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【震災から11年。東北で未来を見つめるあのひとの仕事 vol.1】保険会社で人びとの『生活を支える』仕事

当たり前の日常が一変した11年前の震災は、東北に生きる女性たちの働き方にも、大きな影響を及ぼしました。あの日、そして現在の彼女たちの仕事とは。vol.1は保険会社で地元の人々の生活を支える前田奈緒さんを取材しました。

前田奈緒さん

東京海上日動火災保険株式会社

前田奈緒さん


仙台自動車営業部 副主任・ 35歳
1986年生まれ、宮城県仙台市出身。現在は自動車保険の営業を担当。楽天イーグルスの大ファン。

「保険の存在意義や使命を実感する大きなきっかけになりました」

東京海上日動火災保険株式会社

想定外のイレギュラーな事態に対応する日々

前田さんが保険会社への就職を決めたのは、多くの女性が生き生きと活躍している社風に魅力を感じたから。そして、「“ちょうどいい都会”で住みやすい、大好きな地元の仙台で働きたい」という強い思いがあったからだった。

「震災を経験したのは入社して2年がたった頃。営業事務の内勤をしていたときでした。仙台市内は多くが停電しましたが、会社がある中心地は電話がつながったので、朝から晩までお客さまや代理店さんからの被害報告を受け付ける無我夢中の日々でしたね」

あれほどの津波被害は前例がなく、会社としてマニュアルもなかった。

「車が流されて見つからない状況でも解約をしていいものか、契約者さまご本人が津波の被害に遭われて連絡がつかない場合は、ご家族と手続きをしていいのか、本来書面で行う解約の手続きを電話で完結していいものか……。イレギュラーな状況ばかりだったので、一つひとつメンバーとマニュアルを作成しながら対応していきました」

当然、前田さんも被災をした一人。

「地下鉄が動いていたので通勤はできましたが、郊外にある実家は電気もガスも止まり、しばらくはろうそくで生活しました。うちは水が出たので、石油ストーブでお湯を沸かして髪を洗ったりも。暮らしに関しては、皆さん誰もが苦労されたと思います」

全国から社員が応援に駆けつけ、保険金の支払業務が夏頃までにほぼ完了。前田さんの担当は外勤の営業に。

「お客さまの生活に直結するものなので、とにかく迅速な対応を心がけました。私たちは保険を提案する側でしたが、その保険が必要とされる場面を目の当たりにしたことで、重要性を肌で感じましたね。ただし地震保険に加入しておらず、電話口で泣いてしまわれるお客さまがいたことも事実。『もっとしっかり保険を提案できていればお役に立てたかも』という後悔は、皆が感じたことでした。震災の経験は、保険の存在意義や使命を実感する、営業としての大きな気づきになりました」

保険は挑戦する人を応援する伴走者だと気づいた

保険の仕事に使命を燃やしていた前田さんのキャリアが転換したのが、地方創生の担当となったこと。東北復興をPRするイベントの企画を任された。

「イベントのノウハウはゼロ。まったく新しい業務に戸惑いはありました。とはいえ保険は人が色々なことに挑戦したり成長していくときのリスクをカバーするもの。地域が元気になれば挑戦しようと思う人も増えますし、ひいてはその伴走者としての保険の役割も重要になっていくと考えたんです」

東京駅周辺で3度のイベントを成功させたことは、大きな自信に。

「自分の中では、3年くらい別の会社に出向した感覚でしたね(笑)。社内にいながらも保険以外の仕事にチャレンジできたことは、すごくいい経験になりました。2020年度には希望を出し、人員不足の支店を支援するために石川県の七尾市に1年間転勤。震災経験をほかの地域の方に知ってもらえる貴重な機会になりました」

挑戦する人を応援する保険会社の前田さん自身も、果敢に挑戦を続ける人。学生時代はバイトやサークル活動をしながら子ども支援のボランティア活動に積極的に携わり、去年は東京オリンピックのボランティアも経験した。

「昔からいろんなことにトライをするタイプかもしれませんね。社内では去年、地方にいながら本店の商品開発やシステム開発などを副業できる制度ができたので、いつか挑戦したいと思っているところ。自分のキャリアアップを目指しながら、10年後も保険を通して仙台の発展に携わっていきたいです」

仕事と震災のヒストリー

22歳 地元・仙台のエリアコースの社員として入社。営業事務(内勤)を担当

2011.3.11

全国から社員が応援に駆けつけた。山形からおにぎりが送られてくるなど、支援が嬉しかったという

全国から社員が応援に駆けつけた。山形からおにぎりが送られてくるなど、支援が嬉しかったという

24歳 営業(外勤)を担当

30歳 東北業務支援部に配属。東北6県をとりまとめるイベントを担当
31歳 丸の内ビルディングでのイベント
32歳 丸の内KITTEでのイベント

東京での復興イベント

東京での復興イベントに向け、前田さんは東北の企業を積極的に巻き込むことに力を入れた

34歳 他地域支援で石川県の七尾支社にて勤務

七尾支社時代の仕事仲間と

七尾支社時代の仕事仲間と

35歳 再び仙台の営業部門に

撮影/misumi 取材・原文/松山 梢  ※BAILA2022年4・5月号掲載

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