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漫画家 松田奈緒子先生に聞く!谷川史子先生の“すごみ”とは?【『りぼん』ガチ勢の作品語り】

2025年で創刊70周年。数々の名作がある『りぼん』に対して、それぞれの作品や作家についてのガチ勢が集合! 今回は漫画家の松田奈緒子先生に、谷川史子先生の魅力について激アツに語ってもらいました。

松田奈緒子先生が語る、谷川史子先生の『花いちもんめ』

松田奈緒子先生

漫画家

松田奈緒子先生


まつだ なおこ●1996年に漫画家デビュー。2012〜2023年連載の『重版出来!』はTVドラマ化もするなど大ヒット。

谷川史子という作家のすごみを感じることができる読みきり作品

実は谷川さんは高校の先輩で、当時漫研に入っていた谷川さんが描かれていた作品が私は大好きでした。“彼女は絶対にプロになる!”と思っていたところ、『りぼん』でデビュー。谷川さんにとって最初のコミックス『花いちもんめ』には、デビュー作の『ちはやぶるおくのほそみち』も収録されています。表題作の『花いちもんめ』を初めて読んだとき“デビュー作とすごく似てる?”と思ったんです。あとがきで「もう一度描いてみたかった」と触れているとおり、リメイク的作品。デビュー作のすごさももちろんですが、『花いちもんめ』では多くの読者に楽しんでもらえるように、言葉選びも描写もさらに進化しているところに谷川史子という作家の才能を感じます。

モノローグの表現も秀逸。主人公が想いを寄せる実の兄への恋心を“胸がつぶれそうです”と表現していて。“胸が苦しい”じゃなくて“つぶれそう”をここで使うのはセンスの塊です。デビュー作との対比もまた素晴らしくて、デビュー作では“はやく心の位置をかえなくちゃいけないんだから”だったモノローグが、『花いちもんめ』では“でも まだ 好きで 好きでうごけない……”となっているんです。谷川さんご本人が意識してらっしゃるかはわからないですが、切なさが迫っていることがより誰にでもわかる言葉になっているんです。誰の言葉も借りていない、ちゃんとキャラクターを通した純度の高い言葉になっているのは誰にでもできることではないです。

大人になって初めて読む人も、学生時代に読んで久しぶりに読む人も、純度の高いこの作品を読んだら、きっと細胞が若返ると思います(笑)。“あぁ、そうだった、こうだったーー!”と。私自身もこれからもサプリメントを摂取するように読み返して、そのたびに“谷川さんは本当に素敵だ”とひたっていくと思います。

『花いちもんめ』のシーン でも まだ 好きで 好きでうごけない…… ©谷川史子/集英社

©谷川史子/集英社

『花いちもんめ』のシーン 胸がつぶれそうです ©谷川史子/集英社

©谷川史子/集英社

『花いちもんめ』 谷川史子著  集英社 全1巻

『花いちもんめ』
谷川史子著
集英社 全1巻
谷川史子のデビューコミックス。今回紹介した2作品のほか、谷川史子らしさあふれるピュアな読みきりが計5本収録。収録作の『きみの夏にとびたい』は松田さんもアシスタントに入っていたとか。

取材・原文/上村祐子 ※BAILA2025年8・9月合併号掲載

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