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川上未映子待望の新作『黄色い家』をレビュー【バイラ世代におすすめの本】

書評家・ライターの江南亜美子が、バイラ世代におすすめの最新本をピックアップ! 今回は、ナビゲーターが絶対に読みたい2冊、川上未映子の『黄色い家』と大谷朝子の『がらんどう』をご紹介。

ナビゲーター
江南亜美子

江南亜美子


文学の力を信じている書評家・ライター。新人発掘にも積極的。共著に『世界の8大文学賞』。

小説のパワーでエネルギーチャージ。心を震わせて。

『黄色い家』   川上未映子著 中央公論新社 2090円

川上未映子待望の新作は、金と家族と犯罪が描かれる。元来の生育環境の悪さから呪われた貧困状態にある少女が、フルパワーで生き延びようとするノワール小説だ。物語は2020年春、主人公の花がニュースで古い知り合いである黄美子の傷害事件を知る。10代の終わり、花と同世代の桃子と蘭、そして黄美子の4人は疑似家族のように暮らしていた。

そして話は前世紀へ。花は母の友人の黄美子と15歳の夏に知り合い、スナックの手伝いを始めた。お金を自分で稼ぐことが花の生きがいになる。1998年頃の日本はバブル経済がはじけ、非正規雇用が拡大する時期で、格差問題が浮上していた。花は犯罪だという意識もなく、「出し子」になる。「わたしは自分で手に入れた、この家を守らなければならない」

カラオケではX JAPAN。合言葉はアタックナンバーワン。’90年代から21世紀の初め、がむしゃらにピュアに、ただ生きたいがために犯罪に手を染めた花の姿が、圧倒的スピード感とリアリティで描かれていく。

女たちの美しかったはずの共生の夢。虐げられた弱者の花は、さらに弱い立場の黄美子に何をしたか。読後の余韻に胸は締めつけられる。

『黄色い家』

川上未映子著
中央公論新社 2090円


「金は権力で貧乏は暴力」この貧困から抜け出すには
20年前、未成年の花は母親を捨てて黄美子との暮らしを選んだ。働くも金はなし。リスキーな「シノギ」に手を染めて……。善と悪の境を問う、少女のサバイブ小説。新聞連載時から話題沸騰の一冊。

これも気になる!

『がらんどう』 大谷朝子著  集英社 1595円

『がらんどう
大谷朝子著 
集英社 1595円

「平井って結婚したい?」社会的価値観に負けない
アラウンド40歳、女性同士のルームシェア。居心地よい2LDKの暮らしの一方、結婚や出産という「普通」からはみ出し、自分は空っぽかと悩む主人公を通し人生の意味を問う。新人賞受賞のデビュー作。

イラスト/ユリコフ・カワヒロ ※BAILA2023年5月号掲載

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