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【BAILAhomme掲載】中村倫也×向井 理「共犯者 ―光と影を知る男たち―」仲良しツーショットも必見!

舞台「いのうえ歌舞伎『狐晴明九尾狩』」で共演する二人は光と影のように呼応し合い、正反対の輝きを放っている。異なるキャリアを歩みながら合流した、男たちの熱い仕事論とは──。
※2021年8月刊行BAILAhommeより転載/掲載情報は発売時のものです

中村倫也×向井 理 光と影を知る男たち

“成功と失敗”では考えない。“やるかやらないか”、大事なことはそれだけ ―― TOMOYA NAKAMURA

“成功と失敗”では考えない。 “やるかやらないか”、大事なことはそれだけ TOMOYA NAKAMURA

仕事があるだけで毎日がめちゃくちゃハッピー

中村倫也さんの俳優としての底なしの表現力に世間が気づいたとき、彼はすでに30歳を過ぎていた。今や多くの映画やドラマ、舞台やCMに出演する大忙しの人気者にストレスについて話を向けると、「仕事がある、ということだけでストレスの大部分がなくなる。だから毎日めちゃくちゃハッピーです」と返ってきた。

「2年前が人生でいちばん忙しかったんです。でも、おかげで忙しいことに対するストレス耐性はできた気がします。20歳くらいの夏だったかなあ。日雇いの仕事に行って汗かいて『何してるんだろう』って思ったり、まったく役者の仕事がない3カ月間を過ごしたり……。役者なんて表現する場がないとなんもできないんで、その頃と比べたら万々歳ですよ」

取材中、中村さんは何度も仕事がなくつらかった時期のことを口にした。それはまるで、決して忘れまいと自分自身に言い聞かせるように。

「演出家の河原雅彦さんに『一緒に仕事をしたいのにキャスティングが通らないから、早く売れて』と言われたことがあって。それで『売れなきゃ』って思ったし、ムロツヨシさんに仕事がないことをグチグチ言っていたら『じゃあお前は何ができるの?』と言われて、『ああ、なんもできねーからこういう状況なんだ』って気づくことができた。僕、批判も称賛も話半分で聞くようにしているんですけど、先輩に言われたその言葉たちはすごく残っています」

大人になって気づいたのは、「世界は自分に興味がない」ということ。

「若い頃はそのことを悲観してたんです。でも今は、『そりゃそうだ』と思うようになりましたね。若者の通過儀礼かもしれないけれど、学生時代は世界の中心が自分だったんです。でも仕事を始めたら周りは主人公だらけ。ほかの人にほうっておかれずに物語の主人公にしてもらえる才能がある人と僕は、違うんだって気づいたんです。グダグダ悩むくらいなら、もう、やるしかないなって」

俳優としての強みは、誰にも似ていない“中村倫也”であること自体。

俳優としての強みは、誰にも似ていない“中村倫也”であること自体。

「何かを成し遂げるために自信なんて必要ない」と断言する。「そもそも自分のことなんか信じちゃいないですから。努力なんてほとんど報われないし、結果なんて時の運も作用する。人と比べて自分にできないこともたくさんあります。でも、この見てくれとこの声、この年齢とこの概念を持っている個体は僕以外いない。建設的に考えて、今の自分にできることを築き上げていくしかないですよね。自分の場合、“成功と失敗”で考えるんじゃなく、“やるかやらないか”で考えるようにしてるんです。そうすると、不思議なもので失敗も成功にすることができるから。これから先も仕事がもらえるかなんてわからないけど、続けていきたいと思えるのは結局、自分がやりたいっていうそれだけなんです」

舞台はものづくりとしてすごく健全だと思う

舞台はものづくりとしてすごく健全だと思う

様々なフィールドで活躍しながらも、キャリアの礎を築いた舞台は、唯一無二の“ホームグラウンド”。

「約1カ月間稽古してみんなで意識を高め合って、本番でお客さんの前で披露して、終わったら拍手をもらう。ものづくりとして健全な気がします。作品に携わる人みんなで共通認識を深めていく稽古期間は、物語を背負う共犯関係になれる。稽古中はいくらでもミスして共倒れしてギャハギャハ笑い合えますしね。別に僕、30歳を超えてもミスしていいと思うんです。チャリンコと同じですよ。転ぶことを繰り返しながら乗り方を学んでいくように、ミスをしながらミスの仕方を学んでいく。最初からスマートに乗りこなすなんて、もったいないなって思います」

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実力をつけないと生き残れない。そのことに、キャリア10年で気づいた ―― OSAMU MUKAI

