「昭和」「令和」に挟まれる「平成」ってどんな時代? そこで生きてきた私たちって何ですか!? 中間管理職に就いている30代のもやもやと生きづらさ。バイラ世代が育った「平成」とはどんな時代だったのか。また、20〜50代で今どんなギャップが起きているのかを専門家が解説。
実は平成こそ、激動の時代。 まさに“価値観の変換期”に育った世代
博報堂生活総合研究所
吉田裕美さん
上席研究員。アートディレクター。’04年に博報堂へ入社。マス媒体のディレクションを経て、現職へ。バイラ世代の40代。
個人の幸せを考え、実践する転換期が平成の30年だった!
「字面だけを見ると穏やかなイメージの平成ですが、この間に社会も、経済も、自然環境も激動し、個人のライフスタイルや生き方への考え方も大きく揺れ動きました。この時代に成長し、社会に出たバイラ世代は、まさに新旧の価値観の間にいると言えます」と吉田さん。最初の転換期は平成9~10(1997~1998)年頃。
「平成に入るとすぐに、バブル経済の崩壊、阪神・淡路大震災、地下鉄サリン事件などが起こり、それまであった国や社会への信頼が徐々に失われていきました。そして平成9(1997)年には消費税が5%に増税。世帯収入はこの年をピークに下降します。さらに翌年、大手金融機関の再編がありました。この頃にはすでに世帯数で共働きが専業主婦を上回っており、女性が働くのも当たり前に」
平成半ば~後期の2000年代に入ると、家族構成や総人口の面でも日本は大きな曲がり角に突入。そして、世界の動きと私たちの生き方も如実に連動するように。
「平成初期には総世帯の中で多くの割合を占めていた『夫婦二人と子ども二人』からなる標準世帯。ところが平成17(2005)年には一人暮らし世帯が標準世帯に迫るまで増え、その後逆転。平成20(2008)年をピークに日本の総人口は激減し、少子高齢化社会も進行。同年に起きたリーマンショックは日本も影響を受けました。さらにはiPhoneの日本版が発売になり、この頃から個人が情報を収集・活用するようになりました。人々が不安定な経済環境の中で安定をつかもうと模索していた時代です」
そして平成後期になると、終身雇用などの従来の価値観は崩壊。
「2010年代は、東日本大震災などの自然災害が勃発しました。経済が伸び悩む状況にも慣れ、人々の考え方も国へ頼るよりも個人がどう生きるかへと完全にシフト。そして“クリスマスといえば高級ホテルでディナー”というような、非日常的な幸せを追求する昭和の後期的な暮らし方は消えうせ、身のまわりの小さな幸せを大事にする“自足”の時代となりました」
様々なことが起こり、平成は価値観の大きな変換期だったからこそわれわれは“どっちもわかる”状態に。
「激変した平成の間に、現実の厳しさを痛感して育ったのがバイラ世代。かつて昭和世代が刷り込まれていた滅私奉公的な働き方や、結婚をして出産しなければいけないなどの慣習があったことを理解はしているものの、今の令和につながるような、“幸せのかたちは人それぞれ”と考えられる側面も持ち合わせている世代と言えます」
『生活者の平成30年史 データでよむ価値観の変化』
博報堂生活総合研究所(著)
日本経済新聞出版社 2200円
2022年の「生活定点」から興味深いデータをピックアップ!
博報堂生活総合研究所が、1992年から2年に一度、調査を行っている「生活定点」。2022年に30周年を迎えました。調査結果を分析すると、女性たちの年代別の考えの違いがわかります。では、バイラ世代はどう見えるのでしょう?
「仕事を基本的に好きで続けている50代と、そうでもない20代との間でどちらとも言えない印象が。オンラインショッピングなど生活密着型のITツールは、働き盛りのバイラ世代が使いこなしていますね。そして恋愛や結婚に関しては、とても寛容です。これは旧来の価値観を理解している分、“必ずしもそれが正解とは限らない”と実感しているとも読み取れます。夫婦の役割分担の理想と現実のギャップの激しさからも、この世代は様々な“はざま”にいながら、より快適な生き方を模索していると思います」(吉田さん)
Q.基本的に仕事が好きなほうである【有職者の回答】
【仕事観】仕事が「大好き」と「そうでもない」のはざまに
Q.オンラインショッピングを利用している
Q.料理レシピサイトやブログが私の「料理の先生」である
【ITツールとの距離】オンラインを生活に上手に取り入れている
Q.未婚で子どもがいてもかまわないと思う
Q.同性同士が結婚しても かまわないと思う
【恋愛・結婚観】新しくて自由な価値観を尊重する
Q.妻は家庭内、夫は家庭外の役割を担う(理想)【既婚者の回答】
Q.妻は家庭内、夫は家庭外の役割を担う(現実)【既婚者の回答】
【夫婦の役割分担】理想と現実のギャップが激しい
ほかにも面白いデータがたくさん‼
>>データ・コミック
>>生活定点2022
公式サイト「生活定点」では30年分の生活者観測データ約1400項目や、データをもとにしたコミックを無償公開中
イラスト/サレンダー橋本 取材・原文/石井絵里 ※BAILA2023年1月号掲載