30代のお尻悩み&疑問に、医師がお答え! 今回は、痔の手術への不安について取り上げます。
場所が場所だけに……痔の手術はなんだか怖い!
30代女性のお悩み&疑問
・「友達の知り合いが痔の手術をしたら、『お尻の穴がゆるくなった』と言ってたらしい。イボ痔が酷くて手術を検討していたけど、やっぱりやめようかな……」
・「肛門周辺の筋肉にメスを入れたら、やっぱり緩くなる?? 将来を考えると怖いです」
30代女子で悩む人も多い痔。肛門科を受診して、手術をオススメされたらどうしよう……。
医師のお答え!
【監修】寺田俊明先生 「寺田病院」理事長/院長/胃・大腸肛門病センター長
<プロフィール>東京医科大学卒業後、三井記念病院(千代田区)外科研修医を経て亀田総合病院(鴨川)消化器科にて内視鏡をはじめ多種にわたる検査を習得。その後、 大腸・肛門病の専門病院である東葛辻仲病院(我孫子)にて肛門疾患の手術全般を学んだ後、寺田病院 副院長、胃・大腸肛門病センター長として赴任。現在、理事長・院長、胃・大腸肛門病センター長を兼任。
Q:痔の手術をすると、お尻の穴がゆるくなるって本当!?
A:痔核(イボ痔)、裂肛(切れ痔)の手術では緩くならず。酷い痔瘻(あな痔)の場合のみ、可能性あり
患者さんから「痔の手術経験者から『手術をすると肛門がゆるくなるからやめたほうがいい』とアドバイスされた」という声もよく聞かれますが、痔核、裂肛の手術ではほぼあり得ない話です。
肛門の括約筋には、内括約筋と外括約筋の2種類が存在します。内括約筋は、意識する・しないにかかわらず、肛門を締めてくれていて、排便の際は自然とゆるみます。外括約筋は随意筋といい、自分で意識的に肛門を締めようとするときに締まる筋肉です。
2つのうち、内側の内括約筋を傷付けなければ、肛門はゆるくなりません。
内括約筋に触れない痔核(イボ痔)の手術で肛門がゆるくなることはあり得ません。
裂肛(切れ痔)の場合、症状が進行し、自力での排便が困難なほど肛門が狭くなっている場合にのみ内括約筋を切りますが、それも人工的な肉離れを起こす程度にプチッと切るだけ。ゆるくなるわけではありません。
痔瘻(あな痔)に関しては、深い痔瘻や長い間放置して、お尻の中が瘻管だらけになるまで進行してしまうと、手術をする際にある程度の括約筋を切除する必要があり、肛門がゆるくなってしまいます。痔瘻の手術をされた方が他人に痔瘻の手術の体験談を話す際に痔瘻の手術をしたというより痔の手術をした。と話すところからすべての痔の手術が、「手術で肛門がゆるくなった」という誤解を生んでしまったのでしょう。現在は括約筋をなるべく温存する手術方法もあり安心です。
【監修の寺田医師からひとこと】
肛門科という標ぼう(先生が診察できる専門科を掲示するもの)は医師であればどなたでも可能です。外科出身の先生なら研修医の際に痔の手術を経験された方も多く専門の勉強をきちんとせずも、簡単に標ぼうしている方や肛門を見ずに軟膏だけ出す先生も多く存在します。肛門は一生使用する場所であり、非常に繊細です。誤った治療をされると取り返しがつきません。肛門を専門にする先生は非常に限られ、外科手術まで可能な先生はさらに少ない状況です。そこで『日本臨床肛門病学会』が作成した『痔の専門の医師を探そう』というサイトがあります。肛門科を受診される際には、このサイトを検索して、最寄りの専門の先生を受診されることをおすすめします。
手術によってお尻の穴がゆるくなるわけではないとの結論。病院選びは慎重に、適切な治療を!
取材・文/櫻木えみ 企画/斉藤壮一郎〈BAILA〉