実力をつけないと生き残れない。そのことに、キャリア10年で気づいた OSAMU MUKAI

舞台を経験したことで仕事の醍醐味を知った

この夏、中村倫也さんと共犯関係を築くのは向井理さん。舞台を“ホームグラウンド”と語る中村さんとは対照的に、「舞台の台本が届くとうなされたり、吐きそうになるんです」と、聞き捨てならない発言が。

「僕にとって舞台は、好きとか嫌いとかではなくて、やらなきゃいけないことのひとつ。毎回プレッシャーと格闘しながらやっています」

そこまでして挑戦する理由は、俳優という仕事の根幹に関わっていた。

「SNSがない頃は、ドラマや映画の反響を知る手段がなかった。でも舞台は、終わった瞬間のお客さんの反応がすぐに評価につながるんですよね。見てくれる人が存在するから、僕ら役者が活動できている。仕事を始めて10年がたった頃、舞台上で『ああ、こういうお客さんが見てくれていたんだ』と実感できたときに、人を楽しませることがこの仕事の醍醐味だと感じたんです」

舞台を経験したことで仕事の醍醐味を知った

大学卒業後、社会人経験を経て24歳でデビュー。世間が彼の魅力に気づくのに、時間はかからなかった。

「20代の頃はよくわからないまま突っ走っていたと思います。次から次に与えられる台本を一生懸命覚えることの繰り返しでしかなかった。3日で1時間とか、本当に寝る時間もなかったくらい。忙しすぎて人としての生活が成立しないので、正直おかしくなっていたと思います。ただ、20代はフレッシュさが売りになっても、キャリアを積んだら実力をつけないと生き残れない。10年がたった頃、もう一度お芝居に真剣に向き合わなきゃいけないと感じました」

そこで直面したのが、「こだわりは手放していい」という気づきだった。

「昔は『ここはこういう感情でしか言えません』とか言って、セリフを変えてもらったりすることもあったんです。ディレクションの方向性が思っていたことと違ったときに、自分の見え方が悪くなる気がして。どこかこう、自分で自分を守るしかないと思っていたんですよね。でも、そのセリフを書いた脚本家さんの思いや、いろんな人のもとを通って印刷された台本だということを少しずつ理解できるようになってきてからは、セリフをより大事にできるようになりました。それに、結局は見ている人が受け取ったことが正解になる。他人からの評価がすべてなので、争うんじゃなく、お芝居への向き合い方や行動で変えていくことのほうがよっぽど説得力があると気づいたんです」

楽になるのはきっともう少し先な気がする

楽になるのはきっともう少し先な気がする

「天才型じゃないことは昔からわかっていた」という向井さん。自身の強みを分析してもらうと、少し照れながら「まじめさ」との答えが。

「まじめに真摯に、穴があくほど台本を読み込んで、たとえ下手でも一生懸命に向き合ってきた。そういう打算的じゃない部分で選んでいただけていることが多い気がします。今はSNSのフォロワーが多い人からキャスティングされるみたいなことも聞きますけど、一切やっていない僕はそこに頼れない。でも、演じるときにその役に見えればいいだけなので、プライベートや役を作る過程は、見せる必要はないと思っています」

仕事に忙殺されていた時期を経て、真摯にお芝居に向き合えている今。肩の力が抜けて、なんだか楽しそう。

「もちろん仕事を楽しむことは大前提ですけど、楽になったかと言われると違うんです。キャリアを積むほどオーダーされるストライクゾーンが狭まってきているし、難しさも増している気がします。きっと、楽になるのはもうちょっと先なんじゃないかな。50代、60代に楽をするために、必死で自分の引き出しを増やしていく時期なんだと思っています」

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中村倫也 × 向井 理 15年ぶりのクロストーク

「おさむっち」「倫也」と呼び合い、自分たちのことをいたずらっぽく「ちびとのっぽ」(中村)と表現する。大人になった今だから言える二人がお互いに抱いてきた思いとは──。

実力をつけないと生き残れない。そのことに、キャリア10年で気づいた──向井理

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──お二人の出会いは2007年公開の映画『俺は、君のためにこそ死ににいく』だそうですね?

向井 撮影当時、倫也は10代だったよね。

中村 うん。おさむっちはドラマ「のだめカンタービレ」とかやって世間に見つかる前。戦争映画なのに当時からものすごくシュッとしていて目立ってた。突出していたと思う。存在感が。

向井 倫也はちゃんと役があって重要なキャラクターだったから、「すごい子がいるね」って裏で話題になってたの。「若いのになんであんなに芝居ができるんだー!」って。僕はその他大勢オーディションで選ばれて役名もなかったから。その映画以降、倫也とは特に交流はなかったけど、印象はあまり変わらない。20代、30代が多い現場でも当時から飄々としていたから。

