市川染五郎＆市川團子 二人一緒だと最強で最高！ 7月『蝶の道行』 8月『火の鳥』で"染團"が歌舞伎座に降臨!! 【歌舞伎沼への誘い#74】

「落ちるの一秒、ハマると一生」といわれる歌舞伎沼。その深淵をのぞき、沼への入り方を指南する本連載。

今回、ご登場いただくのは、歌舞伎座7月『蝶の道行』、8月『火の鳥』で、久しぶりに共演する市川染五郎＆市川團子。幼い頃から共演を重ね、切磋琢磨してきた歌舞伎界のプリンスです。

歌舞伎を愛し、ともに濃密な時間を過ごしてきた「染團」。見目麗しいだけでなく成長著しい二人に、舞台にかける思いや二人の関係性について、バイラ歌舞伎部のまんぼう部長とばったり小僧が聞きました!

ばったり小僧　この記事では、BAILA８・９月合併号掲載の市川染五郎さんと市川團子さんのインタビューを拡大版でお届けします！

まんぼう部長　7月は舞踊『蝶の道行』で久しぶりに共演している染五郎さんと團子さん。「二人の美しい舞に引き込まれる！」「うっとりする！」と大評判になっています！　これまでもコンビを組むことが多かったお二人ですが舞踊でがっつりと共演するのは、2021年の『三社祭』以来ですね。

團子　めちゃくちゃ嬉しいです。

染五郎　本当に嬉しいですね。

團子　僕は『三社祭』のとき、悔しい思いをしたんです。いっくん（染五郎さんの本名＝齋＝いつき）はすごくて、「明日はここを直そう」って、毎日リマインダーを入れていたけれど、僕はそこまでの取り組みができなかったから。

染五郎　いや、あれは家に帰ると父からいろいろダメ出しがあるので、それを伝えていただけのような気がする。でも、悔しさが残ったのは、僕も同じだから、また舞踊でリベンジできるのはありがたいよね。

ばったり小僧　『蝶の道行』は恋人が蝶になって舞い踊るというストーリーです。染五郎さんが立役（男役）、團子さんが女方と二人が恋人同士を演じるのもファンには萌えポイントです♪

染五郎　とても悲しいお話ですけれど、踊りの美しさや衣裳や音楽の美しさといった様式美で、あまり重くなりすぎないようにしたいですね。

團子　そうだね。どんより終わらないように、悲劇を際立たせつつも、明るいところと暗いところのメリハリをちゃんとつけて演じたいです。

染五郎　それと二人の息を合わせることがすごく大事だと思う。作品の凝縮された世界観を表現するには、一つひとつの手がぴったりと合わないとダメだと思うので。

團子　そういう意味で、『三社祭』以上に難しいところがあるかも。とくに僕はしっとりしてないんで（笑）。いっくんはめちゃめちゃしっとりしているから、このままで大丈夫だけど。

染五郎　しっとりしてないって（笑）。骨格的にも自分は女方はできないタイプ。今回も角張った踊りにならないよう、（片岡））仁左衛門のおじさまのようにやわらかさを磨かないといけないなと思っています。

團子　僕もしっとりした雰囲気に溶け込めるように頑張りつつ、今回はちょっとしたかわいげのある娘寄りの役作りで攻めたいと思います！

部長　さらに８月の納涼歌舞伎では、坂東玉三郎さん主演・演出の新作歌舞伎『火の鳥』で共演します。玉三郎さんとは染五郎さんは『源氏物語』で、團子さんは『天守物語』でご一緒して、いろいろご指導を受けたと思いますが、今回はどんな感じになりそうですか。

染五郎　新作で大筋は決まっていたんですけれど、玉三郎のお兄さんに「もう少し展開が欲しいから、ここは二人で決めなさい」とおっしゃっていただき、二人でその部分のストーリーを考えました。

團子　終演後に一緒に銀座のカフェに行って。頭（鬘）も「どういうのがいいかな」「三つ編みを入れようか」って。

染五郎　３～４時間くらいやったかも。

團子　そうしたら次の全体の打合せのときに、いっくんがワードでまとめたものをプリントして、みんなに配っていてびっくりしました！　口頭で説明するのかと思っていたから。

染五郎　プロットにしてプリントしたほうがみなさんもイメージを共有できると思って。

團子　負けた、と思いました（笑）。

小僧　銀座のカフェで二人が打合せしてたら、ちょっとした騒ぎになりそうですけど(笑)。ストーリーは、どんなふうに考えていったんですか。

染五郎　僕たち二人は兄弟で王座を争う役なんです。でも、あまりどろどろしすぎても玉三郎のお兄さんが考えているイメージとは違うし、一幕なので、そんなに壮大なスケールの話にはできないし。それでまずは自分たちが描きたいテーマを考えて、そして辻褄が合うようにするにしどうしたらいいか、演劇的におもしろい展開にするにはどうしたらいいかということを考えて流れを作っていきました。
『江戸宵闇妖鉤爪　明智小五郎と人間豹』とか『木挽町のあだ討ち』でも脚本の打合せから入らせていただいたので、その経験がつながったという感じです。

