日本女性の二人に一人が90歳まで生きる時代。漠然とした老後のお金の不安を解消すべく、自分に必要な老後資金がわかるプロ直伝のワークシートからライフスタイル別に徹底検証! 今回は夫婦ふたり暮らしのBさんをモデルケースに、100歳まで生きる前提での老後資金を試算。

ファイナンシャルプランナー
井戸美枝さん
CFP®、社会保険労務士。年金問題などのわかりやすい解説が人気。近著に『一般論はもういいので、私の老後のお金「答え」をください! 増補改訂版』
35歳・フリーランス・夫とふたり暮らしのBさんの支出とライフプラン

DATA
Bさん 35歳
フリーランス 年収 350万円
現在の貯金額 400万円
(65歳まで働く)
夫 35歳
正社員 年収 450万円
現在の貯金額 400万円
(60歳で退職後、 再雇用で契約社員 年収300万円)

35歳の家計は、結婚後に車・マンション購入に向け貯蓄モード。40歳からは住宅ローンを返済しながら貯蓄を老後だけでなく旅行にも使う予定。「夫婦ふたり暮らしでは世帯手取り収入の22%の貯蓄率が理想。この家計収支なら旅行も可能です」(井戸さん)

【Bさんのライフプラン】
35歳 結婚★
out180万円
↓
37歳 車を購入★
out EV車 330万円
↓
40歳 マンションを購入★
out 5000万円
住宅ローン
頭金500万円
住宅ローン月20.6万円×20年
20年固定金利1%
旅行
out 国内20万円×5回
out 海外50万円×5回
↓
60歳 《夫》定年退職・再雇用
in夫の退職金1203万円
年収300万円にダウン
↓
65歳 《Bさん・夫》退職・年金受給開始
in Bさんの基礎年金=年額78万円
in 夫の厚生年金+基礎年金=年額180万円
↓
100歳
今後いくらかかる? ライフイベント費用の相場
上記のBさんのライフプランに登場する「結婚」「車購入」と「マンション購入」(★印)について、かかる費用の目安を解説!
《結婚にかかるお金》
挙式披露宴あり 平均:356.8万円
(結納からリング購入、新婚旅行まで含めて)
ご祝儀を差し引くと自己負担額はおよそ180万円程度
費用の内訳で最も大きな割合を占めるのは、挙式、披露宴・パーティの総額292.3万円。最近は、国内や海外ウエディングのほかにもミニマム婚やリモート婚など、結婚スタイルが多様になりお金の面でも選択肢は幅広い。
出典:ゼクシィ 結婚トレンド調査2021調べ
《車購入にかかるお金》
国産新車 平均:375万449円
【補助金や減税があるEV車なら】たとえば…日産リーフe+G(2WD)メーカー希望小売価格480万5900円 東京在住者が購入した場合、補助金や減税で149万8500円優遇され330万7400円に
・さらにかかるお金
自動車税・自動車保険・車検・駐車場代・ガソリン代
→年間約43万円
EV車はガソリン車に比べて車体価格が高く維持費が安い傾向があるが、補助金や減税も考慮に入れ賢く選びたい。
出典:総務省統計局ホームページ、NISSANホームページ(2022年7月4日時点)
《マンション購入にかかるお金》
分譲マンション購入額 平均:4639万円
・さらにかかるお金
初期費用・修繕積立費・固定資産税
物件の代金に加えて、購入時に住宅ローンの手数料や登記費用、修繕積立基金など初期費用が物件価格の約1割。さらに住宅ローンとは別に管理費や修繕積立金が毎月、固定資産税が毎年かかる。引っ越し代を含めて様々な支出が予想されるため、予算を確保しておくことが大切。
出典:国土交通省令和2年度住宅市場動向調査書
Bさん世帯の老後に必要なお金と貯蓄目標は?
プロ直伝のワークシートにしたがって、35歳の今の段階で、老後に向けて現役時代に貯めるべきお金の見積もりと、実際にBさんがこのライフプランを歩んだ場合、65歳の完全退職の段顔で、老後に必要なお金が足りているのかをシミュレーション!
STEP1 老後の生活費を見積もる
現在の月々の支出35万円×0.7×12ヶ月=老後の生活費(年)294万円
↓
STEP2 公的年金で不足する額を知る
老後の生活費(年)294万円−年金見込額(年)258万円(Bさん 基礎年金78万円+夫 厚生年金+基礎年金180万円)×退職後に生きる年数35年
↓
STEP3・4 老後100歳までの不足生活費を合計し、現役時代に貯めるべき額を計算する
老後の生活費赤字予想額1260万円+医療費・介護費(2人)1660万円+特別支出6320万円−現在の総資産800万円
↓
=35歳時点での必要総額8440万円(うち老後資金2120万円)
もし、このライフプランを歩んだ場合…
65歳時点での総資産3187万円+夫の退職金1203万円=65歳時点での貯蓄達成額4930万円
結論:人生を楽しみつつ、余裕のある老後に
35歳の必要総額は、特別支出にライフイベント費(結婚、車、マンション、旅行)を考慮した金額。65歳以降に必要な老後資金はうち2120万円となりかなり上回る見通し。計算上うまくいっても実際には浪費してしまうことも多いので注意。
ファイナンシャルプランナー井戸さんからのアドバイス
■住宅を購入する場合、60歳までに住宅ローンの返済が終わると安心
Bさんの夫と同じく、60歳を過ぎると多くの人は収入が減るので、それまでに住宅ローンの返済が終わっていると気が楽です。20年間金利が変わらない固定金利住宅ローンを利用するのがおすすめ。
■ふたり暮らしは、経済的に余裕があるはずだが、浪費も多い
共働きで子どもがいないと貯蓄しやすいと思いがちですが、お互い浪費してしまうケースも。メリハリのある収支を目指すには、お小遣い制にして二人の合計を手取り月収の10%以内に収めると理想的。
■どちらか一方の収入で生活できる家計にすると貯蓄しやすい
一方の収入で家計をやりくりし、もう一方の収入を貯蓄に回せると、お金が管理しやすく計画的に貯められます。それが難しくてもお互いの収入と貯蓄額を共有しておくと様々なリスクに対応可能。
■夫に先立たれた場合、妻には遺族厚生年金が上乗せされる
夫が厚生年金に加入しているので、万一のときはBさんの基礎年金に遺族厚生年金(夫の厚生年金の75%の金額)が上乗せされます。女性のほうが寿命が長いので、既婚者であっても一人の老後も想定を。
監修/井戸美枝 イラスト/3rdeye 取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2022年9月号掲載