漫画を愛するライター・中川 薫がバイラ女子におすすめの漫画をピックアップ! 今回は、話題の漫画家・ひの宙子の『最果てのセレナード』をご紹介します。
ナビゲーター
中川 薫
ライター。今年に入って海外渡航回数が激増。各国のコロナ前と後での街並みや人の流れに一喜一憂する日々。
“旋律”が導いた10代の決心
©ひの宙子/講談社
素直な子であればあるほど、親の夢をかなえようと頑張るものだ。しかし、自分自身が満たされなかった理想の人生像を、子どもの人生で生き直そうとする母親が自分の親だったら。あるいは自らの自己肯定感の低さを“呪い”として娘に押しつける母親が、自分の大切な親友の親だったなら。本作は、そんな毒親に翻弄され、激情の渦に身を投じた子どもたちが自らの選択をする物語だ。
北海道の田舎町に引っ越してきた中学生の小夜は、地元のピアノ教室に通い始める。小夜の弾くピアノの音に魅了されたピアノ教室の娘・律は、小夜の旋律が、空虚さと危うさをはらんでいることに気づく。「小夜のために」と周囲を徹底的に管理し、“未来”に不適切であれば根こそぎ排除する母親に限界を感じていた小夜。そして、彼女の感情に共鳴した律は、ある決断をする。彼女たちにその選択をさせた大人たちのふがいなさにやるせなくなる。毒親から子どもが逃れるすべは一体どこにあるのか。二人の行く末を見守りたい。
『最果てのセレナード』
ひの宙子著
講談社 1巻~ 748円
幼少からピアノの英才教育を受けてきた小夜は、律の実家であるピアノ教室に通い始める。徐々に深まる二人の関係は、ある日を境に運命共同体へと変化する。
これも気になる
©高田ローズ(秋田書店)2023
『やさしいミルク』
高田ローズ著
秋田書店 1巻~ 748円
恋と仕事の転換期を迎えた小説家による大人の三角関係
30代の小説家・よもぎ。担当編集には清純派から官能への転向を迫られ、男女の関係だった元編集・東雲からは結婚報告を受ける。寂しさのあまり、女性用風俗サイトを閲覧し……。
イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2023年6月号掲載