キャリアや人生を見直した結果「地方移住」を決める人が増えています。自分らしいワークライフバランスを移住でかなえた女性たちの暮らしぶりをレポート。今回は、島根に移住した西田優花さんにお話しを聞きました。
何度も訪れるうちに人にも土地にも惚れ込んだ
自営業・喫茶店運営、企画・ブランディング支援
西田優花さん(39歳)
TOKYO →→ SHIMANE
20代 飲食業界やスタートアップを経て独学しWEBデザインに従事
28歳 結婚
31歳 情報系IT企業に入社。携わった地域支援事業で島根に数回訪れる
35歳 ドイツに留学。コロナ禍のため1年で帰国
37歳【移住決意】起業
38歳 島根県に移住
西田さんの移住ポイント
☑︎ 準備期間にマニュアル免許を取得
「それまで持っていなかった自動車運転免許を、島根に通うようになり取得。MT車の多い軽トラックも運転できるので、近所で荷物を運ぶといった場面でも対応可能に」
☑︎ 移住支援スタッフとしても活動
「’23年には、島根県大田市への移住体験プログラム『遊ぶ広報』にも参画。移住経験者の一人として応募者の選考や参加者のサポートをお手伝いしました」
「地域文化の発信や継承に貢献したい」その思いが「仕事」から自分の生活に
「以前勤めていた会社の地域支援プロジェクトで、島根県を訪問するたびに、世界遺産の石見銀山エリアにある温泉津(ゆのつ)温泉に通っていたんです。そのうちに友人ができ、春夏秋冬それぞれ2週間ずつ滞在する生活を1年続けたところ、波長の合う仲間が増え、さらには、ロールモデルにしたい移住の先輩も見つかり、この土地に愛着が湧いて離れられなくなりました」
ミクストメディアの造形作家としても活動する西田さん。土や石などの天然材料が、周辺で豊富に採取できることも移住決断の大きな後押しになったそう。現在の仕事の中心は、日本各地の魅力あるものを継承・伝承し広げるための企画やブランディング事業。
「この土地に根ざしたことで、地域文化に対する解像度が上がり、会社員のときよりも対象のことを深く理解したブランディングができるようになったと感じています」
また、東京からともに移住してきた夫と「本と喫茶のゲンショウシャ」という喫茶店の運営も。お店では、スパイスカレーや、里山で採れた野草茶を提供している。
「お店のお皿は地元の職人さんと共作。野草茶は農家のおばあさんの知恵を借りて製造。この地には、面白いことをしている人が多く、移住者も年々増えていて活気がある。おかげで、やりたいことが次々と湧いてきて、東京にいたときよりも忙しいです(笑)。そんな私のリフレッシュ方法は、伝統芸能『石見神楽』の団体『温泉津舞子連中』の活動。毎週の練習には老若男女が集まり、誇りを持って舞に向き合う姿にすっかり惚れ込んでいます。『石見神楽』がこの地にある限り、私もここに居続けたいですね」
ライフワークの作品制作に使用する石や土を採取
伝統芸能「石見神楽」を舞う西田さん。毎週土曜日は、地元の人とともに、舞の練習にはげむ
風光明媚で穏やかな時間が流れる温泉津
取材・原文/海渡理恵 ※BAILA2024年4月号掲載