NHK朝の連続テレビ小説『虎に翼』で轟太一役を演じ、大ブレイクを果たした戸塚純貴さん。インタビュー後編では、様々なクリエイターたちから引く手あまたの戸塚さんに「愛され力」について伺います。
『虎に翼』は俳優人生の財産になる作品
——『虎に翼』で演じた轟太一という役は、視聴者から「俺たちの轟」と呼ばれて愛されていただけでなく、同性婚などのトピックを考えるうえでもとても重要な役でした。轟太一から学んだことはありますか。
戸塚さん:朝ドラという枠でフェミニズムやセクシャリティ、そして格差の問題などを「きちんと描いていきたい」という制作陣の強い気持ちを感じられたのは嬉しかったです。嬉しかったというよりもそれが“すべて”かもしれません。生半可な気持ちで演じてはいけないという姿勢でいられましたし、こちらも「この役を演じきるぞ」という熱い気持ちを持って望めました。
監督はあまり細かい演技指導をしない方なんですが、「轟のイメージは三島由紀夫の『仮面の告白』だ」と教えてもらったんです。それを知ったことで、より轟という人間を立体的にとらえられるようになりました。点と点がつながったというか。すばらしい役作りの材料を与えてくださいました。
長い時間をかけて丁寧に作り上げてきたものが視聴者の方々に愛され、評価もしていただけたのはとても嬉しいです。この作品に参加できた経験は、今後の俳優人生の財産になっていくと思いますし、『虎に翼』を汚すことのない俳優になっていきたいですね。
憧れの人は、所ジョージさん
——戸塚さんは『BAILA』の読者と同世代です。どんな30代を送りたいですか。
戸塚さん:20代は仕事に打ち込んできたこともあり、30代は無理しすぎず、適度に力を抜いてやっていきたいです。無理してしまったらいい演技はできなくなってしまうし、仕事にも影響が出てしまうので。根をつめすぎずにマイペースでいたいですね。
自分自身が楽しんでいないと、特にコメディーは演じられないと思いますし。俳優ならば、自分のコンディションに左右されずにどんな役でも演じるのが正解なのかもしれないけど、隠れて多額の借金を抱えながら富豪を演じるなんて悲しいじゃないですか(笑)。自分だけでなく、関わってくれる方々が心が豊かでいられる環境をつくっていきたいです。
——サウナや温泉巡り、ギター演奏。戸塚さんは多趣味ですよね。プライベートの時間もとても充実していそうです。
戸塚さん:ぼく、所ジョージさんに憧れているんです。趣味をたくさん持っていて、好きなものに囲まれて暮らしていらっしゃいますし、どこか軽やかなところも。世田谷ベース(所さんが世の中の楽しみ方を発信する情報基地)とか最高ですよね。
居酒屋に飲みにいくのも大好きです。最近、ワインにもハマってます。いいワインって二日酔いになりにくいんですよね。飲みにいくとお店の方とも自然と仲よくなります。このあいだはなじみのお店の店長と一緒にゴルフにも行きました。
——戸塚さんは、「愛される力」を持ってるんですね。
戸塚さん:マネージャーさんからは、「次男の日本代表みたい」とか「次男の教科書的存在」とよく言われています(笑)。兄が失敗するところを見ていたから、自分は一歩引いて安全なところを歩くのが習慣になっているのかもしれません。よく言えば俯瞰な視点を持っているということかな。石橋を叩きすぎているとも言えるんですが。あと母がお店をやっていたのでお客さんとのコミュニケーションをよく観察していたんです。その経験が生きているのかもしれませんね。
——人間関係に悩んでいる『BAILA』の読者も多いです。アドバイスをもらえますか?
戸塚さん:こればっかりは生まれ持ったセンスがものをいうかもしれない(笑)。というのは冗談で、上司や先輩が話していることの共感できるポイントを探すのは大切かな。相手が喜ぶ話や、好きなものを覚えておくと相手もこちらの話を親身になって聞いてくれるようになる気がします。自分の好きなものや話したことを覚えてくれていると、誰だって嬉しいじゃないですか。会話で知らない単語が出てきたら、次に会うときまでに調べておいてその会話を自分から振る、みたいなことはよくやってます。
——まさに今大ブレイク中ですが、心境の変化はありますか。
戸塚さん:20代の頃から趣味や好きなものが一緒なので、遊び方が変わってないんですよね。もともと趣味にお金と時間をずっと費やしているから、暮らしの変化もあまり感じていないんです。将来は憧れの所ジョージさんのようになれるように、仕事もしっかり頑張りたいですね。
ミュージカル『グラウンドホッグ・デー』
脚本:ダニー・ルービン
音楽・歌詞:ティム・ミンチン
演出:福田雄一
翻訳・訳詞:福田響志
出演:桐山照史、咲妃みゆ、戸塚純貴、豊原江理佳、川久保拓司ほか
撮影/玉村敬太(TABUN) スタイリスト/森大海 ヘアメイク/小田桐由加里 取材・文/高田真莉絵