#京本大我 さんインタビュー「双方向クリエイティビティ」

心の内を赤裸々にアートに落とし込みながらエンターテイナーとしての美学も宿す。京本大我さんが体現する新しいクリエイター像。

青。財布とか小物は青が多いし、色の選択があると青を手に取ることが多いです。

オレンジ。写真展『視点と始点』でオレンジを基調とした“秋”のエリアを作ったんですけど、なんかいいなと思って。よく考えたら子どもの頃、オレンジ色の服をよく親に買ってもらったりもしていて。昔好きだったことを思い出してからは、オレンジ熱が高まってます。

ミステリアスに見られることが多いから紫。人からあまり話しかけられないんです。僕も自分から話せないタイプだから、初対面の人とは何も生まれないことが8割（笑）。仲よくしている人たちはその壁を壊して踏み込んできてくれた人だから、大事にしなきゃなって思ってます。

僕は好きなものに好かれないことの悔しさをいっぱい経験してきました。歌が好きなのに全然うまくいかなかったりも……。そんなときは、大好きなアーティストのインタビューや制作のメイキング動画を見るんです。尊敬する人たちも裏ではいろんな葛藤を抱えてきたことを知ることで、自分自身も勇気づけられるから。

Mr.Childrenの桜井（和寿）さん。まだ直接お会いしたことはなくて。桜井さんに憧れて作詞・作曲をはじめた僕が、アーティストとしてアルバムを形にするところまでいけたので、いつか届けばいいな。褒めてもらうのはおこがましいから、知ってもらえるだけで嬉しい！

油絵を描いたとき。無我夢中であっという間に5時間たつことも。7〜8枚完成していて制作途中が3枚。抽象画が多いです。

黒。ベースに使うことが多いです。

家のソファ。イタリアから船便で取り寄せたお気に入り。最近は気分転換のために、ベージュのカバーをグレーに変えようと計画中。

写真や音楽など、様々な分野での本格的なアート活動を始動させた京本さん。アルバム『PROT.30』は、30歳になるまでの1年間に制作した楽曲が詰まっている。

「自分の内面を誰かに話すことにはためらいがあるけれど、メロディに乗せてアート作品として昇華させると恥じらいや抵抗感が薄れて、言えなかったことを飾らずに言葉にできるんです。収録した楽曲は仕事として作ったというよりも、僕にとっては自分の記録みたいなもの。そのとき、そのときに抱いた感情を吐き出したアルバムなので、聞いた方たちの心に少しでも刺さってくれたら嬉しいです」

昨年9月にクリエイティブ・プロジェクト「ART・PUT」を始動して以来、写真展の開催やアルバムのリリースを次々に発表し、ファンを驚かせている京本さん。実は京本さん自身にも最近、驚きの発見があったとか。

「僕が音楽を作ると根暗な歌詞になっちゃうくらい、暗いテイストやちょっとネガティブなものに心地よさを感じるんです。だから写真もどんよりするだろうなーと思っていたら、生物の美しさや力強さなど、着目する世界が意外と明るいことに驚きました。音楽も写真も同じところに着地していたら面白くない。活動を続ける意味があると感じました」

クリエイティブの原点は自分の内から湧き出る好奇心。ただし前に進むための原動力は、受け手のリアクションだ。

「自分の表現を最優先していた時期もあったけど、30歳の今は自己満足にしたくないんです。どうすればみんなをワクワクさせられるか常に意識しています。作品は僕のエッセンスがめちゃくちゃ濃く反映されているけれど、プロジェクトは一人でやっているのではなく、周りのスタッフや受け取ってくれる人がいて成立している。共感してくれる“仲間探し”をしている感覚に近いかもしれません」

5月からはアルバムを引っ提げ、ライブハウスのZeppでツアーも開催！

「SixTONESではドーム公演もさせてもらっていますが、ソロとしては身の丈に合ったステージからしっかり経験を積んでいきたくて。見にきてくれる人との物理的な距離の近さはもちろん、心の距離も縮めていけたら嬉しいです」

「僕が音楽や写真を通して自分の内面を表現するのは共感してくれる“仲間探し”の感覚に近いかもしれない」

アルバム『PROT.30』
通常版　3300円
Sony Music Labels Inc.
京本大我さんのクリエイティブ・プロジェクト「ART-PUT」の一環として、自身で作詞・作曲した楽曲を収めた初のCDアルバムをリリース。通常盤にはボーナストラックとして新曲「Over Dub」「Desire」「終わらせぬ世界」の3曲を収録。

取材・原文／松山 梢　※BAILA2025年6月号掲載