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【先送りをやめたら幸せになれる?まとめ】もう自分にがっかりしない! 先送りのメカニズムと改善方法を専門家がアドバイス

したくて先送りをしているわけじゃない。毎回落ち込んで精神衛生上よろしくないことこの上ない。バイラ読者にアンケートを実施したところ、約8割が「先送りした経験あり」と回答。自己嫌悪する一方で、「直したい」という声も聞こえてきました。そこで、研究者に、メンタルコーチに、先送りのメカニズムと改善方法を取材。そう、このクセさえなければ、私幸せになれますよ…ね?

目次

  1. 1.バイラ読者の約8割が先送り経験ありと判明!
  2. 2.行動経済学的には今の苦痛を回避、明日の自分に期待するから
  3. 3.脳科学的には不安を強く感じすぎて、行動に移せないから
  4. 4.先送り体質を変える! LIFEHACK(ライフハック)7

1.バイラ読者の約8割が先送り経験ありと判明!

BAILA読者187人の“先送り”経験を聞いてみた!

Q.先送りにした経験はありますか?

先送りにした経験はありますか? YES79% NO21%

8割近いBAILA読者が先送り経験ありという結果に。理由はおのおの違えど「頭ではわかっているのに、行動を起こすまでに時間がかかる」という意見が多数。先送りをやめようとすることがストレスに感じるというコメントも

BAILA読者の先送りエピソード

先送りは決してしたくて しているわけじゃない!

申込期日ギリギリになることが多く、最近ではマラソンにエントリーしようとしたら定員オーバーだった。一緒に出ようとしていた友人は早々エントリー完了していたので申し訳ないと思った(39歳・学校事務職員)

何か新しい資格を取るため勉強しようと思うが、何の資格にするかをしぼれないまま先送り中。いいかげん決めないと(38歳・工場事務)

年金、育休、産休などの申請書類。やらなくてはいけないのはわかっているが、本当に億劫。やらないことで自己嫌悪に陥る(34歳・薬剤師)

寝る前のストレッチと筋トレを毎日やろうと思いながら、疲れて明日からでいいやと毎日思っている。年齢的に徐々にたるんできている体に落ち込む(33歳・看護師)

語学の勉強をみっちりしたくて、テキストも買ったしノートや筆記用具なども充分用意したが、まったく手をつけてなくて数年…! もはやテキストの内容も古めになりつつある…(36歳・教師)

先送りは決してしたくてしているわけじゃない!

編集部に届いた先送りエピソードの数々。どれもリアリティがあって共感してしまうものばかり。

「毎日のように“明日の自分が頑張る”と仕事を先送りにするが、昨日の自分が残した仕事をすることによって、新たに明日の自分が頑張らなければいけないという負の連鎖に陥る」(41歳・事務)、「英語が話せるようになりたくて、英会話教室やオンラインサイトを調べているが、なかなか行動に移せない。自分のダメなところに気づいて気持ちが暗くなる」(30歳・SE)

余裕を持って動けば、ストレスもなく、気持ちよく過ごせるとわかっているのに先送りする理由が自分でもわからない、やりたいことなのに行動することがめんどくさくなるときがあるのはなぜ?という声にこたえて、先送りのメカニズムを調査、幸せにつながる改善方法を取材しました。

2.行動経済学的には今の苦痛を回避、明日の自分に期待するから

教えてくれたのは
太宰北斗さん

行動経済学者

太宰北斗さん


一橋大学大学院商学研究科博士後期課程修了。名古屋商科大学商学部准教授。著書『行動経済学ってそういうことだったのか! - 世界一やさしい「使える経済学」5つの授業』(ワニブックス 1540円)

先送り

【現在バイアス】と【自信過剰バイアス】が先送りを助長する!

「行動経済学は、経済学と心理学を組み合わせた学問分野で、人間の、一見非合理的に見える活動を研究しています。先送りもその対象のひとつ。多くの研究によって先送りしがちな方に見られる心理傾向が明らかになっています。それが、【現在バイアス】と【自信過剰バイアス】です。未来にある喜びよりも、目の前のことを過大に評価し優先してしまう【現在バイアス】、自らの知識や能力を過大に評価したり、根拠のない自信を持つ【自信過剰バイアス】。これらが影響していると考えられているんです」

先送り

未来よりも現在の価値を高く見積もる【現在バイアス】に要注意!

