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『ザ・ロストシティ』に見る冒険活劇の裏テーマとは?【今祥枝の考える映画vol.1】

BAILA創刊以来、本誌で映画コラムを執筆してくれている今祥枝さんの新連載が@BAILAでスタート! ハリウッドの大作からミニシアター系まで、劇場公開・配信を問わず、“気づき”につながる作品を月2回ご紹介します。

恋愛小説家ロレッタが、ジャングルで伝説の古代都市を探す冒険に!

サンドラ・ブロックとチャニング・テイタムがジャングルでの冒険開始

知的なロレッタを演じる『ゼロ・グラビティ』のサンドラ・ブロックと、見掛け倒しで戦力外のアランを演じる『マジック・マイク』のチャニング・テイタムの相性は抜群!

読者の皆さま、こんにちは。私はかれこれ20年(!)近く、映像業界で作品を観続けています。

この連載では、最新のエンターテインメント作品をご紹介しつつ、そこから読み取れる女性に関する問題意識や社会問題に焦点を当て、ゆるりと語っていきたいと思います。

第1回は6月24日公開の『ザ・ロストシティ』。スケールの大きなアクション・アドベンチャーで、コミカルでロマンスもありと、もりだくさん! 


あらすじはこんな感じです。

恋愛小説家のロレッタ(サンドラ・ブロック)は最愛の夫を亡くし、執筆活動は続けながら引きこもって暮らしていました。

そんな中、ロレッタの広報担当のベス(ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ)に説得され、新作のロマンチックな冒険小説の宣伝ツアーに嫌々駆り出されることに。作品の主人公ダッシュ役で、本の表紙に起用されているセクシーなモデルのアラン(チャニング・テイタム)と対面したロレッタは、ダッシュに成り切り白馬の騎士を気取るアランの軽薄さに苛立ちます。


その後、本のPRイベント会場から出たロレッタは、突然謎の大富豪フェアファックス(ダニエル・ラドクリフ)に誘拐され、南の島に連れて行かれてしまいます。実はロレッタは本来は歴史家で、亡き夫は考古学者でした。フェアファックスは、彼女が小説に書いていた伝説の古代都市の場所を探せと言います。


憧れのロレッタを救出しようとすっ飛んできたアランとともに、まるで自分が書いた小説のような、ロレッタのジャングルでの大冒険が始まります…!

チャニング・テイタムとブラッド・ピットが、セクシー路線&コミックリリーフ担当

サンドラ・ブロック演じる恋愛小説家ロレッタとチャニング・テイタム演じるアラン、ブラッド・ピット演じる強力な助っ人ジャックの華麗なアクション

長いブロンドヘアをなびかせて、セクシー&デキる助っ人、ジャック・トレーナーになり切るブラッド・ピットが最高! サンドラはブラッド主演の新作『ブレット・トレイン』(9月1日公開)に出演している。

まず全体として、この映画ではアランと、アランの強力な助っ人ジャック(ブラッド・ピット!)、そして悪役のフェアファックスら男性陣が総出で、あくまでもロレッタを主役として立てつつ、それぞれに与えられた役割をきっちり果たしています。

従来なら女性の役割であったセクシー路線と、サブキャラとしてのコミックリリーフ担当は、チャニングとブラッド。

特にブラッドは自らのセクシーイメージをセルフパロディするような、“やたらとかっこいい”キャラが最高におかしい。
そして器が小さくてエゴが肥大した男の姿は、ダニエルが力いっぱい演じてくれています。

一方、子犬のようにつぶらな瞳をキラキラさせながら、ロレッタを守ろうと意気込むも空回りするのがアラン=チャニング。
最初はマヌケさが目立ちますが、筋肉隆々のマチズモ的な見た目から想像できる人物像とは異なり、誠実で、決して他人にエゴを押し付けたりしない人物であることがわかっていきます。チャニング自身のイメージにもしっくりくるキャラクターです。

悪役の大富豪フェアファックスを演じるダニエル・ラドクリフ

自分勝手で子どもっぽい野心全開の大富豪、アビゲイル・フェアファックスを怪演するのは『ハリー・ポッター』シリーズのダニエル・ラドクリフ!

チャニング・テイタム扮するアランとサンドラ・ブロック扮するロレッタは心を通わせる

前向きで冷静なロレッタの後をついていくアラン。見た目のイメージと、誠実で繊細な人柄とのギャップが大きな魅力!