中村 なつかせてもらいました。でもおさむっちの印象も変わんない。あのときから理知的だしスマートだし、ぎゃーぎゃー騒ぐ姿が浮かばないもん。「わ、うんこ落ちてる!」とか言わないでしょ。

向井 絶対出ないね。そのワードは(笑)。

中村 ふはは。でもおさむっちは、その映画から売れるまでけっこう早かったもんね。

向井 たまたま作品が続いただけだけどね。

中村 ドラマの「ハチミツとクローバー」とかね。若い頃の僕は仕事があんまなくてめちゃくちゃすれてたし腐っていたから、おさむっちが出世していく姿を見て「ちくしょー!」って思ってたんです。どんどんステップアップしていく過程がすごく刺激的だった。

向井 なんか俺、「このやろー」って思われる率が高いんだよね。わかりやすいから。きっと。

中村 そうそう。20代前半の頃は余裕がなくて笑うことができなかったけど、今は30歳も過ぎて、こうして笑い話にできるようになったしね。

向井 お互いハングリーだったから。

中村 若い頃に一緒に仕事をした仲間と、大人になってからメインキャストとして一緒に取材を受けられるようになったことはすごく嬉しいです。

中村倫也×向井 理 15年ぶりのクロストーク

中村さん「俺のほうがおさむっちよりちびなのに無理があるでしょ」

相手を輝かせるために演じたい

向井さん「のっぽのほうは遠慮なくいかせてもらいますけど!笑」

“成功と失敗”では考えない。 “やるかやらないか”、大事なことはそれだけ──中村倫也

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〈向井さん〉スーツ¥418000・シャツ¥121000・ベルト(参考商品)/クリスチャン ディオール(DIOR)

──劇団☆新感線作品は、お互いに2作目の出演。『狐晴明九尾狩』で中村さんは安倍晴明を、向井さんは陰陽師・賀茂利風に化けた妖狐を演じます。


中村 おさむっちが演じる賀茂利風は、利風の瞬間と狐が利風を演じている瞬間、地の狐の瞬間とそれがさらにパワーアップしたときと、4段階くらいあるよね。

向井 本当にそう。俺は4.5段階って考えてる。

中村 それを巧みに演じ分けられるそうで(笑)。

向井 えええ!でも僕の悪役ぶりが強まるほど晴明のよさが出ると思うし、晴明のよさが出るほど僕の悪役ぶりが際立つ。敵対している役柄だけど、相手を輝かせるために頑張るっていう感覚です。

中村 そう考えると、まさに陰陽だよね。

向井 そうそう、光と影。

中村 作る側はプロレスを演じるようなもの。舞台上で白熱した金網デスマッチを繰り広げようと思います。

詳しくは、発売中のBAILAhommeでチェック

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中村倫也(なかむら ともや)

中村倫也(なかむら ともや)


1986年12月24日生まれ、東京都出身。2005年にデビュー。主な出演作は連続テレビ小説「半分、青い。」、ドラマ「凪のお暇」「珈琲いかがでしょう」、映画『水曜日が消えた』『ファーストラヴ』、舞台『クラッシャー女中』『怒りをこめてふり返れ』など。

向井 理(むかい おさむ)

向井 理(むかい おさむ)


1982年2月7日生まれ、神奈川県出身。2006年にデビュー。主な出演作は連続テレビ小説「ゲゲゲの女房」、大河ドラマ「麒麟がくる」、ドラマ「着飾る恋には理由があって」、映画『小野寺の弟・小野寺の姉』、舞台『星回帰線』『劇団☆新感線「髑髏城の七人」Season風』など。

いのうえ歌舞伎『狐晴明九尾狩』

いのうえ歌舞伎『狐晴明九尾狩』
東京・TBS赤坂ACTシアターにて9/17〜10/17
大阪・オリックス劇場にて10/27〜11/11
作/中島かずき 
演出/いのうえひでのり
出演/中村倫也、吉岡里帆/浅利陽介、竜星 涼、早乙女 友貴/千葉哲也、高田聖子、粟根まこと/向井 理ほか

時は平安時代の中頃。宮廷から疎まれていた陰陽師の安倍晴明(中村倫也)は九尾の妖狐退治から退けられ、陰陽師宗家の跡取りである賀茂利風(向井理)に命じられる。ところがすでに妖狐は利風を倒し、その体を乗っ取っていた。狩られるのは妖狐か、それとも晴明か。陰陽師の誇りを懸けた死闘が今、幕を開ける。

撮影/土山大輔〈TRON〉 ヘア&メイク/Emiy(中村さん)、晋一朗〈IKEDAYA TOKYO〉(向井さん) スタイリスト/戸倉祥仁(中村さん)、外山由香里(向井さん)   取材・原文/松山 梢 構成/菅井麻衣子〈BAILA〉 ※BAILAhomme掲載

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