「落ちるの一秒、ハマると一生」と言われる歌舞伎沼。その深淵をのぞき、沼への入り方を指南するこの連載。今月紹介するのは、2日から浅草公会堂で上演される『新春浅草歌舞伎』。次世代を担う若手歌舞伎俳優が中心となって、毎年1月に開催される公演で、若い女性ファンに大人気!! 昨年、行われた合同取材会で熱い公演への思いを語ったのは尾上松也(おのえまつや)さん、中村歌昇(なかむらかしょう)さん、坂東巳之助(ばんどうみのすけ)さんの3人。新年らしいにぎやかな『新春浅草歌舞伎』の魅力にバイラ歌舞伎部のまんぼう部長とばったり小僧が大接近!!
↑現在、浅草公会堂で行われている『新春浅草歌舞伎』の合同取材会に出席した尾上松也さん (中)、中村歌昇さん(右)、坂東巳之助さん(左)の3人。個性あふれるイケメンぞろいの浅草歌舞伎に、ばったり小僧の期待も高まる!!
■『新春浅草歌舞伎』は、若手歌舞伎俳優の登竜門!!
カメラマンさとやん 合同会見、楽しかったです~!! 普段の歌舞伎のかしこまった雰囲気とは違って、年齢が近いからこそのわちゃわちゃ感、たまりませんね!!
ばったり小僧 本当に!! でも、松也さんが「今はわちゃわちゃしてるけれど、稽古では他の劇場より緊張感がある」って言っていたのがおもしろかった(笑)。「ベテランの方こそ、稽古場でわちゃわちゃしててもパッとできるけれど、稽古場では僕たち、そんな余裕がないので」って。
↑「『寺子屋』は、現代ではなかなか理解しがたいことが起きますが、親兄弟への愛情や主人への忠誠心が濃くにじみ出ている作品。その部分はみなさんにも共感していただけるのではないかと思います」(松也)
まんぼう部長 そうね。『新春浅草歌舞伎』は、若手俳優が中心となる公演で、歌舞伎座とかではできないような大きな役を若手がやらせてもらえるという大チャンスなのよね。だから、みんなすごく気合が入ってると思うし、初めてやる役も多いから、すごく緊張していると思う。とくに松也さん。一部が『寺子屋』で松王丸、二部が『仮名手本忠臣蔵』で大星由良之助。どっちも歌舞伎を代表する人気演目だもの。
小僧 大星由良之助って、大石内蔵助のことですよね?「30代前半のうちに由良之助を勤めることは想像もしていなかった」と言っていたけれど、松也さん、取材会でも堂々としていたし、場を包み込むような雰囲気があるから、なんかぴったりのような気がします。
↑「『絵本太功記』の光秀は、年齢と経験値が必要なお役。教えていただいたことをひとつひとつ自分の中に取り込んで、お客様に作品の魅力をお伝えしたい。今の自分にできる限りのことを尽くしたい」(歌昇)
部長 歌昇さんは『絵本太功記』の武智光秀をやるのよね。いわゆる本能寺の変のあとの明智光秀の話で、これも重々しいお話。「ご指導くださる吉右衛門のおじさまからは、役者としての大きさが必要なお役だというお言葉をいただいた」と歌昇さんが言っていたけれど、今の年齢の歌昇さんが演じる光秀、楽しみだわ。
カメラさとやん 今年のNHK大河ドラマも主人公は光秀だから、まさに旬の演目ですね。
↑「『茶壺』は、ユーモアあふれる笑える作品。お客様を笑顔にすることこそがこの作品を後世に残すことになると考えています。同い年の歌昇くんと一緒にできて、僕もうれしいです」(巳之助)
小僧 そして歌昇さんと巳之助さんが二人で踊る『茶壺』も楽しみです。ちょっとコミカルな踊りなんですよね。「巳之助くんに叱られながら精一杯勤めたいと思います(笑)」って歌昇さん言ってましたね。
部長 巳之助さんが「父も祖父も代々勤めてきた演目」と言っていたように、『茶壺』は巳之助さんのおうちが得意とする舞踊。巳之助さんも踊りが抜群にうまいから、きっと素敵な踊りで楽しませてくれるはずよ。
↑顔を寄せて資料を確認する松也さんと歌昇さん。素の表情も素敵です。
カメラさとやん 「『寺子屋』で重い古典を見たあとに、『茶壺』で笑っていただいて、歌舞伎を観てよかったなと楽しい気持ちで劇場をあとにしていただければ」と巳之助さんが言っていたのが印象的で、『新春浅草歌舞伎』、すごく観たくなりました!!
↑34歳、兄貴ぶんの松也さんに、ともに30歳で同じ年の歌昇さんと巳之助さん。会見は、まさにわちゃわちゃした楽しい雰囲気で、3人の仲の良さがうかがえました!!
■『新春浅草歌舞伎』を観たあとは、浅草の街に繰り出そう!!
