一瞬で沼に沈めてくる韓ドラを、おしゃれプロ目線でファッションチェックする連載、今回取り上げるのは、華やかな(ときに残酷な)SNSの世界で瞬く間にスターになる現代版シンデレラ的な『セレブリティ』。
SNSで注目を集め始めた頃の主人公ソ・アリ(パク・ギュヨン)。/Netflixシリーズ『セレブリティ』独占配信中
インフルエンサーのソ・アリを演じるパク・ギュヨンの黒髪ボブと、抜群のプロポーションで着こなすスタイルは世界中で話題に。BAILAファッションチームきっての韓ドラ通が彼女の魅力を語り尽くします。
今回、韓ドラ愛とそのファッションについて一緒に語るのはスタイリスト池田メグミさん。
【作品紹介】韓ドラ『セレブリティ』はかなりヒリヒリするインフルエンサーの世界
『セレブリティ』
2023年配信開始 全12話/ Netflixシリーズ 独占配信中
『セレブリティ』で繰り広げられるのは、憧れの的であり、常に危ういインフルエンサーの“どこまでも騒がしく、残酷なまでに華やかな”世界。フォロワーという数がすべての社会で、ある意味写真を撮るためだけに生きている人たちを可愛げなく、強烈に描いています。
韓ドラは憎まれ役もだんだん魅力的に思えてきたりすることもあるけれど、このドラマに限っては一切なし。お決まりの子供の頃や家族エピソードなどの息抜きもないので、終始怖いです。唯一心休まるのは、汝矣島の百貨店、ザ・ヒュンダイ・ソウルや最新のカフェなど、今すぐ渡韓したくなるロケーションがちょっと平常心を保ってくれます。
01.ヒロイン、ソ・アリ(パク・ギュヨン)のセレブになる前夜のスタイル
化粧品の訪問販売員時代のソ・アリ。/Netflixシリーズ『セレブリティ』独占配信中
陶山:さて池田さん、ソ・アリはいかがでしたか?
池田:こうやってのし上がっていくんだと震えました……。一瞬にしてセレブになったり、会社をつくったり、夢のあるお話としてちょっと救われる部分はありますが。私、主演のパク・ギュヨンは『ロマンスは別冊付録』の出版社の新人役の頃から注目していて、このときはロングヘアの財閥の娘で、独特なぶりっこ感や変な走り方が妙に気になり、好きになりました。『セレブリティ』では、ソ・アリの黒髪ボブも話題ですよね。有名になる前は基本ナチュラルで、セレブになっていくうちにタイトになったり、シースルーバングにしたり、衣装に合わせたヘアスタイルも可愛いんです。
陶山:ですね。作品の最初は化粧品メーカーで働く会社員で、目立つ存在ではないけれど、センスがいい人。この頃はプリントのTシャツにオーバーサイズのジャケットを羽織ったスタイルが一番可愛いなと。足元はチャンキーソールのローファーで。
イラスト/green K
池田:レザーブルゾンとデニムにエコバッグを持っていたりするのもリアルで可愛かったです。いわゆる韓国カジュアルで、今っぽいボーイッシュスタイルが洒落てますよね。
陶山:私もこの感じ、好きです。ボーダーニットのインに着ているロゴTシャツは韓国ブランド「RECTO(レクト)」。俳優が着用してから人気に火がついたとか。このロゴは韓ドラでもSNSでも本当によく見かけます。私も昨年ソウルに行ったとき、漢南洞の閑静なエリアにあるフラッグシップストアをチェックしました。
レザーブルゾンにエコバッグを肩かけするカジュアル時代のソ・アリ。/Netflixシリーズ『セレブリティ』独占配信中
ソ・アリがレクトを着用しているのは、突如ライブ配信に巻き込まれるシーン。/Netflixシリーズ『セレブリティ』独占配信中
02.フォロワー数と比例して豊かになっていくファッション。韓国カジュアルからハイブランドへ
サンローランのツイードドレスを着てパーティに向かうもトラブルに巻き込まれるソ・アリ。/Netflixシリーズ『セレブリティ』独占配信中
池田:やっぱりソ・アリの着こなしの変化が『セレブリティ』の見せ場ですよね。SNSやセレブに不信感を抱きながら、初めてパーティに出かけるときのサンローランのツイードドレスが象徴的。
