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編集部オススメ本:読書の秋に、没入体験必至! ルシア・ベルリンの『すべての月、すべての年』【エディターズピック vol.280】

発売中のBAILA11月号「本を読むっておもしろい」特集にちなみ、今月はEditer's PickでもBAILA編集部員のおすすめ本を紹介しています。

ここではないどこかに連れていかれる、没入体験

『すべての月、すべての年』  ルシア・ベルリン著 岸本佐知子 訳

『すべての月、すべての年』

ルシア・ベルリン著 岸本佐知子 訳

講談社

 

少しまとまった時間が取れる週末、せっかく読むなら「ここではないどこか」へ連れて行ってくれる本がいい。

                                                            

ルシア・ベルリンはアメリカの短編小説作家。先んじて編まれた作品集『掃除婦のための手引書』で知ったのですが、どの作品も鮮烈で一つ読み終わる度にその世界から戻ってきたくなくて、再度読み返してなかなか進まない体験をしました。一見バラバラとした短編ですが、読んでいくうちにどれもつながっていることに気づきます。教師・掃除婦・電話交換手・看護助手として働き、アルコール依存症に苦しみながら四人の息子を育てたシングルマザーの浮き沈みの激しい人生から切り取った日常のスケッチ集です。明確で深い筆致、登場人物達のリズムのよい会話、切り替わる視点、物語に集中していると突如放り出されるような結句。こんな作品にはなかなかめぐり合いません(訳者の岸本佐知子さんの訳が素晴らしいということもあると思います!)

1977年の緊急救命室、メキシコのリゾート、テキサスの農場・・・。行ったことも、同時代を過ごしたわけでもないのに、心の中に鮮やかな映像が沸き上がり、感情が揺さぶられる。そんな「没入体験」を是非。

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