「理想は自分の望む人生と仕事を天秤にかける必要のない環境作り」フォクシー　クリエイティブディレクター 前田華子さんスペシャルインタビュー

ADEAMデザイナーの前田華子さんが「FOXEY」のクリエイティブディレクターに就任。現在に至るまでの“キャリアの築き方”をインタビュー。

洗える素材や機能的なデザインで、アクティブな日常を送る働く女性にもぴったり。

ありがとうございます。母が創業した、FOXEY。その長年愛されてきた世界観を守りながら、新しい時代を生きる人たちのワードローブにフィットさせていく。プレッシャーとともに、大きなやりがいを感じています。会社として責任のある立場への就任は、どう社会に貢献していくかも課題。FOXEYの社員は約99%が女性で、年齢に限らず既婚、未婚、シングルマザーと、様々な立場の人たちがいます。理想とするのは、様々なライフステージの変化の中で“自分の望む人生と仕事”を天秤にかける必要のない環境づくりです。自身の喜びも、働くことのやりがいも。どちらも楽しみながらキャリアアップしていける会社の在り方を、今以上に考えていきたいと思っています。

共働きの家庭、キャリア女性の多いNYで育ったので、働くことには意欲的でした。母からは“自分の生活の糧となる仕事を持つといいのでは”と幼い頃からアドバイスを受け、学校を休みたいというと“では、働きましょう”と返されたことも（笑）。働き始めて感じたのは、社会で必要とされる充足感。自分が誰かの役に立ち、誰かに学びを得ているという関わり合いは、人生の満足度においてとても大切だと実感しています。

コロンビア大学在学中は金融の道を目指した時期もあり、外資系の金融顧問会社のインターンシップを経験。でも、心は動かず。直後にリーマンショックが起き、金融への道を悩んでいるタイミングで見つけたのがアメリカのヴォーグのインターンシップの募集でした。ファッションは大好きで、ヴォーグは愛読書でもあり迷わず応募。当時の“19世紀の印象派の絵画”がコンセプトの撮影で、それにまつわる資料集めがインターンに任されたことがありました。図書館に通いルノアールのスケッチを集め、ムードボードの作成をお手伝い。そのとき編集長のアナ・ウィンターさんはオバマ大統領の支援中で、ファッションはアートや政治など、社会と深くひもづいていることに気づいたんです。ファッションを仕事にする面白さを見いだす、大きなきっかけでした。もちろん、あの映画のようなコーヒーの買い出しという役目も経験しています（笑）。

ADEAMは毎シーズン、NYでコレクションを発表。アン・ハサウェイさんやミシェル・オバマさんを始めとするセレブリティの衣装制作も含め、その経験はFOXEYのクリエーションにも生かせると感じています。昨年は私のコミック好きから発展した漫画『花より男子』×FOXEYのコラボレーションも発表しました。エレガントなデザイン、ラグジュアリーなクオリティを大切にしながらも、いつショップを訪れても新鮮なときめきや意外性が見つけられるようなエッセンスを加えていくのが私の役目だと思っています。これからのFOXEYを、どうぞよろしくお願いします！

撮影／MITSUO YAMAMOTO〈CAPE COD〉　原文／櫻井裕美　※BAILA2024年5月号掲載