カウンセリングは、実は誰でも手軽に使えて、もっと気軽に使っていいところ。お金を払って心の専門家に話すことの魅力と意味について、精神科医の星野概要念さんに教えていただきました。
カウンセリングは、“心がまとまらなくなったら行く美容院”のようなところと思ってくれたら⏤⏤⏤精神科医・ 星野概念さん
カウンセリングは、お金を払って心の専門家と時間の契約をして、安全・安心な場所で自分の好きなように話をすることだと、僕は考えます。そこでは「あなたのためだけの時間」を確保するので、自分の話したいことを話しても、話したいことが何なのかわからなくても、あるいは沈黙があっても大丈夫です。大人になると、意外とそういう時間って、なかなかないと思いませんか?
カウンセリングの中でどんなことが起こるかは、人それぞれ。自分の話をするだけですっきりする人、話しているうちに答えが見つかる人など、様々です。どういうときに行くべきですか?と聞かれたら、たとえば「なんかもやもやする」「カウンセリングに行ってみたほうがいいのかな」と迷いが生じるときに行ってみるのはどうでしょう。
僕は「なぜもやもやしているのか」を分解し、整理するのが、カウンセリングで行う大きなことのひとつだと思っています。自分の中でも言葉になってない状態を、カウンセリングを通して「どういうものなのか」「いつからなのか」「思い当たる何かしらはないのか」というように、カウンセラーと一緒に深めていく。時間をかけて、はっきりはしていないけれどご自身の負担になっていることを、少しずつ明確に言葉にしていく。それがわかるようになると、ご自身の中でも、考え方の方向性が立てやすくなることがあると思います。
もやもやは、感じるその人それぞのパターンが決まっていることがあります。そのため、カウンセリングなどで何度か向き合うと、自分の考え方のクセや傾向がなんとなくつかめてくる人も多いです。そうすると、もやもやしたときに「自分に何が起こっているか」がわかるようになってきて、何か問題が起きたときも余裕を失わないですんだり、混乱しにくくなるんです。実際の傷は目で見ればわかりますが、心が傷ついていたり混乱している状態は目に見えないので「もやもやする=自分に何が起こっているかよくわからなくて苦しい」と感じている人も多いと思うんですよね。
カウンセリングは、美容院くらい、気軽に利用していいものだと僕は思います。伸びてきた毛先を整えに美容院に行くように、心がちょっとまとまらなくなってきたと感じたら、カウンセリングに行ってみるとか。カウンセラーとの相性も、美容師と同じように「何も言わなくても、なんとなくいい感じにしてくれる」といった出会いもあったり。そういった意味で、カウンセラーが自分の人生を一緒に伴走してくれる大切な一人みたいな存在になっていくことも充分ある。自分が行っていいのかな?と迷っている方には「そんなに怖いところじゃないですよ」と伝えたいと思います。
精神科医など
星野概念さん
精神科医として病院に勤務するかたわら、執筆や音楽活動も行う。雑誌やWebでの連載の他、寄稿も多数。近著に『ないようである、かもしれない発酵ラブな精神科医の妄言』(ミシマ社)。
イラスト/竹井晴日 取材・原文/佐久間知子 ※BAILA2022年11月号掲載