「特に重要なのは【現在バイアス】ですね。行動経済学でよくする質問なのですが、今日もらえる100万円と、1年後に101万円、どちらかを選んでもらいます。そうすると、【現在バイアス】傾向が強い人は、今の100万円を選ぶ。未来に得られる大きな価値と今すぐに得られる小さな価値をてんびんにかけたときに、とにかく“今”を選択してしまう心理が強いんです。代表的な先送りの英語学習にたとえると、勉強すれば英語を話せるようになるとしても、今は勉強したくない、別なことに時間を使いたいという目の前の欲求が勝ってしまうということです。これに【自信過剰バイアス】が加わると、なぜか“私なら今やらなくても大丈夫”と考えて、TOEICの直前まで何もしない。当てはまる節がある人は多いのではないでしょうか」

なりたい自分を思い描いて目標の解像度を上げよう

「行動経済学の視点では、先送りが幸せになれない原因だとは言い切れませんが、できると思って結果先送りしてしまうのであれば、少なくとも損をしていることは間違いありません。止めるためには、“英語を話せる”のような遠い漠然とした目標ではなく、具体的で細かい目標をセットすること。そして期日を区切ること。“いつでもいい”は危険です。そこに、“できなかったら1万円”のようなペナルティを設定するのも有効。明日の自分が先延ばしをしたくてもできなくなる工夫をすることが大切です」

3.脳科学的には不安を強く感じすぎて、行動に移せないから

教えてくれたのは
増尾好則さん

脳科学者

増尾好則さん


東邦大学理学部生物学科教授を経て、現在、一般社団法人ブレインアナリスト協会学術顧問として幅広く活躍。You Tube「【脳と香り研究第一人者】脳科学者増尾好則が人生に思う事」を配信中。

先送り

先送りグセのある人には、脳にも特徴があるかもしれない⁉

「近年の研究で、先送りをしがちな人は、脳の二つの部位に特徴があるとみられることがわかってきました。ひとつは【扁桃体】。感情や記憶に関する主要な役割を果たす部位で、特に恐怖や不安といったマイナスの感情に深く関わります。もうひとつの【前帯状皮質】、その背側部は行動をモニタリングし、調整する部位です。ここで、扁桃体からの情報を受け取り、行動を決定するのを助けてくれます。たとえば、ひとつの仕事を前に扁桃体がうまくいくか不安を感じていたとします。不安なままでは行動しづらいのでその感情を抑制し、その仕事がうまく実行されるようにコントロールしてくれる、そんなイメージですね」

心配性で、行動に移すのをためらう。先送りするのはそんな脳

「【扁桃体が大きく、かつ前帯状皮質背側部の連結が弱い】と、悲観的な感情を制御できず、先送り傾向が強まる可能性があると言われているんです。扁桃体が大きい人は、物事を始める前に悪い結果を心配して、実行をためらいがち。そのとき、連結が鈍く前帯状皮質背側部がうまく働かないと、その不安を抑制できず、いつまでも行動に移せないというわけですね。ただ、まだまだこの分野は研究段階ですし、そのような脳の特徴を持つ人が100%先送り体質になるとは限りません。脳には対応力があり、長い時間をかけて適応することもできるのです」

先送り体質の改善にはマインドフルネスが有効

「実は、脳と心の休息法として、現代人に広がっているマインドフルネス瞑想には、扁桃体の神経細胞が集まるエリアを小さくする効果があるといわれています。香りの力のように、不安などのストレスを和らげる方法を取り入れるのも効果があると思います。またやるべきことから逃避したい感情に脳が支配されない程度にまで任務を細かく分けて、小さなことから始めるのもいいでしょう」

香りでストレスを軽減できる!
「先送りの原因にもなり、先送りしてしまうことでも強く感じるストレス。和らげる方法として、脳のストレス応答を弱くする=五感を刺激することが有効であることが知られています。最新の私の研究から、コーヒー豆、ごま油、ヒノキ精油、ラベンダーの香りをかぐことで、ストレス反応が軽減されると証明しています」

4.先送り体質を変える! LIFEHACK(ライフハック)7

教えてくれたのは
大平朝子さん

メンタルコーチ

大平朝子さん


国家公務員試験を主席合格。裁判所書記官として年間2000件の裁判記録を扱うなかで問題解決のある法則を見いだし独立。女性リーダーの問題解決などに携わる。

[まずはCHECKしたい!!]先送り体質あるある

□あれもこれもと欲張る
□準備も結果も100点を目指す
□今できない理由を探す
□“難しいこと”を前提としている

「上の『先送り体質あるある』をチェックして、当てはまってる!と気づいたあなた。だからといって、自己嫌悪に陥ることも、だらしない人間だなんて思う必要もありません。まじめに日々と向き合っているから、先送りに目がいくんです(フマジメな人は先送りしてる意識さえないですから!)。もしかすると、先送りをやめること自体をストレスだと思い込み、勝手にハードルを上げているのかも。ちょっとだけ目線と意識を変えてみましょう。先送り体質は誰でも改善できます! 難しいことじゃありませんよ」

先送り

ライフハック1.「ちゃんとする」より「楽にやる」方法を考える

「たとえば、英会話を習うなら『評判のいいスクールの先生に教えてもらいたい!』『テキストもいいものを見つけてから始めたい』と、準備の段階から100点を目指しがちではないですか? 始める前にあれもこれもと欲張っていると時間だけが過ぎてしまいます。今すぐ、スマホで無料の英会話アプリをダウンロードしてみましょう。まずは、英語に触れる時間をつくってみること。そこから、どんな勉強方法が向いているのかを見極めていけばいいのです」(大平さん、以下同)

