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【社内起業という働き方】ポーラ・オルビスグループでがん後遺症などのケア商品を開発するencycloを起業

様々なキャリアが選択できる今、「起業」を選択肢にする人も多い。独立というかたちをとらず、勤務先の企業で会社員として働きながらやりたいことを実現した「イントレプレナー(社内起業家)」の女性に、その道程を聞いた! 今回は、ポーラ・オルビスグループでがん後遺症などのケア商品を開発する会社を興した女性をインタビュー。

イントレプレナー:社内起業家
所属している会社内で新規事業創出のリーダーとなる人=「イントレプレナー」。会社員として働きながら企業内で新しい会社やビジネスを立ち上げ、代表のポジションに就く。一方会社を離れ独立起業する人は「アントレプレナー」と呼ばれる。

20代でのがん罹患の経験から「美容ができること」を追求

水田悠子さん

代表取締役

水田悠子さん


37歳で代表取締役就任。リンパ浮腫の人のためのビューティニーズを実現するブランド「MAEÉ」で、医療用ストッキングやスキンケアグッズを企画、販売している。

がんを個性としてとらえ、より様々な人に美を届けられるように

水田悠子さん

美容が好きで化粧品メーカーに就職した水田さんは29歳のとき子宮頸がんに罹患。1年余りの休職を経て復職後、がん後遺症のリンパ浮腫の方向けビューティ事業の会社を創業。入社から互いを知る先輩・齋藤明子さんと二人で経営している。

「初めから前向きに“子宮頸がんの経験を生かして仕事をしよう!”なんて思えていたわけではないんです。むしろ、がんを告知されたときは、仕事のことなんて二の次でした。復職後も、“再発するかも。何年も先のことなんてわからない”という思いで、以前ほど仕事に身が入らないまま働いていました。そんななかで、がん患者仲間とがん患者に向けたボランティア活動に参加したんです。“寛解”から“完治”へ切り替わるといわれていた、術後5年を迎えたタイミングでした。きっと人生は続いていくと思えたと当時に、がんになったことは、“引きずりたくはない、けれど忘れたくもないこと”だと思ったんですね。そのときにがんを個性としてとらえ、世の中に役立てていけるかもしれないと考えるようになりました」

社外活動としてがん患者へのアプローチを続けていた水田さん。あるとき、仲間と開催したカンファレンスを親会社でポーラ・オルビスホールディングスがスポンサードしたことが転機に。

「企業として、こうしたテーマに高い意識や取り組む姿勢があることにあらためて気づいたんです。組織人である前に“社会で生きる一人の人間”としての感覚を、仕事においても大切にしようという個を尊重する理念もある。この会社だからこそ、経験を生かした事業を中から立ち上げたいと、社内起業への挑戦を決意しました。当時はシート一枚形式の発案書で立候補できたので、“まぁやってみるか”くらいの気持ちでしたね」

創業後、最初に手がけたのは自身も悩むがんの後遺症、リンパ浮腫に関連するビューティ商品の企画開発。

「病院で購入する分厚い治療用ストッキングを常に着用しなければいけないのですが、機能性重視で“治療中”であることを突きつけられるものだったんです。そのストッキングを、美容の視点から作りたいと思いました。目標は嬉しい気持ちで身につけられるもの。化粧品会社にいて、様々な人に美を届けているつもりになっていたけれど、もっと踏み込まないと届けられない人がいる……と自らががんになって気づけました。人生が長くなっていく今、より多くの人がどんなときもありたい自分をかなえられるような商品を企画していきたいと思っています」

「応援する組織でいたい」と言ってくれる周りの協力のおかげ

「ともに働く社内の人に助けられながらの起業だった」と話す水田さん。

「事業準備期間中は兼務。週2で元の部署を不在にしていて、両立には悩みましたね。でも、当時の上司が“新しい取り組みを応援する組織でいたくない?”と周りに呼びかけてくれたんです。ほかの同僚も同じような空気感で応援してくれていました。そして現在は、がん罹患時にも人生相談をしていた先輩と二人で会社を運営しています。本当に人に恵まれました。これからも、ただ人を雇って増やしていくのではなく、様々なかたちで関わってもらえるような組織にしていきたいと思っています。小さい規模の会社だからこそ、いろんな人に入ってきてもらいやすい環境。それこそ、病気などの事情でフルタイムで働くのが難しい方にも活躍の場をつくれたらいいですね」

History

● 2005   ポーラに入社
● 2009   販売部門を経て商品企画部へ異動
スキンケアからフレグランスまで様々な商品企画に携わる
● 2012   子宮頸がん治療のため休職。
翌年、元の部署へ復職
● 2018   オルビスの商品企画部へ異動。
マネージメント業務に携わる
● 2019   2月、社外活動でカンファレンス「CancerX」に参加。
同年、社内ベンチャー制度に応募し事業化承認を得る
● 2020   encyclo創業。
「MAEÉ」の商品開発を行う

ポーラ・オルビスグループにおける社内起業は?

’17年に社内ベンチャー制度を本格開始。化粧品の枠にとらわれない提案をグループ全体で募集。この制度を’22年に「Glow」と命名。多様化する「美」の価値観にこたえる個性的な事業の集合体を目指して新価値を創出するため、新規事業制度を強化。現在は4コマ漫画形式のストーリーボードで事業アイディアを募集後、複数の審査を経て事業化を決定。またこのGlow以外にもグループ各社内で新規事業検討が進められている。(encycloは、Glow命名前の制度で選抜された)

社内起業前後の変化は?

【変わったこと】

「会社の未来にどう貢献するか?」ではなく「自分がどんな未来を創るか?」という思考に

【変わらなかったこと】

毎日を豊かにするビューティを届けたい!という仕事の根本に関する思い

水田さんが考える社内起業とは?

「自分の実現したいテーマと会社が描く未来とのシナジーを目指すこと」

水田さん

撮影/MISUMI 取材・原文/東 美希 ※BAILA2023年4月号掲載

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