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男性二人で考える「仕事と家庭を巡るモヤモヤ」【清田隆之×武田砂鉄対談〈後編〉】

出産と育児を考える上で、必ず出てくる“仕事との両立”問題。そもそも“女性は家庭と仕事を両立させるべき”という圧はなぜ生じている? 清田隆之さんと武田砂鉄さん、二人の男性陣をお迎えし、多角的に考えてみた。
後編では、子育ての時短について討論。

清田隆之×武田砂鉄対談〈前編〉なぜ女性ばかりが仕事と育児の両立を考えなくてはいけないのか?

清田隆之×武田砂鉄と考える 仕事や家庭の「時短」に向き合う

すべてを詰め込み、こなす社会のあり方を再考してみても?

清田 子育て世代に限らず全世代で“タスク詰め込み”ムードはあるかもしれないですね。僕は大学生に話を聞く機会も多いですが、彼らも勉強して、バイトして、友達つくって、SNSで発信して、就活の根回しも早めに……って全部こなしている。“より成長する”“より高みを目指す”という新自由主義の影響もあり、過剰なto doを背負わされている。その結果「両立できてますか?」「こなせてますか?」という社会からの圧にこたえられる“スーパー時短ハイスぺ”みたいな存在がよしとされるという。恐ろしい。そんなこと、体力や資源に恵まれた、一部の人しかクリアできないですよ。脱落する人がいて当たり前だと思います。

武田 となるともはや全員が当事者ですから。今の方向での“両立”や“時短”が持続可能なのか、みんなで考える必要がある。ところで僕の本の担当編集者に子育て中の女性がいるのですが、彼女は保育園のお迎えの途中に、コンビニで缶チューハイを一本買い、園に着くまでに飲むと、いい息抜きになると。これは極端にしても、完璧な両立方法とか時短術ではなく、自分なりに見つけた“ほっこりできるハック”が必要なのではないかと

清田 ほっこりハック、すごくいいですね。“イクメン”推しもやりたければやればいいけど、“ゆるママ”もどんどん推奨してほしい。僕にはとても尊敬している女友達がいるんですが、仲間たちと彼女の家へ遊びに行くと洗濯物がクッタクタで。「うちは洗濯乾燥機にぶち込んでそのままだよ」「いいじゃんそれで」って。本当にそのとおりだよなって。「ずぼらですみません」とヘンに世の中の規範に合わせてへりくだったりもしない、そのバランス感覚にエンパワメントされました。

清田隆之×武田砂鉄と考える 「ずぼら」が持つ効用

「完璧さ」や「まとめ」に取り込まれないために、我々は何を意識する?

武田 たしかに。たとえばロールモデルとして紹介されている人の家の水回りがぐっちゃぐちゃとか。これが“男性の家事”という文脈だと笑えるエピソードになり女性だと「母親として大丈夫?」とたたかれがち、という雰囲気があるじゃないですか。でも、性別や年齢に関係なく、水回りの掃除が苦手な人っているでしょう。そういう部分を自然に見せられる空気ができ上がるといいなと思いますよね。あとは清田さんに聞きたいんですが、子どもの寝顔って、そんなにすべてを吹き飛ばす幸せ感があるんですか? よく、しんどい育児を乗り越えた人が申し送りの美談のように例に出すでしょう? 個人の実感は尊重するけれどそれで、他人の育児を動かそう、頑張らせようとしがちだなって。

清田 うちは双子で、まだ夜泣きがある。それをなだめて寝静まったときの感覚は、幸せというより安堵や解放感に近いかも(笑)。

武田 なるほど。こういう話をもっとみんなでしていけばいいですよね。清田さんもよく提唱してますよね。「酒じゃなくて茶を飲もう」と。男性はあまりやらないけど、グダグダした茶飲み話をもっとしたほうがいい。

清田 男性の場合だと“おしゃべり会”としてタスクを設定しないと、人が集まりづらいですね。最後にまとめをつくらないと納得しないケースも多い。

武田 まとめもいらないし、パワポも禁止(笑)。今日の対談も、結論めいたことは特に出ないわけですが、それでいいわけで。結論A、B、みたいなものを持った人たちが、お互いを打ち負かすのではなく、「いやもう、『両立』って本当に難しい問題だ」「この世知辛い社会に対してどうやってく?」と。当事者として捉えながら、ゆるやかな知恵を出し合う。全員にこういう感覚が必要なのではないかと思っています。

清田隆之

清田隆之「子育てについて調べると、僕も『やれてますか』、『両立してますか』の圧に押しつぶされそうに…」

清田隆之

文筆家・桃山商事代表

清田隆之


1980年生まれ。東京都出身。「桃山商事」代表。これまで1200人以上の恋バナに耳を傾け、恋愛やジェンダーに関する書籍・コラムを執筆。著書に、『よかれと思ってやったのに 男たちの「失敗学」入門』(双葉文庫)など。

武田砂鉄

ライター・ラジオパーソナリティ

武田砂鉄


1982年生まれ。東京都出身。出版社勤務ののち、’14年からフリーに。TBSラジオ『武田砂鉄のプレ金ナイト』のパーソナリティでもおなじみ。著書『マチズモを削り取れ』(集英社文庫)が好評発売中。

『マチズモを削り取れ』

撮影/峠 雄三 取材・原文/石井絵里 撮影協力/AWABEES ※BAILA2024年8・9月合併号掲載

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