
市川紗椰さんがアートを紹介する連載。第36回は角川武蔵野ミュージアムの「『昭和100年展』ほか」を訪問しました。
今月の展覧会は…「『昭和100年展』ほか」@角川武蔵野ミュージアム
“活字本とセット美術のアナログ世界と、先端のデジタルアートを同時に堪能!”

市川紗椰が語る 「『昭和100年展』ほか」
東京郊外の東所沢の街にある、隈研吾氏デザイン監修の、巨岩のような建物。2020年の開館以来、NHK紅白歌合戦でYOASOBIがパフォーマンスをした「本棚劇場」や、ダリのシュルレアリスム絵画をピンク・フロイドの音楽で楽しむ、というコアな企画のイマーシブシアターなどの噂を聞きつけ、ずっと気になっていました。というわけで、図書館・美術館・博物館が融合したカルチャースポット「角川武蔵野ミュージアム」へ!
5つのフロアに分かれた館内は見どころいっぱい。まずはミュージアム館長であるジャーナリストの池上彰さんと、館のアドバイザリーボードの作家・荒俣宏さんが監修した企画展「昭和100年展」へ。映画『ALWAYS 三丁目の夕日』の美術を手がけた上條安里さんによって、リアルな「昭和レトロの一軒家」が再現されています。玄関から「おじゃまします」と入ると、実際に使われていた本物も交じる生活道具に見入って時間を忘れそう。同じフロアには「ブックストリート」と呼ばれる本の街が。2.5万冊の本が9つのテーマ別に自由な発想で並び、知のジャングルのよう。絵本の隣に科学書が、百科事典の上に漫画が積み上がり、一冊読み始めたら次々ハマって帰れなくなるはず。データではなく、触れられる”実物”が圧倒的な量で目の前にあるのが新鮮でした。一方で、高さ8mまでそびえる書棚の「本棚劇場」は、プロジェクションマッピングの舞台に。「体感型デジタルアート劇場」では、浮世絵が360度の視界でアニメのように動きまくる!
ここは、モノに触れて知るアナログの楽しさと、先端技術でバーチャルに体験するデジタルの楽しさを両方味わえる場所。アトラクションを楽しむように、「プチ万博」気分で一日かけて行くのがおすすめ。体力と気力充分で臨むべし(笑)です!
「本棚劇場」をはじめ、映えるスポットが目白押し。でも、“掘って”みると写真を撮り忘れるほど奥深かった!

角川武蔵野ミュージアムの象徴でもある「本棚劇場」にて。そこにつながる「ブックストリート」の本棚には、50人の選書スタッフが一人ひとりテーマに沿って500冊を選書し、合計約2.5万冊の本が! 様々な観点で選ばれミックスされた本は、背表紙を眺めているだけでもワクワクする

「昭和100年展」の展示スペースには、昭和40年頃にあった一軒家を丸ごと再現したセットが。一部は中に入っての撮影が可能になっています。縁側に腰かけて、レトロな下町情緒を楽しむことも

昭和の学生の勉強部屋。この内部は特別に許可を得て撮影しています

「ブックストリート」にて。「世界を読み解くための9つの文脈」をもとに選書された2.5万冊の本が、ずらりと並ぶ書棚は圧巻。ポップもにぎやか

「本棚劇場」では決められた時間ごとにプロジェクションマッピングを上映。「昭和100年展」にちなみ、100年前から現在の映像を池上彰館長のナレーションとともに

「令和のポケットには、昭和が全部入っている。」のコピーの下には、現在のスマートフォンの機能に含まれている地図や百科事典などの昭和のアイテムが勢ぞろい

「体感型デジタルアート劇場 浮世絵 RE:BORN」の入り口にはこんな浮世絵フォトスポットが。これも“アナログ”で面白い(笑)

約30分間の上映で、浮世絵と日本画の名作が次から次へと現れるイマーシブ体験。ハンモックやクッションなどが設置され、思い思いの体勢で楽しむことができます
トビラの奥で聞いてみた 市川紗椰×角川武蔵野ミュージアム ゼネラルプロデューサー 宮下俊さん
展示室のトビラの奥で、教えてくれたのは… 角川武蔵野ミュージアム ゼネラルプロデューサー 宮下俊さん
市川 「昭和100年展」では、昭和40年代の一軒家だけでなく街角の塀や看板も再現されているんですね。まるで映画のセットにいるみたいです。
宮下 ここは角川大映スタジオの美術スタッフが手がけています。だからそう感じるのは正解です(笑)。
市川 壁のポスターには池上さん、荒俣さんの写真が昔風にプリントされていたり、表札が「池上」だったり、芸が細かいですね。レトロな模様入りガラスや岡本太郎の「太陽の塔」の壁かけオブジェなど、当時のディテールが素敵!
宮下 家のセットにはスタッフが再現したものと実際の古道具や民家の建具が交じっています。実は私の子ども時代の切手コレクションもこっそり置いてあります。昭和に少年時代を過ごした私たちの世代には、懐かしく落ち着く家です。
市川 親子や3 世代で訪れても楽しそう。細部までじっくり見てしまいますね。
宮下 はい。展示の様々なところにはメッセージも隠されています。特に私たちが考えたいのは「戦争と平和」。角川書店創業者の角川源義(げんよし)は「第二次世界大戦の敗北は(中略)私たちの若い文化力の敗退であった」と角川文庫発刊に際して言葉を残しています。文化と知識を深めることで、私たちはこの先、戦争を起こそうという力に立ち向かうことができる。この考えは施設全体のテーマといえます。
市川 なるほど。知識を凝縮したようなたくさんの本棚も、その象徴のようですね。
訪れたのは…角川武蔵野ミュージアム

【展覧会DATA】「昭和100年展」ほか
「昭和100年展」
〜12/7
角川武蔵野ミュージアム4階
エディット アンド アートギャラリー
「体感型デジタルアート劇場 浮世絵 RE:BORN」
〜2026年1/18
角川武蔵野ミュージアム1階 グランドギャラリー
埼玉県所沢市東所沢和田3の31の3
10時〜18時(入館は閉館の30分前まで)
休館日/火曜(12/30は臨時開館)
入館料/KCM 1DAY パスポート(浮世絵展・本棚劇場含む) 土日一般¥3700ほか
会場内の写真撮影は一部を除き可能
https://kadcul.com
トップス¥88000(シー ニューヨーク)・パンツ¥35200(バウム・ウンド・ヘルガーデン)/S&T 中に着たニット¥20900・靴¥72820/ティースクエア プレスルーム(テラ) バッグ¥188100(ザンケッティ)・イヤリング¥20900・リング¥28600(ニナ・エ・ジュール)/ショールーム ロイト
撮影/柴田フミコ ヘア&メイク/中村未幸 スタイリスト/辻村真理 モデル/市川紗椰 取材・原文/久保田梓美 ※BAILA2025年11月号掲載


























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