働くBAILA読者に推したい3冊を厳選! 作家・書店「ほんまる」オーナーの今村翔吾さんは“歴史小説初心者にすすめたい司馬遼太郎入門の本”を紹介してくれました。
作家・書店「ほんまる」オーナー
今村翔吾さん
1984年生まれ、京都府出身。’17年に『火喰鳥 羽州ぼろ鳶組』(祥伝社)で小説家デビュー。’22年に『塞王の楯』(集英社)で直木賞を受賞。シェア型書店「ほんまる」のオーナーも務める。
歴史小説初心者にすすめたい司馬遼太郎入門の本
『燃えよ剣〈改訂版〉』
司馬遼太郎著 新潮文庫
上下巻 935〜1045円
幕末の動乱期に新選組副長として生きた男・土方歳三の生涯を描く。「実在人物を主人公にした司馬作品の中で、最も読みやすいと感じますし、意図してそのように構成されていると思います」
『十一番目の志士〈新装版〉』
司馬遼太郎著 文春文庫
上下巻 各770円
長州藩が生んだ刺客・天堂晋助の姿を描く。「宮本武蔵の技を引き継ぐ『人斬り』の物語。主人公は架空のキャラですが、実在人物も多数登場。アクションが多いのも読みやすいポイントです」
『風の武士〈新装版〉』
司馬遼太郎著 講談社文庫
上下巻 836〜880円
「主人公は忍者の末裔で抜刀術の達人。江戸幕府より現在の和歌山県にあるという『謎の国』を探るように命じられる物語。青年時代の私が、夢中になった、フィクション性の高い一作」
難しい印象の“司馬遼(しばりょう)”小説。読みやすいのはコレ!
歴史小説の作者といえば、必ず名が挙がる司馬遼太郎と、その作品たち。難しいと躊躇する人も多いかもしれません。特に映像化されるような有名な作品は、文庫本で何巻も続く大長編があったりするのも、やや敷居が高く感じられる理由かもしれないですね。そこで時代小説を書いている私が、司馬氏の著作のうち比較的有名ではないものも含めて、推しを考えてみました。
『燃えよ剣』は、何度も映画やドラマになっている氏の代表作のひとつ。作家目線で読むと、わかりやすさを考え抜いて書かれているとうなってしまいます。『十一番目の志士』は、架空の刺客を主人公にしたフィクション性の高い物語。『風の武士』も、情報よりストーリーに重きがおかれた小説で、実は初期の司馬氏はこのようなライトな歴史小説も多く発表しています。
本を読むと自分の中にある感情をあらためて思い出したり、目指したい何かを自覚できることも。今回推した司馬作品も、そんな自分だけの読書体験のヒントになれば嬉しいですね。
撮影/田村伊吹 取材・原文/石井絵里 撮影協力/UTUWA ※BAILA2025年2・3月合併号掲載