県を訪問するたびに、世界遺産の石見銀山エリアにある温泉津(ゆのつ)温泉に通っていたんです。そのうちに友人ができ、春夏秋冬それぞれ2週間ずつ滞在する生活を1年続けたところ、波長の合う仲間が増え、さらには、ロールモデルにしたい移住の先輩も見つかり、この土地に愛着が湧いて離れられなくなりました」
ミクストメディアの造形作家としても活動する西田さん。土や石などの天然材料が、周辺で豊富に採取できることも移住決断の大きな後押しになったそう。現在の仕事の中心は、日本各地の魅力あるものを継承・伝承し広げるための企画やブランディング事業。
「この土地に根ざしたことで、地域文化に対する解像度が上がり、会社員のときよりも対象のことを深く理解したブランディングができるようになったと感じています」
また、東京からともに移住してきた夫と「本と喫茶のゲンショウシャ」という喫茶店の運営も。お店では、スパイスカレーや、里山で採れた野草茶を提供している。
「お店のお皿は地元の職人さんと共作。野草茶は農家のおばあさんの知恵を借りて製造。この地には、面白いことをしている人が多く、移住者も年々増えていて活気がある。おかげで、やりたいことが次々と湧いてきて、東京にいたときよりも忙しいです(笑)。そんな私のリフレッシュ方法は、伝統芸能『石見神楽』の団体『温泉津舞子連中』の活動。毎週の練習には老若男女が集まり、誇りを持って舞に向き合う姿にすっかり惚れ込んでいます。『石見神楽』がこの地にある限り、私もここに居続けたいですね」
ライフワークの作品制作に使用する石や土を採取
伝統芸能「石見神楽」を舞う西田さん。毎週土曜日は、地元の人とともに、舞の練習にはげむ
風光明媚で穏やかな時間が流れる温泉津
地方移住のギモン・質問にアンサー!「地方移住初手Q&A」
認定NPO法人ふるさと回帰支援センター中西沙織さんに、後悔しない移住をかなえるために押さえておきたいポイントを聞きました。
認定NPO法人 ふるさと回帰支援センター
中西沙織さん
埼玉県出身。4年前に移住相談員に。1カ月に10名ほど担当しており、“漠然とした相談”にも親身に対応。
ふるさと回帰支援センターとは?
全国の専属相談員が常駐。移住方法や、地域の暮らし、求人の情報などを得られる。地域ごとやテーマ別のセミナーも多数開催。移住相談は要予約でオンラインでも可能。
Q 最初にすべきことは?
A まず移住の目的や動機を明確にすること
移住を考え始めたら、なぜ今の生活を変え、別の場所で暮らしたいのかを言語化して。「自然豊かな場所で子育てがしたい」「都会を離れて、ゆったりと働きたい」など、『だれと』『いつまでに』『どんな場所で』『どんな暮らしを』したいかを具体的にイメージすることが重要。これらが不明瞭なまま移住計画を進めてしまうと、のちにミスマッチが生じてしまうので気をつけて。
Q 移住しても働き続けられる?
A YES
もちろん働けますが地方での就業にはいくつか注意点があります。まず、都市部に比べて、一般的に給与が低い傾向にあるので、現在の仕事をリモートで継続される方もいます。地方で就職先を探す場合は、求人情報が圧倒的に多い「ハローワーク」を活用しましょう。生活費全体でみれば、家賃や食費は抑えられますが、地域によっては光熱費などが都市部よりかかることもあります。移住前に収支をしっかり試算しておくことが重要です。
Q 住みたい町が決まっていなくても移住できる?
A 住みたい地域が決まっていなくても大丈夫。最近は、漠然とした移住相談も増えています。そういう方は、まず最初に、自分が求める生活に必要な条件をリストにして“見える化”し、優先順位をつけると移住先がしぼり込みやすいです。また、「ふるさと回帰支援センター」でほぼ毎日開催しているセミナーや、気になるエリアの県人会に参加して、各地域の文化や風土を学んだり、移住の先輩に会ってつながりを作ることで住みたい場所が決まることもあります。
Q 人気のエリアは?
1位. 静岡県
2位. 長野県
3位. 栃木県
A 1位の静岡県や3位の栃木県のように、テレワークが普及したコロナ禍以降は、首都圏へのアクセスが良好な地方への移住相談が増加傾向にあります。2位は、移住サポートが充実している長野県。女性移住者のコミュニティも生まれているそうです。
Q 準備にかかる時間はどのくらい?
A 1年ぐらい
移住準備は、1年以上かけて行うことをおすすめします。季節ごとに複数回滞在して、その土地の環境が自分に合うか見極めて。雪国であれば真冬などウィークポイントになる季節にも必ず滞在を。市町村の担当者と話せる“移住フェア”は情報収集のチャンス。
「ふるさと回帰フェア2023」の様子(ふるさと回帰支援センター提供)
Q 貯金や資金はいくら必要?
A 初期費用+半年の生活費があると安心
移住には、引っ越し代金や住居費、場合によっては自動車購入費といった初期費用が必要です。また、移住先での万が一に備えて、半年〜1年は働かなくても暮らしていける貯金があると安心。移住前に、必要な資金額を試算しておいて。
Q いきなり移住は不安です
A まずは「お試し移住」という選択肢もあります
「自治体独自の滞在プログラム おためしナガノ」
「スキルを生かし期限つき移住 地域おこし協力隊」
「発信型滞在のサポート事業 遊ぶ広報」
移住希望地で一定期間お試し生活を送り、地域の文化や生活環境を体験することで、不安を解消しましょう。お試し移住のサービスは充実しており、たとえば、資金援助や人脈作りをサポートしてくれる「おためしナガノ」(長野県)や、地方自治体の委嘱を受けて働く「地域おこし協力隊」、SNSで発信すると滞在費が補助される「遊ぶ広報」(’23年度は3地域で実施)などがあります。
Q 女性のソロ移住、向いている人はどんな人?
A 移住先のコミュニティに溶け込むために、自分から積極的にコミュニケーションをとれる方や、不便なこともポジティブに捉えて、乗り越えていける方は地方移住に向いています。近年は、全国各地の自治体で、女性の移住を支援・促進する制度や事業が拡充中!たとえば、お茶で有名な佐賀県嬉野市では、Iターン移住の単身女性に、10万円の奨励金を支給しています。また、メタバース婚活イベントを開催している奈良県宇陀市や島根県出雲市のように、最近は、婚活を伴った移住受け入れ事業を行う自治体もあります。
Q 移住に向いていない人はどんな人?
A 地方移住すれば即スローライフがかなうわけではありません。県庁所在地のような都市部に暮らせば理想とする余裕のある暮らしがかなうかもしれませんが、大半の地方にある密な近所づきあいをはじめ、挨拶、冠婚葬祭、ゴミ出しのルールなどといった、特有の慣習や風習への適応に抵抗を感じる人は再考を。また自然豊かな地方へ行くほど、公共交通機関が少なくなるため、エリアによっては車がないと不便なことも増えます。自動車免許を持たない方針ならば移住先は要検討です。
取材・原文/海渡理恵 ※BAILA2024年4月号掲載