NHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』で轟太一役を演じ、注目を集める俳優・戸塚純貴さん。次に挑む作品は、“コメディの奇才”として絶大な人気を誇る福田雄一さん演出のミュージカル『グラウンドホッグ・デー』。「力量が試される」という稽古の様子や、共演者とのコミュニケーションのとり方について伺いました。
鍛えられるからこそ演技の引き出しが増えていく
——「コメディの奇才」とも呼ばれている、ヒットメーカー福田雄一さんの作品に出演するのは今回の『グラウンドホッグ・デー』で3回目となります。今作に出演が決まった際のお気持ちを教えてください。
戸塚さん:率直に「ミュージカルか!」と驚きましたが、福田さんは出会ったときからずっと僕に課題を与えてくれる方なので、今回お声がけいただいた際は「ぜひ挑戦させてください」という気持ちになりました。
——過去のインタビューで「福田さんの現場は常に戦いである」とおっしゃっていました。どのような現場なのでしょうか。
戸塚さん:戦いなんて言ったっけ…(笑)。福田さんが褒めてくれたことというのは、あまりほかの現場ではできないんです。福田さんが面白がってくれた演技を、別のドラマや舞台でもやったら「何やってんだよ」って怒られちゃうと思うから。それくらい独特で唯一無二の現場であることは間違いないです。それを「戦い」って表現したのかもしれない。
福田さんは独自の笑いのツボがありますし、とことん追い詰められて必死に絞り出してやったことを面白がってくれる。稽古では、昨日と同じことをしたら「それ前回もみたよ」って指摘されてしまうので、力量が試されるんですけどね。福田さんが鍛えてくれるからこそ、演技の引き出しが増えていっている実感はあります。本当にありがたいです。
——小さな頃から、「コメディ映画の王」とも呼ばれる俳優・コメディアンのジム・キャリーがお好きだとお伺いしました。影響を受けている点はありますか?
戸塚さん:ジム・キャリー主演の映画『マスク』は大好きで、何度も繰り返し観ています。コメディの筋肉をすべて使って演技をする、という姿勢には大きく影響を受けていると思います。スティーヴ・カレルも好きです。表情やセリフの言い回しは参考にしてますね。役者として二人に憧れています。
自分が演じる役には愛すべきポイントを見つけたい
——今作では、主人公・フィルの高校時代の友人であるネッドという役を演じます。共感できるところはありますか。
戸塚さん:ネッドって、悩みを抱えていない軽い人間に見えますが、何度も同じ1日を繰り返すこの世界からは逃れられないことをきちんと理解していて達観している部分もあり、地に足がついた人間だと思うんです。そこにとても魅力を感じていて。悲しみと笑いをあわせ持つ、愛すべき人物ですね。
今まで様々な人物を演じてきましたが、どのキャラクターにも愛すべきポイントがあるし、自分の中で「正しい」と思うポイントを見つけたいんです。なので、演じるキャラクターのいいところとダメなところを整理するようにしています。また、自分が演じる役が物語全体にどのような影響を与えているのかを、すごく考えますね。単体でみるとよくわからない役でも、大きな枠組みでとらえると魅力が浮き上がってくることもありますから。
今は先輩と一緒に遊ぶのが心地いい
——今回の作品だけでなく同世代の俳優たちとの共演が多いですよね。コミュニケーションをとるうえで心がけていることはありますか。
戸塚さん:くだらない話をしてることが多いですかね。現場で演技論を語るとか、あまり熱い話をすることはないかな。主演の桐山(照史)くんはみんなを盛り上げてくれます、さすが座長です。
福田さんとは、稽古のあと家まで車で送ってくれたり、けっこう長い時間一緒にいます。福田さんは共演者だけでなくスタッフの方たちとも自然と仲よくできる空気を作ってくれるんです。すごいですよね。
——福田さんのコミュニケーション術から学ぶことはありますか?
戸塚さん:福田さんの距離の縮め方は独特なので、真似はできないかな(笑)。今回の現場はコミュニケーション上手な人たちが集まっているからか、仲よくなるのも早かったです。
僕自身もすぐに打ち解けられるタイプで、上の世代の方々といるのも心地いい。自分で言うのも変ですけど、先輩たちに愛されるほうだと思います。俳優の仕事でまだ全然食べていけなかった時期は、たくさん面倒をみてもらいました。先輩たちにしてもらったことを、ゆくゆくは後輩に返していかなきゃと思うのですけど、まだまだ年上の方々に囲まれているほうが好きなんですよね。いつになったらいい先輩になれるかな。
ミュージカル『グラウンドホッグ・デー』
撮影/玉村敬太(TABUN) スタイリスト/森大海 ヘアメイク/小田桐由加里 取材・文/高田真莉絵