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専門家がアンサー!脳科学でわかる「大人が楽しく学ぶコツ」って?

学びたい!と思ってもなんだか始められないのは、「大人でもちゃんと学べる?」という不安があるから。「子どもの頃に比べて覚えられない」「働きながら学び続けるには?」などなど…。そこで専門家に、脳科学の観点から、長く楽しく学ぶためのヒントを教えてもらいました。

答えてくださったのは

教授、医師・医学博士

瀧 靖之先生


東北大学加齢医学研究所教授。東北大学スマート・エイジング学際重点研究センター教授、副センター長。健常な脳の発達と加齢に伴う、脳の変化を研究している。著書に『脳医学の先生、頭がよくなる科学的な方法を教えて下さい』(日経BP)など。

カヤヒロヤさんのイラスト01

Q.子どもの頃と比べて、学んだことが頭にスイスイ入っていかない気がするけど?

A.大人の脳も100%変化する。問題なく学べます!
「“大人は勉強しても伸びない”というのは、脳科学的にも間違っています。その固定観念を取り除いてください。脳には、何歳になっても“可逆性”という変化の力があるんです。確かに、30代40代よりも10代のほうがその力は強いですが、努力すれば伸びるのは同じです。脳の記憶、つまり学んだことを覚える力は、感情と密接に結びついているとわかっています。記憶をつかさどる海馬という部分が、感情に関係する扁桃体というところとつながっているんです。楽しく学べば、伸び率もいいということです。目標を持つのも◎。“あの資格を取りたい”ではなく“あの資格を取ってあんなことをしたら楽しそうだな”というプラスの感情につながる目標です。大人の学びのいいところは、10代の頃と違い、自分が楽しいと感じるジャンルを選べること。そして、今までの経験を生かして未来を想像できること。人によっては、大人のほうが学びやすさを感じるかもしれませんね」

Q.大人の脳にやる気を出させるには?

A.現状維持バイアスに打ち勝てば継続できるはず
「人間の脳はスタートがするのがいちばん難しく、さらに三日坊主が当たり前なんです。なぜなら“現状維持バイアス”=今の状態を変えないようにしようという思いが働くんですね。なので、まずは”現状維持バイアス”に勝つところから始めましょう! いきなり一気に何時間も大量に学ぼうとすることは、悪手。こんなしょぼいことでいいの?というくらい軽いものから始めてください。たとえば、教科書を2行だけ読む、ヨガマットに寝っ転がるだけ、腹筋を2回だけする……。できそうでしょ? それを1週間くらい続けたら、少しだけ量を増やしてみる。またそれを2週間ほど続けると、それが習慣となり“現状維持バイアス”は勉強するほうに働き、やらないほうが気持ち悪くなります。そしてスモールステップで行う量を増やしていく。まず、始めるハードルをとにかく下げることが大事です」

カヤヒロヤさんのイラスト02

Q.毎日仕事で忙しい。働きながら学び続けるコツはありますか?

A.前々回&前回の復習と次回の予習を1分ずつしよう
「私たちは、子どものようにまとまった時間をつくれない。なので、やはり大人の勉強は“スキマ時間”が重要になってきます。そのためには、“いつでもパッと始められるようにしておく”というのが大切です。テキストを広げてリビングに置いておくとか、一瞬のスキマで3分でも5分でもできるような環境をつくるといいですね。また、ある程度時間が取れるときは、その日の勉強をする前に前々回の復習に1分、前回の復習に1分、次回の予習に1分使うといいです。キーワードだけ見るくらいでもOK。人は親しみがあれば覚えやすくなるんです。勉強と予習復習で計4回も目にすることになれば、記憶の定着率はぐっと上がりますよ!

Q.大人になってから、学びたいことを見つけるには?

A.楽しい&楽しそうが大事。昔憧れていたことを思い出して
「何か憧れているものはありませんか? 私は小学生の頃、ほんの少しやっていたピアノを30代で始め、やったことないドラムも始めましたが、全然遅くはありませんでした。今ではドラムの発表会にも出るようになりました。“楽しい”という気持ちがあれば、何歳から始めても、半年くらいで劇的に上達します。それでも思いつかない場合は、身近な人が学んでいて“楽しそうにやっているな”と感じることもおすすめです。面白さも教えてもらえるし、メンターになってもらえるし、何より一緒に学ぶ仲間がいる。プラスの感情を感じやすく、学びやすいと思いますよ。“自分が楽しめるかどうか”で探してみましょう」

Q.学んでいるといいことがありますか?

A.究極にいいことがあります!脳の健康を保てます
「健康というと体のことを思い浮かべると思いますが、脳の健康もとても大事なもの。50代60代になると“高次認知機能”というものが低下してきます。しかし、学びへのチャレンジは“高次認知機能”の下がりをゆるやかにしてくれるんです。脳を一生懸命使うことで、脳の中にネットワークが形成されます。道路をたくさん作る、というのがイメージしやすいですね。学べば学ぶほど脳の道路は増え、複雑になります。脳の老化でその道がいくつか壊れても、学んでいればほかの道がたくさんできているし、また作る力も維持されます。脳の加齢って、実は20代後半から始まっている。なので、30代40代から学びを始めることは、健康な人生においてとてもプラスなことなんです」

イラスト/カヤヒロヤ 取材・原文/東 美希 ※BAILA2022年2月号掲載

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