小僧 ところで資料を見たら、『新春浅草歌舞伎』って、2020年で40周年を迎えるんですね!? そんなに長くやってたなんて知りませんでした。
部長 過去には、市川猿之介さんや片岡愛之助さんといった、今や大劇場で活躍する俳優さんたちも出ていたのよね。2015年から最年長の松也さんをリーダー的存在としたメンバーに一新されて、今年は、歌昇さん、巳之助さん、坂東新悟(しんご)さん、中村米吉(よねきち)さん、中村隼人(はやと)さん、中村橋之助(はしのすけ)さんという、人気も実力もある花形俳優がそろっていて期待大だわ♪
↑どんなお役でも目を引く巳之助さん。立ち姿が美しく、動きも軽やか。よく響く低温ボイスも素敵。「この存在感は唯一無二」と部長もぞっこん。
小僧 しかもイケメンばっかりじゃないですか!! これは誰のファンになるか、迷いますね。そういえば部長が歌舞伎を観はじめたそもそものきっかけって、『新春浅草歌舞伎』じゃなかったでしたっけ?
部長 よくぞ聞いてくれました!! じつは数年前、隼人さんの講演を聞いたことがあってね。そのとき、隼人さんが「縁があったときがその人にとって歌舞伎を観るタイミング」という話をしていたのよ。そうしたら、その直後、新聞に『新春浅草歌舞伎』の切符販売のチラシが入っていて、「今が私にとってのタイミングなのかも!?」って思ったわけ。それでひとりで勇気を出して行ってみたら、その日の「お年玉」(上演前の年始のご挨拶)が巳之助さんで、舞台からひょいと飛び降りて客席にマイクを向けたりしつつ、話をするんだけど、その面白いこと!! 感嘆して、しばらく巳之助さんを追って歌舞伎を観てみようと思ったのが、沼に入った発端なのよね。入ってみたら、あまりに広くて深くて悶絶したわ・・・その沼・・・。だけど、歌舞伎に詳しい友達もいなかった私にとっては、1人の俳優さんを追うことでいろんな演目を観られたし、他の俳優さんにも詳しくなったし。この方法はおすすめよ!
↑『新春浅草歌舞伎』のリーダーを務め2020年で6年目の松也さん。安定感ある芸とリーダーシップで、今や若手の精神的支柱に。切れ長の色っぽい視線に小僧は瞬殺。
カメラさとやん そんないきさつがあったとは!! でも、わかります。 巳之助さん、取材会でもすごくお話上手で、頭いいんだなぁってビックリしました。それにしても、その「お年玉」、めっちゃ気になります~。
部長 開幕の前に、出演俳優たちが日替わりでトークをするんだけど、みんな話上手だから盛り上がるし、歌舞伎を知らなくてもすごく楽しめると思うのよね。歌舞伎の敷居がぐんと下がるはず。
↑言葉を選びながら、慎重に答える歌昇さん。芸と真剣に向き合うひたむきさが感じられます。しかも正統派イケメン! 部長は、この表情に萌えるらしい!?
カメラさとやん 歌舞伎座よりチケットの値段も安いし、演目が少ないぶん、時間が短いのも歌舞伎初心者にはうれしいです。
小僧 しかも浅草は、おいしいものもあるし、浅草寺もあるし、お芝居をみたあと、浅草の街に繰り出せば、一粒で2度おいしい♪
↑この6年間の成果を聞かれて、「『新春浅草歌舞伎』を応援してくださる団体の方々の新年会などに参加させていただく機会が増えたことで、当たり障りのない挨拶を身に着けることができたのが一番の成長(笑)」という巳之助さんに松也さん、歌昇さんも爆笑。みなさんの「お年玉」(挨拶)にも期待が高まります!!
部長 よし、決めた!! 1月は『新春浅草歌舞伎』を観て、そのあとバイラ歌舞伎部の新年会するわよ。
小僧 はーい! 歌舞伎&すき焼きツアー、楽しみにしてま~す!!
■「十二月大歌舞伎」
2020年1月2日(木)~26日(日)
東京都 浅草公会堂
【第1部 11時開演】
★お年玉(年始ご挨拶)
一、花の蘭平(はなのらんぺい)
蘭平 中村 橋之助
二、菅原伝授手習鑑(すがわらでんじゅてならいかがみ)
寺子屋
松王丸 尾上 松也
武部源蔵 中村 隼人
戸浪 中村 米吉
春藤玄蕃 中村 歌昇
千代 坂東 新悟
三、茶壺(ちゃつぼ) 岡村柿紅 作
熊鷹太郎 坂東 巳之助
田舎者麻胡六 中村 歌昇
目代某 中村 錦之助
【第2部 15時開演】
★お年玉(年始ご挨拶)
一、絵本太功記(えほんたいこうき)
尼ヶ崎閑居の場
武智光秀 中村 歌昇
武智十次郎 中村 隼人
初菊 中村 米吉
佐藤正清 中村 橋之助
操 坂東 新悟
真柴久吉 中村 錦之助
二、仮名手本忠臣蔵(かなでほんちゅうしんぐら)
祇園一力茶屋の場
大星由良之助 尾上 松也
お軽 中村 米吉
大星力弥 中村 橋之助
富森助右衛門 中村 隼人
赤垣源蔵 中村 歌昇
寺岡平右衛門 坂東 巳之助
■チケットに関するご案内
チケットは、チケットWeb松竹、チケットWeb松竹スマートフォンサイト、チケットホン松竹ほかで発売中。
取材・構成/バイラ歌舞伎部 撮影/齊藤晴香
まんぼう部長……ある日突然、歌舞伎沼に落ちたバイラ歌舞伎部部長。遅咲きゆえ猛スピードで沸点に達し、熱量高く歌舞伎を語る。
バッタリ小僧……歌舞伎歴2か月。やる気はあるが知識ゼロの新入部員。若いイケメン俳優より、本当はオーバー40歳の熟年役者好き。