中間管理職に就いている30代のもやもやと生きづらさ。平成を働いてきたバイラ世代のドラマプロデューサー 祖父江里奈さんは、「昭和」と「令和」の“はざま”で何を感じている?
はざまの世代だからこそ、いいとこ取りができる!
テレビ東京ドラマ室プロデューサー
祖父江里奈さん
そぶえ りな●1984年生まれ。ドラマ24枠の作品を手がけている。現在は「孤独のグルメ」最新シリーズが放送中。
私が入社した2000年代後半のテレビ局は、まだまだ縦社会で。「生放送の前日はあえて徹夜で飲み、本番に臨むのが粋」みたいな風潮もありました。「寝ろよ」って話ですよね。私も頭ではそう思ってました。でも現場の体育会精神に適応せざるを得なかった部分もあり、それが社会人の基盤をつくる時期にぶつかり……。今も上司から深夜に飲みに誘われても顔を出すし、いい仕事のためなら休日返上もいとわない。“頑張るぞ!”寄りの精神は、昭和だと思います。
ただし昭和では当たり前だったイジリ、パワハラ、モラハラは、完全に負の価値観だから、引き継ぎたくありません。今、私がやっているドラマプロデューサーという仕事は、それ自体が中間管理職みたいなもので、縦横斜めと、あらゆる人と人とを“つなぐ”のが役割。仕事を進めるなかで上司に違和感を覚えたときは「それ今の時代では、イケてないかもしれないです~」と伝えています。強く否定はしないように(笑)。
一方で若い世代は損得勘定に敏感で、自分にメリットがないと動かないことが多いなあと感じることがあります。「意味あるんですか?」と聞かれたときには「キャリアアップになるかもよ」と背中を後押し! 一見無駄そうなことにも意味はあるし、もし違うとわかっただけでも、そのことがメリットじゃないですか。さらに予想外の展開から楽しいモノが生まれる経験も味わっているので、若い世代にも計算抜きで挑戦してほしいんです。
……と、昭和上司と令和の若者の間で思うところもありますが、私も含めたバイラ世代ってお得かもしれません。根性論で誰かを動かさないし、損得勘定だけで人づきあいもしない。両方のNG部分がわかるからこそ、バランスよく。“いいとこ取り”で人や社会と関われてよかったなと思っています。
イラスト/サレンダー橋本 取材・原文/石井絵里 ※BAILA2023年1月号掲載