ご覧いただきありがとうございます。バイラーズのもろたです。
私はテレビドラマを作る仕事をしているのですが、俳優事務所のスタッフさんから「絶対、この映画見てください!」と熱い想いで試写をお誘いいただき観に行ったところ、その映画が本当に良作で、ヤバい…!と唸ってしまいました。
その映画とは「月」。おそらく今年の賞レースにも躍り出るほどの良作・名作であると確信しております!
映画「月」
映画「月」あらすじ
深い森の奥にある重度障害者施設。ここで新しく働くことになった堂島洋子(宮沢りえ)は“書けなくなった”元・有名作家だ。彼女を「師匠」と呼ぶ夫の昌平(オダギリジョー)と、ふたりで慎ましい暮らしを営んでいる。洋子は他の職員による入所者への心ない扱いや暴力を目の当たりにするが、それを訴えても聞き入れてはもらえない。そんな世の理不尽に誰よりも憤っているのは、さとくんだった。彼の中で増幅する正義感や使命感が、やがて怒りを伴う形で徐々に頭をもたげていく――。
(公式HPより引用)
と、障がい者施設を舞台にしたもので、すごくヘビーです。でもそのヘビーなものから目を逸らしてはいけない。私たちには見たくないものやどこか考えたくない現実が存在していて、映画のスクリーンが観客の胸ぐらを掴んでちゃんと直視しろ!と言われている衝撃を抱きます。
映画「月」の背景
こちらの映画には原作があり、辺見庸さんによる同名小説です。そして、小説も実際に起きた障がい者殺傷事件をモチーフにしています。
調べれば覚えている方もいるかもしれません。私は報道にいた仲間がこの事件のために走り回っていた様子がとても記憶に残っていて、映画の最後どのような結末になるのかは知っています。しかし、フィクションの世界なのにドキュメンタリーを見ているようであり、そしてこの事件は、現代の社会構造を表しているのかもしれないと、見終わった時に問題提起のパスを与えてくれるのです。
出演者もすごい!
主演は宮沢りえさん
そして、彼女を囲むのはオダギリジョーさん、磯村勇斗さん、二階堂ふみさんと日本トップクラスの俳優さんたち。演技力は抜群の皆さんが覚悟を持って、「命の価値とは?」「命の尊厳とは?」を体現しています。
「あゝ、荒野」「新聞記者」日本アカデミー賞常連のプロデューサーが手がける
日本社会に一石を投じる作品を多く手がける映画製作・配給会社であるスターサンズの河村光庸プロデューサーが本作も手掛けています。
河村さんがかつて手掛けた「あゝ、荒野」「新聞記者」をご覧になった方はわかると思いますが、本当に骨太な作品で、「逃げるな!」と言われてるような印象をいつも受けるのです。ドラマの仕事を始める前に、日本アカデミー賞の仕事で「あゝ、荒野」に関する取材をしたことがあるのですが、今の現代社会だから届けたいメッセージがとにかく熱く持っているチームだと取材時から感じておりました。だからこそ「月」も期待を裏切らない作品になっていると断言したい!
そして、河村さんによるステイトメントが胸に響くのです。
戦争には賛成ですか、反対ですか。それは何故ですか。
戦争で、いい戦争と悪い戦争はあると思いますか。それは何故ですか。
(略)
出生前診断には賛成ですか、反対ですか。それは何故ですか。
人工妊娠中絶には賛成ですか、反対ですか。それは何故ですか。
殺人犯は死刑になって当然ですか。それは何故ですか。
命の尊厳を守るためにはどうしたらいいですか。命の尊厳とは何ですか。
失われる命と生かされる命に差はありますか。それは何故ですか。
この映画は答えの出ない「命」に向き合う主人公・洋子と「命」を言語化して裁こうとする=神の領域を侵すさとくんとの対峙である。
つまり人間の命の尊厳をめぐる戦いである
(一部抜粋)
見る前と、見終わった後、この河村さんのメッセージを読むと自分の普段動かしていない感情の歯車が動き出します。
障がいのある人が「生きる」とは?
自分もいつかそうなるかもしれない
身近な人がそうなるかもしれない
そんな時、命の価値は変わるの?
そして、現実と理想には矛盾がある事実も知っている…
それが、「目を逸らしていたこと」で、それをちゃんと見ろ!と考えさせてくれることが、映画の力だと思います。
明るい映画ではないです。でも直視して欲しい。多くの人に届いて欲しい。
そう思ったので、ブログにしたためました。
10月13日公開です。
映画「月」ホームページ