メガバンクを舞台に大人の青春ドラマを描いた、池井戸潤原作の映画『アキラとあきら』。スクリーンの中だけでなく役者として現場で絆を深めたという主演の横浜流星さん&竹内涼真さん。仕事の流儀、男の友情、大人の青春…といった5つのテーマについて二人で語ってもらった。
涼真と流星をひもとく5つのキーワード
1.仕事の流儀
涼真 二十歳くらいからこの仕事を始めて、もうすぐ10年。仕事に対する感覚はだいぶ変わりました。
デビュー当時を振り返ると、あの頃の僕は欲だらけだった。「認められたい」とか、「評価されたい」とか、そんな思いで頭の中がいっぱいだった気がします。
それは向上心にもつながるから、決して悪いことではないと思う。
でも、それを仕事のベースにしてしまうと、必ず途中で行き詰まる瞬間がやってくるんですよね。
「なぜ、自分はこの仕事をしているのか」「何が楽しくてこの仕事を続けているのか」
初心に戻り自分と向き合ったとき、あらためて気づいたのが、「現場にいる時間が楽しくて好きなんだ」という思いでした。
今、僕が仕事においていちばん大事にしているのは「いかに撮影現場でいいチームワークで撮影できるか」。
結果や数字も大切だけど、それは後からついてくるもの。
今は芝居と、撮影現場と、純度高く向き合えている気がする。
流星 僕が役者という仕事をする上で最も大事にしているのが“妥協しないこと”。
もちろん、作品は皆で作り上げるものであり、芝居は相手がいてこそ成り立つものなので、周りの意見に耳を傾け受け入れるやわらかさも必要。
ただ「ここだけは」というものは貫ける自分でありたい。
「違うな」と思いながら半端に演じ続けたくない、「これでいいや」と半端な気持ちで作品を世に送り出したくはない。
周りから“面倒くさいヤツ”と思われたっていい。ちゃんと真正面からぶつかれる役者でありたい。
2.男の友情
涼真 たとえば、過去に一緒にプレーしていた仲間がサッカー選手として活躍している姿に力をもらったり……。
今、立っている場所は異なるかもしれないけど、お互いに刺激を与え合い鼓舞し合える友達はたくさんいます。
ただ、鼓舞し合うといっても「頑張れよ」なんて言葉にしたりしない。
言葉よりも“どんなに忙しくても会う”っていうことが重要な気がする。
たとえば、自分が頑張れていないときって友達に会えないと思うんですよ。「こんな自分を見られたくない」「友達に顔向けできない」って。
だからこそ、いつだって胸を張って会いに行ける自分でありたいし、どんなに忙しくても会いたいと思ってもらえる存在でありたい、それがお互いへのエールにもなるっていうか。
流星 僕も鼓舞し合うような友達はたくさんいます。
プライベートで会うのは高校の同級生がほとんどなんですけど、みんなそれぞれ違う仕事をして頑張っているので。「頑張れよ」とか「頑張ってるね」とか必要ないのは僕も同じです。
ただ、長い友達からの「変わらないね」は嬉しい。
変わる人、たくさんいるじゃないですか(笑)。
特にこの世界は流れがとても早いので、自分でもふと不安になることがあったりするんです。
だから、その言葉を聞くと「自分を貫けている」とホッとする。その言葉はやっぱりすごく嬉しいかもしれない。
3.大人の青春
涼真 “青春”って学生時代のイメージが強いけど、実はそんなことなくて。
流星 今作もだけど僕たちは現場でそれをいつも味わっていますね。
涼真 皆と一緒に「この作品をいいものにしよう」と突き進み、それで本当にいいシーンになったときは達成感や充実感を味わう……。
流星 “青春”とは仲間と力を合わせて同じ方向に向かって進むこと。
涼真 時期や年齢も関係なく、大人になっても味わえるものなんですよね。
4.困難の乗り越え方
流星 誰にでも「人生、うまくいかないな」と思う時期はきっとある。僕自身、今までに何度もそれを経験してきました。
その壁を乗り越えるために必要なのは、自問自答なのかな。
悩むのはきっと、大切なことを見失っているからで。今の自分は何がダメなのか、前に進むためにはどうしたらいいのか自分の思いが明確になれば、やるべきことも明確になる。抜け出したときの自分を、到達点を設定することが大事だと思っていて。
涼真 わかるなぁ。すごくアスリートっぽい考え方だよね。
「人生、うまくいかない」から抜け出すのも大事なことだけど、そんなふうに悩むのって悪いことではないというか、むしろ、僕はポジティブな思考だと思っているんですよ。
まず「うまくいかない」と感じるのは、うまくいっていた過去があるからで。
ひとつ成長して新しい壁にぶつかったからなんですよね。
それを乗り越えるために繰り返す試行錯誤はさらに自分を成長させてくれる。
人生、うまくいきっぱなしだとその時間はないわけで。意外と、耐える時間が人生には必要だったりするんですよね。
5.働くモチベーション
流星 僕たちは好きな仕事をしているので仕事がいちばんになりがちだし、仕事に対するモチベーションが下がるっていうこともめったにないんですけど。
涼真 もしも、仕事を頑張れなくてつらいと言う人がいるのならば、モチベーションの置き場所を変えてもいいと思うんですよ。
流星 たとえば、プライベートに置き場所を定めて、友達と飲みに行ったり、趣味を楽しんだり、週末を楽しむことを大切にしたっていい。
そのために日々の仕事を頑張ったっていいわけですしね。
涼真 人生は仕事だけでつくられているわけじゃない。仕事が楽しかったら最高だけど、そうじゃなくたっていい。
全員が全員「仕事がいちばん」じゃなくてもいいじゃないですか。
映画『アキラとあきら』
原作/池井戸潤 『アキラとあきら』(集英社文庫) 監督/三木孝浩 脚本/池田奈津子 出演/竹内涼真、横浜流星、髙橋海人(King & Prince)、上白石萌
歌生まれ育った環境も異なればお互いの信念も違う。対照的な“宿命”を背負った二人の男が力を合わせたとき運命の歯車が回り始める……。池井戸潤の人気小説を映画化。スクリーンに熱い大人の青春ドラマを描き出す‼ 8月26日(金)より全国東宝系にて公開中。
©️2022『アキラとあきら』製作委員会
横浜流星
よこはま りゅうせい●1996年9月16日生まれ。2011年俳優デビュー。ドラマ「初めて恋をした日に読む話」が大きな話題に。今年はドラマ「DCU」「新聞記者」、映画『噓喰い』『流浪の月』に出演。10月には主演映画『線は、僕を描く』が、来年は主演映画『ヴィレッジ』の公開を控えている。
竹内涼真
たけうち りょうま●1993年4月26日生まれ。東京ヴェルディユースに所属していた過去も。「仮面ライダードライブ」で主演を務め、ドラマ「過保護のカホコ」や「テセウスの船」「君と世界が終わる日に」「ひよっこ」「太陽は動かない」など話題作に次々と出演。今年はドラマ「六本木クラス」での好演が話題に。
(竹内さん)スーツ¥495000・Tシャツ¥57200/ジョルジオ アルマーニ ジャパン(ジョルジオ アルマーニ) (横浜さん)シャツ¥82500/ヨウジヤマモト プレスルーム(ヨウジヤマモト)
撮影/YUJI TAKEUCHI〈BALLPARK〉 ヘア&メイク/吉村 健(竹内さん)、 永瀬多壱〈Vanites〉(横浜さん) スタイリスト/徳永貴士(竹内さん)、 伊藤省吾〈sitor〉(横浜さん) 取材・原文/石井美輪 ※BAILA2022年10月号掲載