仕事、恋愛、家族…。社会が変化している今、様々な価値観があることはわかっているけれど、自分のひと言で相手を“もやっ”とさせないために、どんなことに気をつけて会話をすればいいの? ジャーナリストの中野円佳さんにお話しを伺った。
相手が自分と同じ前提を共有しているとは限らないことを踏まえて、想像力を働かせよう!(中野円佳さん)
ジャーナリスト
中野円佳さん
1984年生まれ。フリージャーナリスト。経済産業省「競争戦略としてのダイバーシティ経営の在り方に関する検討会」委員を務めた経験も。著書に『上司の「いじり」が許せない』(講談社)など。
心配になるのはいいこと。気にしている時点でかなり意識は高いと思います
多様化した社会の中で、「余計なこと言っちゃった!?」と、心配することが増えたバイラ世代も多いはず。一体どのような時代背景から、このような心配が増えたのだろう。
「急に価値観が多様化したわけではなく、もともと様々な人がいたんですよね。それが最近急速に可視化されたことにより、いわゆる“典型的な選択”以外をする人が増えてきた。均質なライフコースが想定されていた時代に比べると、話題選びに慎重になる人が増えてきたのだと感じます。“もやっとさせたかな”と心配するのはいいこと。多様性にきちんと配慮できているということですから」
難しくなった話題選び。中野さんは「そもそもプライベートに踏み込まなくても雑談はできる」と話す。
「雑談をしにくくなったという声も時折聞きますが、むしろ、プライベートに土足で踏み込んでいいと思っているのなら、今の多様性ある社会では改めるべきだと思っています。会社の同僚なら仕事の話、趣味の友達なら趣味の話、相手と自分が属するコミュニティでの共通の話題を選べばいいだけですよ」
では、話したい話題がある場合、そしてそれがセンシティブである可能性がある場合、どうすれば?
「相手に質問するのではなく、まずは自分の話からするのがいいと思います。自己開示ですね。あとは、“こういう話って聞いてもいい? 嫌だったらやめておくけど”とはっきり聞いてしまうのもひとつの手です。また、業務上の理由でライフコース等について聞く必要がある場合も出てくると思います。そのときは、なぜ相手が答えなければならないのかの理由を明確にして、納得してもらうことが大切です」
では、誰かと話しているとき、どうすれば、相手をもやっとさせずにすむのか。最も大事なものは“想像力”なのだそう。
「まず、自分と前提が同じであると思い込まないこと。人生には多様な選択肢があり、相手が自分と同じ価値観を持っているとは限りません。そして、相手をジャッジしないこと。“私はこう思うよ”という感想を述べるのはいいけれど、他人のいい悪いの判断をするのはダメ。もちろん、見た目に対するジャッジもNG。世の中には様々な人がいて様々な人生がある。そこに想像力を働かせながら、会話できれば大丈夫だと思います」
取材・原文/東 美希 ※BAILA2021年11月号掲載