生まれ持った無二のスタイル、バレエで培った精神と表現力。12歳でのデビューながら、モデルとして花開くまでに時間はかからなかった。以来、トップモデルとして輝かしい道のりを歩んできた松島花が、20年という歳月を率直な言葉で振り返る。
Q1.20周年を迎えた、現在の率直な気持ちは?
A「飽きっぽい私が20年も続けられるなんて、自分でも想像していませんでした。実は20周年を待ち望んで、特別な想いで迎えたわけじゃなくて、むしろ忘れていたくらいで(笑)。昨年末のふとした瞬間に『来年(2021年)、私、32歳か。……え?ということは!』といった流れで気づいたんです」
Q2.活動する中で転機となった印象的な瞬間とは?
A「学業と両立しながらモデル活動をしていて、漠然とですが高校を卒業したら大学に進学して、就職するんだろうなと思っていました。それが17歳のときに、資生堂の広告撮影を経験したことによって大きく意識が変わっていったんです。シャンプーのスチール撮影のため、躍動感のある髪の動きを表現するのに、私がジャンプをした瞬間をカメラに収めようと取り組んでいました。毛先までコントロールするのは至難の業で、私はたぶん300回くらいジャンプをしたはず。たった一枚の写真のために、スタッフさんたちが一丸となって情熱を注いでいる光景を目の当たりにして、自然と私も『次は体をひねって飛んでみよう』と考えて工夫している自分に出会った。ものづくりって面白いと、感覚が開花した出来事でした。今まで感じていた楽しさとは違っていて、この楽しさを味わえるならずっとやっていきたい。できる限り長く携わっていきたいと、モデルに向き合う心が変わったんです」
Q3.20年という長い道のりの中で、歯がゆい思いをすることは
A「海外のコレクションに挑戦しなかったことですね。13歳のときに、東京コレクションでランウェイを歩いたのをきっかけに、ショーモデルに憧れるようになりました。ところが当時は、身長175㎝以上じゃないとオーディションを受ける資格もない時代。173㎝の私が挑んでも意味がないとあきらめてしまったけど、表現力を磨くチャンスだったかもしれないなって。その代わりに日本で求められる仕事を精いっぱいやっていこうと舵を切りました。結果的には、今の私につながっていく出発点になっています。最近では、海外のオーディションでもインスタのフォロワー数を記入する欄があったり、ライフスタイルや個性に重きが置かれている。絶対的だった身長がマストではない時代です。同じようにモデルのあり方は、この20年で大きく変化していて、私がデビューした頃はモデルというジャンルが確立していたけど、今はモデルがキャリアの通過点になっている。正直、歯がゆさはあります。だからこそ、あらためてモデルにしかできない表現を突き詰めていきたい」
Q4.キャリアを重ねてもなお、新鮮味を持ち続けられる理由は?
A「新しい自分を見てもらいたいという欲があるし、その努力を続けてきました。20年続けていると、『ルーティンになっているんじゃないか?』と、時折立ち止まって自分を疑うことが必要になります。ポージングや表情にもクセってあるだろうし、無意識のままでは同じような表現をしかねません。スカートの裾をひらひら動かすことだって“いつもの作業”にはしたくない。スタッフさんたちも顔見知りの人が増えて、『久しぶり』の人はいても、『はじめまして』の人と出会う機会は少なくなっています。私をよく知る人にほど、何かしら刺激や新鮮味を感じてもらいたい。新しい表現方法を模索するのは難しくもあるけれど、被写体としていい意味で裏切っていけたら。とはいえ、今でも撮影の前日ってわくわくするんですよ。ベッドに入ってからも、『明日の撮影でこんな表現ができたらいいな〜』とゴロゴロ寝返りを打ちながら、イメージをふくらませる。前日の夜に撮影現場へ来ていく服を選んでいる時点から、すでに仕事がスタートしている感覚なのかもしれません」
Q5.モデルとして、一人の女性として見据えている「これから」とは?
A「モデルとしては、ただ服を美しく見せるマネキンではなく、作品をつくるチームの一員である意識を持っていたいですね。そういうモデルがいてもいいのかなと思いますし、その意識があるとよりいいものを作り出せると信じています。言われるがままではなく、もっとよくしたいという意味で“参加型モデル”でありたいです。私の仕事は、誰かに求められて初めて成立します。自分が表現する、それを誰かが喜んでくれる。その幸せなイコールが続く限りこたえていきます。時代はどんどん変わっているから、松島花としてできること、発信していけることがあれば、“モデル”という枠にとらわれない柔軟さも持ち合わせたい。今は、発信したい内容に合わせて、SNSをはじめ自分一人で発信する場所を持てる時代ですよね。自由にできる世の中なので、自分の考え方さえゆらがなければ、とても生きやすいのかなと思います。私にとって、そのひとつとして保護猫・保護犬の活動があります。これはモデルではなく、一人の人として発信していくもの。あらためて感じるのは、仕事も人生も、私一人では何も成し遂げられません。すべての根本に、優しさや思いやりを伴わせながらこれからを楽しみたいです」
1989年8月5日生まれ。東京都出身。モデルとして数々のファッション誌や広告、CMなどで活躍するほか、女優としてドラマや映画にも出演。オフィシャルインスタグラム@hana_matsushima_official
ジャケット¥385000・デニム¥107800・靴¥143000・ブラウス(参考商品)(すべて予定価格)/セリーヌ ジャパン(セリーヌ バイ エディ・スリマン)
撮影/YUJI TAKEUCHI 〈BALLPARK〉 ヘア&メイク/笹本恭平〈ilumini.〉 スタイリスト/佐藤佳菜子 取材・原文/長嶺葉月 構成/岩鼻早苗〈BAILA〉 ※BAILA2021年7月号掲載