ライフハック2.やることよりも時間で区切る

やることよりも 時間で区切る

「時間で区切ることを意識すると、終わらないということがなく、無理をせず、自分の実力や状況に合わせた、今できることを選べるようになります。その最短単位が10秒! ダイエットのきっかけ作りなら『朝、ベッドで10秒のストレッチをする』。資格の勉強を始めるなら『テキストを開いて目次だけ眺めてみる』。10秒でできるのは小さなことですが、10秒でも成功体験を積み重ねましょう。これが着火剤となって、やることが楽しみになっていく流れができるはずです」

ライフハック3.やるべきことを大きな塊でなく小さく刻む

やるべきことを 大きな塊でなく小さく刻む

「始める前に、最初の一歩のハードルを下げることを意識するのが大切です。クローゼットの整理整頓をするぞ!と思うと、断捨離も衣替えもしたいから掃除道具や防虫剤も用意したい。と、すぐに始められない理由が浮かんでしまうことってよくあると思うんです。そんなときは『今日は引き出しの1段目だけきれいにしたらOK!』と、小さいパーツに切り分けるクセをつけると楽に始められます」

ライフハック4.前の日にちょっとだけ手をつけておく

前の日に ちょっとだけ手をつけておく

「“前日着手”と呼んでいるのですが、たとえば、資格試験の勉強なら、イヤホンを用意してテキストを開いてから就寝する。経費の精算なら終業時に領収証をまとめて日付け順に並べてから退社する。たったこれだけのことですが、未体験を嫌う脳にとって、するべきことが既知のことに変わり、精神的な抵抗が薄くなるんです。翌日はいつもよりスムーズに取りかかることができるはず! 最初の一歩、いや半歩だけ踏み出しておくだけで、まるごと先送りをせずにすむので、ぜひ取り入れてみてください」

ライフハック5.「とりあえず木曜10時は○○の時間」と決めてみる

「自分でここまでにやるといったん決めることを“仮決め”といいます。苦手なことをやらなければいけないときほど、有効な方法です。一般的に、人は“やらされる”ことが何よりのストレス。同じ内容でも、他人から決められたとおりにするのはつらいけど、自分で決めたスケジュールなら、格段に気持ちよく動けるものなんです。たとえ与えられた作業でも、日時と時間を自分で決める=自分と約束したことになりますから、“やらされてる感”が軽減されるはず」

ライフハック6.「今日はやらない」も朝のうちに決める

「忙しい人ほど、“今はやらない”と決めてしまうことも大切です。そのタイミングは、人がすべての活動をスタートさせる朝がおすすめ。やりたいことややるべきことがあるのに思うようにいかないと、『やっぱり私ってダメだわ!』と、無意識に自分自身にダメ出しをし続けてしまうんです。頑張り屋さんが陥りやすい傾向なので注意が必要。一日の終わりに『今日もできなかった』と落ち込むより、朝のうちに自らの判断で“前向きな先送り”をすると、心が軽くなりますよ」

ライフハック7.できている人のやり方をマネてみる

できている人の やり方をマネてみる

「先送りせずに動けている人の特徴を分析してみましょう。一緒に働いている人や趣味の仲間なら、質問をしてみてもいいかもしれません。“私と〇〇さんじゃ性格が違うから”と言いたくなるかもしれませんが、マネをするのはその人ではなくて、行動ややり方だけ。すべてをマネできなくてもいいんです。「やるべきことを大きな塊でなく小さく刻む」の考え方を用いて一部だけでも取り入れたり、一度試してみてから、フィットしなかった部分を変えるなど、やってみてから自分流にアレンジするのもいいですね」

先送りをやめて幸せになれる人なれない人、何が違う?

自分にとってのプラス行動と ゼロベース行動を把握することが重要

自分にとってのプラス行動とゼロベース行動を把握することが重要
「プラス行動とは、自分の夢や目標を実現させたり、アクティビティを楽しんだり、人生を味わうための行動。そして、ゼロベース行動とは、マイナスの状態をプラスマイナスゼロに戻す、日常生活を維持するために必要な行動と定義しています。たとえば、たまった洗濯物を洗い干して、取り込み引き出しに戻すことですね。先送りをやめて幸せになれるのは、あいた時間でプラス行動を充実させる人なんです! あなたにとって、事務仕事=ゼロベース行動だとしたら、先送りを卒業して仕事を効率化できたとしても、あいた時間がまた事務仕事で埋まってしまったらむなしさを感じてしまうでしょう。“自分のしたいことをするために”先送りを改善することが幸せにつながるカギです」

イラスト/ボブ a.k.a えんちゃん 取材・原文/木村真悠子 ※BAILA2022年12月号掲載

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