2024.9.13

『本日公休』9月20日（金）公開！昔ながらの理髪店を営む女性に訪れる変化のとき【シネマナビ】

一年365日、映画＆ドラマざんまいの今祥枝が、おすすめの最新映画をピックアップ！今回は、昔ながらの理髪店を営む女性に訪れる変化のときを描いた『本日公休』をレビュー。

ナビゲーター

『本日公休』

昔ながらの理髪店を営む女性に訪れる変化のとき

台湾の台中にある昔ながらの理髪店。狭い路地を入ったところにあるその店は、2階のベランダからあふれるように垂れ下がっている枝に赤い花が咲き誇る。年季の入った木枠のドアも味わい深いたたずまいで、懐かしくもあったかい空気を感じて心が落ち着く。

店主は長年、常連客の話に誠実に耳を傾けながら髪を切り続けてきたアールイ（ルー・シャオフェン）。作家でMV監督でもある台湾の俊英フー・ティエンユーによる『本日公休』は、監督の母親をモデルにした女性の物語だ。

長男と2人の娘たちは独立し、それぞれの人生を送っているが、アールイは子どもたちを心配することがやめられない。そんな母親を子どもたちは愛しているが、疎ましくも思ってしまう。ある日、母親が携帯を家に置いたまま、店は休みで姿が見えない。集まってきた子どもたちは口々に勝手なことを言うが、ふと「私たち、お母さんが毎日何をしているのか知っている？」と不安になる。

その頃、アールイは遠くの町に住み、病床にある常連客の髪を切るために自ら車を走らせて向かっていた。緑の稲が風に吹かれるのどかな景色を眺めながら、出会った若者たちと言葉を交わし、助けられながら目的地へ。その道中、アールイは大切なことに気づいていく。

親もまたひとりの人間なのだと、子どもはいつ認識するのだろうか？私たちはいつまでも親は親で、子どもは子どものままでいられると錯覚しがちだ。しかし、何事にも終わりがあることに、ふと気づかされる瞬間がある。

ティエンユー監督は、「人生でいちばん大切なのは、行動すること」だと語っている。その言葉どおり、アールイは自分で車を運転して、女友達らと遊びに出かける。「運転免許を持っているから、子どもに頼らなくても、どこにでも行けて羨ましい」と言われて笑顔を見せる。母親は母親の新たな人生をいく。子どもたちもまた、母親とは違う価値観、生き方を選んで生きていく。それぞれに道は違っても、大丈夫。アールイのどこかすっきりとした表情からは、そんな心の声が聞こえてくるようだ。

監督・脚本／フー・ティエンユー（傅天余）
出演／ルー・シャオフェン（陸⼩芬）、フー・モンボー（傅孟柏）ほか
配給／ザジフィルムズ/オリオフィルムズ
公開／9月20日（金）より新宿武蔵野館、シネスイッチ銀座ほか全国順次公開

こちらも必見！