「ハラスメントや暴言とまではいかなくても、自分の発言が人にちょっと嫌な思いをさせていないか心配…」と悩むバイラ世代が多数。多様性を認め合える社会の一員として、“もやっと発言”を見直そう。20代代表としてラランド・サーヤさん、30代代表として犬山紙子さんの世代間トークも必見!
私たち、ちゃんとアップデートできてる!?
20代の頃から今に至るまでの約10年で社会の大きな変化を経験してきた30代。発言に気をつけている“つもり”で終わらないために、できることを一緒に考えよう!
30代の本音・20代の本音 お互いどう思ってる?
30代のエッセイスト・犬山紙子さんと、20代で会社員と芸人の二足のわらじを履くサーヤさんの世代間トーク。私たちが気にしている“もやっと発言”、二人はどう感じて、どう対応している?
「この人内側から変わってないなと思う人に対しては壁を作っちゃいますね」(サーヤさん)
「『今のよくなかったね、ほんとごめん!』のちょっとしたひと言で変われるはず」(犬山紙子さん)
カットソー¥16500・ワンピース¥41800/ナギサ イヤリング¥3850/エト セトラ(サーヤさん)
人を傷つけかねない昔のノリが反射的に出たとき、心配になってしまう
サーヤ 私、この特集のお話をいただいたときにびっくりしたんです。もやっと「させられた」じゃなくて「させたかもしれない」っていう30代の方たちの気持ちに。加害者の意識なのかって。変わらない人もすごくたくさんいるなかで、それでも世の中がどんどん変わっていくのは、こうやって時代の流れをくんでくれる年上の方たちがいるからですよね。
犬山 「負の連鎖を断ち切らなきゃ!」と思ってるんじゃないかな。自分の中ではアップデートしているつもりでも、昔の考え方のクセが条件反射でつい出ちゃうことがあるんですよね。そういうときに「もしかして、もやっとさせたかな?」と心配になるのではないかと。
サーヤ 30代の方にも色々な考え方の人がいますけど、発言に注意している人は多いなと感じます。でも、「この人は勉強してアップデートしているな」「この人は炎上したくないだけで内側から変わっているわけではないな」っていうの、わかっちゃうんですよね。
犬山 内側から変わっていない人が、恋愛至上主義的なトークやルッキズム、エイジズムみたいな古い価値観の話をしたときに、どう制止できるか。30代は試されているなと思います。これを受け継がせないためにどうすれば……と。
サーヤ 犬山さんのような方が増えてほしいです……。お笑いって見た目や年齢で笑いを取ることが多くて困るんですよね(笑)。「このボケはよくないな」と思ったら笑わないようにしたり、「あ〜めちゃくちゃ古いっすね」ってそこを刺しに行って笑いに変えたりするしかない。
犬山 そんな負荷の高いことさせてすまん!って感じですよ、こっちは。若いという理由だけでそういう役割を任せてはいけない。年下だ!って意識を持ちすぎると、それはそれでプレッシャーだと思うんです。サーヤさんもZ世代を勝手に代表させられたり、するでしょう?
サーヤ しますします(笑)。でも、確かにそうなんですよね。今って「属性で決めつけるのはアウトだよ」というアップデートの最中だと思うので。
犬山 たとえば年上の女性に、もやっとさせられたらどうします?
サーヤ 壁を作って防御しちゃいますね。
犬山 そうですよね……。私、自分でも強めに気をつけていることがあって。もし「もやっとさせてる?」と不安になったときは、その場ですぐ謝るようにするんです。「今のよくなかったね、ほんとごめん!」って。それは相手の年齢に関係なくではありますけど、年下には特に。
サーヤ あっ、それありがたいかも。一度もやっとさせられると「この人となにげない話はしないでおこう」ってかまえて接してしまう。でも、そう言ってもらえたら、警戒が解けると思います。
自分とは違う考え方を知り解像度を上げていけばもやっとさせずにすむはず
サーヤ 昔の考え方を押しつけてくる人って、わからないものが怖いのかな?とも思うんですよね。だからまずは知ってほしい。ジェンダーのこと、色々な働き方があること、好きなものも悩みも生き方も多様なこと。そして「そういう人がいるらしい」で終わらずに、実情を知ってほしい。さらに、「自分の周りにもきっといるだろう」という気持ちで人と接してほしいですね。
犬山 解像度を上げることが大切ですよね。たとえば「ゲイ・バイセクシュアルの男性の自殺未遂リスクは異性愛男性の約6倍」と知っていたら、想像力がふくらみますし、配慮できるようになりますよね。自分と違う生き方や考え方、立場の人のことをしっかり学んでいくことが、私たち30代にはとても大事だなと思います。
サーヤさん(ラランド)
1995年生まれ。漫才コンビ・ラランド。広告代理店で働きながら芸人としても活動、「M-1グランプリ2019」準決勝に出場し話題に。バラエティTV番組「トゲアリトゲナシトゲトゲ」(テレビ朝日系 月曜深夜2時16分〜)レギュラー出演中。
犬山紙子さん
1981年生まれ。イラストエッセイスト。著書に『アドバイスかと思ったら呪いだった。』(ポプラ社)など。児童虐待問題に声を上げるタレントチーム「#こどものいのちはこどものもの」を立ち上げるなど社会問題にも積極的に取り組んでいる。
撮影/押尾健太郎 ヘア&メイク/サイオチアキ〈Lila〉(サーヤさん) スタイリスト/西村茜音(サーヤさん) イラスト/大窪史乃 取材・原文/東 美希 ※BAILA2021年11月号掲載