陶山:カジュアルも似合うけれど、170cm近い彼女が次々と着こなすハイブランドは見もの。バルマンのショーやピンクリボンキャンペーンのイベントでの華やかなスタイルなど、フォロワーが増えるにつれ、人目を引くスタイルに。
池田:たしかに。韓国らしく派手ですが、今までのセレブをテーマにしたドラマのこってりとしたゴージャスさとはちょっと違い、トゥーマッチではない現代的なバランス感覚がソ・アリの魅力かもしれないですね。
陶山:そうそう。いわゆる真っ赤なレザーのトレンチとかダブルのスーツ、やたらと大きいサングラスのようなアイテムは出てこなくて(笑)。ツイードドレスのときもノーアクセで潔く着こなしているところに惹かれます。もともとセンスと芯のある彼女らしさが着こなしに表れている印象。
バルマンのショーのあと、セルフィーを撮るソ・アリとチェ・ボム(チョン・ユジン)。/Netflixシリーズ『セレブリティ』独占配信中
03.ソ・アリの切りっぱなしボブと、首元おしゃれの関係に注目
自分のスタイルと葛藤しながら、インフルエンサーへの道を歩み始めた頃のソ・アリ。/Netflixシリーズ『セレブリティ』独占配信中
陶山:日本でも話題となった、いつ見ても可愛い黒髪ボブにネックレスのレイヤードも彼女のチャームポイント。すっきりとした首回りにとっても似合うんです。首に沿うチョーカーが多く、華奢なパールやカラーストーン、モチーフなどを4、5本絶妙に重ねていたり、ブルガリのビー・ゼロワンを身につけているシーンも。
池田:あごラインのパツンとしたボブに映える、多連ネックレスがいいですよね。カジュアル時代のビーズネックレス使いはマネしたくなります。耳にはほぼつけていないので、そのやり過ぎない加減もいいんです。
イラスト/green K
04.まともな本物セレブ、ユン・シヒョン(イ・チョンア)姉さんの品格
財閥や芸能人が出品するバザーで、ソ・アリを場違いと嘲笑うインフルエンサーたちの中、ソ・アリをかばうユン・シヒョン(イ・チョンア)(左から二番目)。/Netflixシリーズ『セレブリティ』独占配信中
陶山:なにかとアリの味方になってくれる、イ・チョンア演じるユン・シヒョンのファッションも素敵。国会議員の娘で、文化財団の理事長という一目置かれる存在であり、高飛車な集団の中で、エレガントで落ち着いた彼女の存在が際立つんです。いつも体温が低そうで心配になるけれど(笑)。
池田:このドラマの中で唯一好感が持てる人ですよね。ニセモノセレブたちのいろんな感情が渦巻く中で、上手に自分を守って、ブレない姿勢は素晴らしいなと。でも夫の弁護士が巨悪。
パーティーでソ・アリを不安げに見つめるユン・シヒョン。/Netflixシリーズ『セレブリティ』独占配信中
陶山:もう悪人は置いておいて(笑)、彼女がパーティで着ていたオフショルダーのブラックドレスやフリルカラーブラウスを効かせたモノトーンスタイルのくぎづけに。ちなみにイ・チョンア姉さんはソーシャルダイニングをコンセプトにした料理バラエティ『みんなのキッチン』で、共演者に配慮する姿から「万能の女神」と呼ばれるほど、美しさと人柄の良さが評価されている人。この番組もぜひおすすめしたいところです。そういえば、イケメン枠のコスメ会社代表ハン・ジュンギョン(カン・ミンヒョク)とソ・アリのラブラインはちょっと雑だったような気がして。一緒に車で移動しているくらいで、デートシーンはほぼゼロだったのでは。
いつもスーツ姿が眼福。警察署でソ・アリを待つハン・ジュンギョン(カン・ミンヒョク)。/Netflixシリーズ『セレブリティ』独占配信中
池田:そうですね。韓ドラにしてはラブシーン的な要素がちょっと薄かったですね。あと主役級のカメオ出演の無駄使いもある意味見どころ(笑)。内容に翻弄されているうちに「あれ?」って。
陶山:そういう意味でもこのドラマは豪華かもしれない。とにかく終始眉間にシワを寄せた顔が並び、マウントの取合いですが……(笑)。ぜひこの機会に韓国発のファッションと、怖いからこそ知りたくなる世界へ。
新作が続々と配信され、ストーリーもキャストもファッションもすべて見逃せない韓ドラを、私たちの視点で次回もまたお届けします。どうぞお楽しみに! アンニョン!