古くはハリソン・フォード主演の『インディ・ジョーンズ』シリーズなどに代表されるように、ハリウッドの伝統的なこの種のジャンル映画は男性主体でしたが、本作の主人公はあくまでも“フツーの女性”であるロレッタです。

しかも終始、全身を覆うキラキラのジャンプスーツを着用(ワンジーのオールインワンはサンドラのお気に入りだそう!)。適度にスターの華やかさを演出していますが、不要な露出はありません。

もう今の時代には珍しくもなんともないよ! と言う人もいるでしょう。実際に、もっと先進的な価値観を反映した作品はたくさんあります。しかし、ハリウッドのブロックバスターは巨費を投じることから失敗を避けるために、かなり保守的な考えに基づき製作されるもの。

そうしたメインストリームで女性主体の価値観がスタンダードになったことで、時間がかかってはいるけれど、長い歴史の中で、確実にハリウッドも前進しているのだと感じられるものもあります。

人は誰しも、他者に対してステレオタイプを抱くもの

でも、この映画の本当のメッセージは、その先にもあるのです。

ロレッタはどこかでアランのことを、外見や職業からステレオタイプで見ている。そんな彼女の態度を見てアランが言います。「君は表紙で中身を判断しないと思っていた」と。少し傷ついたようなアランの表情に、ロレッタははっとします。

「You can’t judge a book by its cover.(=人は見た目で判断できない)」という英語のことわざがありますが、これが楽しい冒険活劇の裏テーマになっているんですよね。


女性はこれまで「女性だからこう」というステレオタイプに縛られてきたことが、近年はよく議論されています。

逆もまた真なりで、女性がされていやなことは誰にとってもいやなこと、ですよね。人は誰しも自らのステレオタイプに、もっと意識的になるべきなのかもしれません。


ちなみにこの映画では、サンドラ姐さんの魅力が全開です! でも、それは男勝りとかそういうことではなくて、たとえば亡き夫への胸に秘めた一途な愛はいじらしくもあり、どんなときでもエレガンスを感じさせる。力強さと繊細さの絶妙なバランスに好感が持てます。


サンドラは作り手としても超優秀で、本作でも自身の製作会社を率いて、プロデューサーをつとめています。彼女が主導しているからこそ、このような娯楽大作を作ることができるのですよね。

自らが率先して業界の変化を体現していくサンドラは、やっぱりかっこいいなあとしみじみ思うのでした。

サンドラ・ブロック扮するロレッタと親友ベス

ロレッタと広報担当ベスの友情も見どころ。『しあわせの隠れ場所』でアカデミー賞主演女優賞を受賞したサンドラは、自身の製作会社Fortis Filmsを率いて、プロデューサーとして『デンジャラス・ビューティー』ほか、数々のヒット作を手がけている。

女性に関する人権意識やフェミニズムについては、以前とはくらべものにならないほど議論され、一般にも浸透してきていると感じている読者の皆さんも多いのではないでしょうか?

私自身も、社会の急速な変化にともない、価値観が日々更新されていく中で、迷ったり、立ち止まって考え込んだりしながら答えを探していることがたくさんあります。


私はジェンダーやフェミニズムの専門家ではありませんが、今の時代のエンターテインメントから読み取れることも多いのではないかと思っています。


この連載では、休日や仕事帰りに気軽に観たい作品をご紹介しつつ、作品を通して私が感じたことを読者のみなさんと共有しながら、そのテーマについて考えを深めていくきっかけを作っていけたらいいなと思っています。


ぜひ、劇場に足を運んでみてください!


『ザ・ロストシティ』

2022年6月24日(金)全国の映画館にて公開

©2022 Paramount Pictures. All rights reserved.

監督・脚本:アーロン・ニー、アダム・ニー

脚本:オーレン・ウジエル、デイナ・フォックス(製作総指揮)

原案:セス・ゴードン

製作:ライザ・チェイシン、サンドラ・ブロック

製作総指揮:JJ・フック、ジュリア・ガン、マーガレット・チャーニン

出演:サンドラ・ブロック、チャニング・テイタム、ダニエル・ラドクリフ、ダヴァイン・ジョイ・ランドルフ、ブラッド・ピット

『ザ・ロストシティ』公式サイトはこちら

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