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松村沙友理「“30歳までに”の呪いがとけて、今の私を好きと思えるまでのこと」【連載 松村沙友理の大人学】

さゆりかれんと 松村沙友里の大人学

大人の学び直し“リカレント教育”をもじって、松村沙友理さんの大人への一歩を記録する連載「松村沙友理の大人学」。松村さんが30歳を迎えた今、思うことを語ってくれた。

30歳からの可愛いコンサバ学1
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29歳は「30歳までに」の呪いがかかっていた気がする

松村沙友理 29歳は「30歳までに」の呪いがかかっていた気がする

30歳という節目を前にすると女性の心は大きく揺れるらしい。今まで何度か耳にしたことのある噂が「本当である」と実感したのは、まさに29歳を迎えたばかりの頃でした。乃木坂46を卒業して、ずっと止まっていた“自分の時間”が急に動き始めた、あの頃はそこに対する焦りや戸惑いもあったのかな。気づかぬうちに私は「30歳までに」の呪いにかかっていたんです。

振り返ると、そのきっかけは友達のささいなひと言だった気がします。私ね、何かを食べるときに「あむ」と声が出たり、驚いたときに「ガーン」と言ってしまったり、漫画やアニメが好きだからこそ日常生活でも二次元の効果音を発してしまいがちなんです(笑)。そんなクセはもちろん、感情と一緒に手がジタバタ動いてしまうクセも「もうアイドルじゃないし、30歳になるんだから、そろそろやめたほうがいいんじゃない?」と友達から指摘されて。それまではまったく気にしていなかったのに「そうか、30歳でこれはマズイのか。じゃあ、30歳までにやめよう」と、急に直す努力を始めたりして。

“結婚”というものを急に意識するようになったのもその頃。まず、それまでの私はアイドルというお仕事をしていたので、親や親戚からも「結婚しないの?」なんて言葉を一度もかけられたことがなかったんです。でも、卒業した瞬間、やたらと言われるように。さらに、わが家も含め松村一族は子どもが3人いる家庭が多くて。「3人産むならそろそろ一人目を産まなきゃね」と、なぜか私も“子どもは3人設定”で話が進んでいくっていう(笑)。それがまたジワジワとプレッシャーになったりして。

仕事でも「20代のうちに少しでも多くキャリアを積んでおかないと、30歳からが大変だよ」という言葉をかけられたり。いろんな人がいろんな言葉を届けてくれた、私の29歳。それはありがたいことですが、その言葉に耳を傾けすぎるとパンクしてしまう……。誰かに何かを言われるたびに気持ちがあっちへこっちへ行ったり来たり。私の“呪い”が解けたのはそんな日々に疲れ果てた、30歳の誕生日の1カ月前。タイムリミットが目前に迫ったときに「頑張ったけど自分を変えることはできない‼」「もう無理だ‼」「もういいや‼」「私はこのままでいい‼」と開き直ったからなんです(笑)。

この先、何歳になっても「私は私らしく」でいいんだ

「30歳までに」をあきらめた瞬間、心がふっと軽くなった。そして、実際に30歳を迎えた今、心はもっと自由になりました。今から金髪にしてもいいし、大好きなピンクと花柄を身にまとってもいい。この先、世界中を旅することだってできる……。20代のときは「20代の今じゃないとできないことがたくさんある」と思っていたけれど、この世にそんな制限は存在しない。前は年齢を重ねることをとても怖く感じたけれど、それも今はスッと消えました。この先の人生を考えると30歳はまだまだ若い。だからこそ、自分一人の人生をもう少し楽しみたい。正直、今は結婚も「まだいっか」の気持ちなんです。

今日も私は昼食を食べながら「あむ」と言い、漫画を読みながら「こんな恋がしたい」とときめいています。人間は年齢で大人になるわけじゃない。30歳になった今も私は相変わらず未熟なまま。だからこそ、周りの声に耳を傾けることは大事だと思っています。でも、すべてを取り入れるのではなく、無理せず背伸びせず、その中から本当に必要なものを選べる自分でありたい。

アイドル時代の私は「トマトが好きです」と一度言ったら「永遠にトマトが好きな自分でなくてはいけない」と思っていた。でも、今は「あの頃は好きだったけど、もう好きじゃない」と言える自分を大切にしたいと思う。理想の自分になりたいから、周りの期待にこたえたいから、同じ失敗を繰り返したくないから、人は皆「こうじゃなきゃいけない」という呪いを自分自身にかけてしまうことがある。でも、それは自分を幸せにするどころか苦しめてしまうこともある。それに気づけた今の私は自由に歩ける気がしている。30代の松村沙友理はより“私は私らしく”人生を楽しめる気がしています。

「30歳までに」の呪いが解けた今、私はより私らしく、心はとても自由になった

松村沙友理 30歳までに"の呪いが解けた今、私はより私らしく、心はとても自由になった

(上)トップス¥86900/ザ・ウォールショールーム(ジア スタジオ) (下)トップス¥57000/ファーフェッチ カスタマーサービス(ジマーマン)

撮影/金谷章平 ヘア&メイク/笹本恭平〈ilumini.〉 スタイリスト/佐藤佳菜子 取材・原文/石井美輪  ※BAILA2022年10月号掲載

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