日本女性の二人に一人が90歳まで生きる時代。漠然とした老後のお金の不安を解消すべく、自分に必要な老後資金がわかるプロ直伝のワークシートからライフスタイル別に徹底検証! 今回は夫婦と子どもの3人暮らしのCさんの場合をモデルに、100歳まで生きる前提での老後資金を試算。
ファイナンシャルプランナー
井戸美枝さん
CFP®、社会保険労務士。年金問題などのわかりやすい解説が人気。近著に『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください! 増補改訂版』
35歳・正社員・夫と子どもと 3人暮らしのCさんの支出とライフプラン
DATA
Cさん 35歳 正社員
年収 350万円
現在の貯金額 400万円
(60歳で退職後、 再雇用で契約社員 年収200万円)
夫 37歳 正社員
年収 500万円
現在の貯金額 500万円
(60歳で退職後、 再雇用で契約社員 年収300万円)
35歳の家計は出産後、住宅購入や子どもの教育費の積み立てのため貯蓄率高め。40歳からは新たに子ども関係費を支出に組み込んでいる。「子どもの就学前は貯蓄率17%以上をキープして400万円程度の教育費を準備できるのが理想なので◎」(井戸さん)
【Cさんのライフプラン】
35歳 出産★
out 10万円
車を購入
out375万円
↓
40歳 一戸建てを購入
out 5000万円
住宅ローン
頭金1000万円 住宅ローン月18.4万円×20年
20年固定金利1%
犬を飼う★
out 飼育費 。
年34万円×約13年 犬の寿命 10〜13年
子どもの教育費★
out 約1300万円(中学から大学まで私立)
↓
58歳 《夫》定年退職・再雇用
in 夫の退職金1203万円
年収300万円にダウン
↓
60歳 《Cさん》定年退職・再雇用
in Cさんの退職金1203万円
年収200万円にダウン
↓
63歳 《夫》退職・年金受給開始
in 夫の厚生年金+基礎年金 =年額191万円
↓
65歳 《Cさん》退職・年金受給開始
in Cさんの厚生年金+基礎年金 =年額156万円
↓
100歳
今後いくらかかる? ライフイベント費用の相場
上記のCさんのライフプランに登場する「出産」「犬を飼う」「子どもの教育」(★印)について、かかる費用の目安を解説!
《出産にかかるお金》
自然分娩の場合 全国平均:46万217円
(差額室料は含まれない平均金額)
出産育児一時金42万円がもらえるので、自己負担額はおよそ10万円程度
自然分娩の場合、健康保険が適用されず出産費用は全部自己負担だが、出産育児一時金や妊婦健康診査費用助成など公的補助が充実しており、自己負担額は差額ベッド代など10万円程度。帝王切開の場合は、健康保険適用。
出典:厚生労働省「第136回社会保障審議会医療保険部会資料1-2」 出産育児一時金について(令和2年12月2日)
《子どもの教育にかかるお金》
公立 | 私立 | |
幼稚園 | 64万9088円 | 158万4777円 |
小学校 | 192万6809円 | 959万2145円 |
中学校 | 146万2113円 | 421万7172円 |
高校 | 137万2072円 | 290万4230円 |
合計 | 541万82円 | 1829万8324円 |
大学 | 国公立大学 | 私大文系 | 私大理系 |
491.6万円 | 658.7万円 | 820.7万円 |
幼稚園~大学まですべて公立でも1人1000万円以上は教育費がかかる試算に。できるだけ早くから長期ビジョンで進学を見据えた準備が必要
出典:文部科学省「子供の学習費調査(平成30年度)」、 日本政策金融公庫「教育費負担の実態調査結果(令和2年度)」
《ペットにかかるお金》
年間費用平均
犬 平均:34万円
猫 平均:16万円
最大の支出項目は、犬猫ともに「フード・おやつ」で犬約6.5万円、猫約4.3万円。次いで「ケガや病気の治療費」で犬約6万円、猫約3.2万円。そのほかにもトリミング料やグッズ、洋服代などかけようと思えば増えていく項目が多いので注意。
出典:アニコム損保「ペットにかける年間支出調査 2020」
Cさん世帯の老後に必要なお金と貯蓄目標は?
プロ直伝のワークシートにしたがって、35歳の今の段階で、老後に向けて現役時代に貯めるべきお金(必要総額=貯蓄目標)と、実際にCさんがこのライフプランを歩んだ場合、65歳の完全退職の段顔で、老後に必要なお金が足りているのかをシミュレーション!
STEP1 老後の生活費を見積もる
現在の月々の支出35万円×0.7×12ヶ月=老後の生活費(年)294万円
↓
STEP2 公的年金で不足する額を知る
老後の生活費(年)294万円−年金見込額(年)347万円(Cさん 厚生年金+基礎年金156万円+夫 厚生年金+基礎年金191万円)×退職後に生きる年数35年
↓
STEP3・4 老後100歳までの不足生活費を合計し、現役時代に貯めるべき額を計算する
老後の生活費赤字予想額 不足なし+医療費・介護費(2人)1660万円+特別支出7547万円−現在の総資産900万円
↓
=35歳時点での必要総額8307万円(うち老後資金1660万円)
もし、このライフプランを歩んだ場合…
65歳時点での総資産1156万円+Cさんと夫の退職金2406万円=65歳時点での貯蓄達成額3562万円
結論:このままで、教育費も老後も心配ない
35歳の必要総額は、特別支出にライフイベント費(出産、車、住宅、教育、ペット)を考慮した金額。ただし想定外の子ども関連の出費が積み重なることも。Cさんの場合、夫婦とも厚生年金加入なので年金で老後の生活費がまかなえます。
ファイナンシャルプランナー井戸さんからのアドバイス
■子どもが生まれたら長期で教育費の積み立て資金作りをする
子育ては教育費だけではなく、家族旅行費や大学進学時に仕送りが発生するなど何かと支出が増えるもの。出産後から大学までを見据えて、収入は厳しく支出は多めに見積もり、長期プランを立てて。
■夫婦ともに会社員の場合は老後にゆとりがある
会社員は国民年金と厚生年金の2階建てで年金がもらえ、特にCさん夫婦の場合は65歳まで再雇用で働いているので、世帯年金受給見込額が月約29万円に。フルタイム共働きは最強の選択肢といえます。
■ペットは飼育費用を考慮に入れる
ペットはフード代のほかにも飼育費用が意外とかかるんです。人と違い動物は病気になったときの保険適用がないためペット保険に加入する人も。固定支出が多いので飼う前に一度試算するのを忘れずに。
■夫の年金で 生活できる場合、妻は繰り下げ受給しても
65歳よりも年金の受給を遅らせることを「繰り下げ受給」といいます。月単位で申請でき、上限の70歳まで繰り下げると42%増額に。妻のほうが長生きする場合が多いので、世帯内で相談しよいかたちの選択を。
監修/井戸美枝 イラスト/3rdeye 取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2022年9月号掲載