会田薫の最新作『やも男と女形』をレビュー【バイラ女子におすすめコミック】

©会田薫（秋田書店） 2023

SNSの“2万いいね”で話題になった『写楽心中少女の春画は江戸に咲く』作者の最新作。

3年前に妻と5歳の娘を事故で失ったつらさから、店をたたもうとしていた喫茶店店主・幸一は、ひょんなことから15歳の女形スター・艶之助（えんのすけ）と出会う。彼は厳格な父親との不和に耐えかねて家出をしていた。二人は導かれるようにして共同生活を始める。家族にもっと愛を与えればよかったと後悔する幸一に、娘の好物だった幸一のオムライスをほおばりながら艶之助は言う。「娘さんもあんたの愛情、5年分食ってたってことだろ？ それってサイコーじゃん！」。公演の都合上、艶之助は学校給食すら食べることも許されなかった。子どもではなく、役者であることを父に求められて生きてきたのだ。愛の注ぎ先を失った幸一と愛を渇望する艶之助は互いを補い合うように自分を取り戻していく。

家族や恋愛関係でなくても、人は誰かの特別になれる。二人の関係がそれを証明してくれる気がする。

『やも男と女形』
会田薫著
秋田書店　１巻～　748円　

家族を亡くし、一人純喫茶を営む幸一。ある日、美少年に住み込みで働きたいと頼まれ、断り切れずに同居生活を開始。だが、彼は失踪した女形スターで……。

『テトテトテ』
池谷理香子著　
集英社　１巻～　715円

突然、運命共同体となった男女3人の戸惑いの日々 
ある日、トラックにひかれそうになった初対面の男女3人。謎の拡声器に寿命を延ばす条件として、毎日それぞれと握手することを迫られる。動揺する3人が取った行動とは……。