團子　僕は初めてだったので、いっくんにリードしてもらいました。
そういえば『火の鳥』の僕たちの衣裳は、シュテンのイメージからできた衣装なんです。（シュテンは、『朧の森に棲む鬼』で染五郎さんが演じた役）

染五郎　『朧の森に棲む鬼』を玉三郎のお兄さんがご覧になって、「この衣裳、いいね」と。それで『劇団☆新感線』衣裳の竹田団吾さんが作ってくださることになりました。

部長　ここ数年、コロナだ何だといろいろなことがありましたが、その間に染五郎さんも團子さんもぐんぐんと力をつけて、主役を勤めるようになられて。

小僧　本当に!! あんなに小さかった二人がこんなに立派になって……うるうる。
ただ、お二人はなかなかゆっくり話す機会がなかったそうですね。

染五郎　そうですね。この２年くらい、ゆっくりしゃべる機会はなかったかも。久しぶりに会ったのって、いつだっけ？　……あれだ、去年の10月。僕が夜の部に出ていて、たまたま昼の部を観ていたら同じ日に観に来てて。

團子　そうだ！　歌舞伎座の2階の後ろで二人並んで観たんだよ。そのあと、いっくんが誘ってくれてラーメン屋に行って、誰もいなかったから、食べ終わったあとも「あの役、やりたいよねぇ」とか、ずっと芝居の話をして。

染五郎　あのとき、久しぶりだったから変わっちゃってるかなと思ったんだけど何も変わってなかった。以前の明るくて表裏のないままで安心した。

團子　いっくんも変わらなくて、うれしかった。
それといっくんは、以前に比べると、すごくしゃべるようになったよね。以前は僕がボケ倒していると苦笑するだけだったのが、最近は、「それどういうこと？」みたいな冷静系のツッコミを入れてくれるようになった（笑）。

染五郎　どう返したらいいかわからないボケだから難しいんだよ。

團子　去年、『朧の森に棲む鬼』を観たときもめちゃくちゃよくて、興奮したまま楽屋に突撃して、いきなりボケまくって（笑）。でも、とにかく僕がボケ続けるというのが初対面からの関係で。いっくんの心の扉をボケで叩き続けて開かせるという（笑）。信頼関係があるから僕も素でいられるんです。これからもずっと変わらない関係でいたいですね。

小僧　ちなみに、仲のいいお二人ですが、ライバル心みたいなものはあるんですか。

團子　僕はライバルだと思っています。

染五郎　はい、ライバルです。

部長　いいですね。そういう関係だから、お互いに切磋琢磨して大きくなって成長していくんでしょうね。

部長　お互いの舞台はよく観に行くんですか？

染五郎　そうですね。やっぱり同世代はすごく気になります。『ヤマトタケル』も観ましたけれど、本当に素晴らしくて。ちゃんと主役として舞台にいたし、澤瀉屋の役者としてのカラーをお客さまにぶつけていたので、それがうれしかったです。

團子　いっくんが、観てくれた日に、LINEでそう言ってくれてめっちゃうれしかったです。いっくんの『人間豹』は福岡に行けなくて、ビデオで観たんですけれど、とってもおもしろかった。人間の狂気みたいなところがガンっと出ていて、腹の部分でもいっちゃってる感じがすごく好きでした。

染五郎　同じ月にやっていたけれど、対象的な役だったでしょう？　僕は真っ黒な衣裳で宙乗りして、そっちは真っ白な格好で宙乗りして。

團子　たしかに！　そういえば今年１月の新春浅草歌舞伎も観たけれど、いっくんの舞台を見ると、「うわぁ、僕も頑張らなくちゃ」となるので、とても有難いです。

部長　これからもときに濃厚に交差しながら、二人の道行は進んでいくのだろうと思いますが、今後どんなことを期待していますか？

團子　とにかくたくさん共演したいよね。

染五郎　うん。以前、一緒に踊った『三社祭』は、『弥生の花浅草祭』という全四段の踊りの一部なんですけれど、いつか二人で四段返しを踊りたいね。

團子　僕もです。それこそ、踊り比べだから、前回の『三社祭』の悔しさもパワーにかえて、また二人で踊りたいです。

小僧　バトってる染五郎さんと團子さんも観てみたいです！

染五郎　あとお互いに将来やりたい役があるので、それを初めてやるときに立ちあいたい。
『黒塚』をやるときは僕がタイジするから。

團子　対峙？ 退治？

染五郎　対峙して退治する(笑)。

團子　よろしくお願いします！

染五郎　『伊達の十役』を二人でやるっていうのは？

團子　とんでもないことになりそうだね（笑）

部長　それはおもしろそう！『伊達の二十役』、ぜひ実現させてください。では、最後に読者に向けてメッセージをお願いします！

染五郎　７月は舞踊ですし、８月もエンターテインメント性に富んだ作品。複雑なストーリーじゃないし、長くもないので、歌舞伎をご覧になったことがない方も観やすいと思います。

團子　ぜひ歌舞伎座にいらしてください！

部長　美しい二人を生で観たい人は７月、８月は歌舞伎座へ！！

小僧　はいっ。いつまでも末永くお二人の共演を見守りたいと思います！！

『蝶の道行』
あらすじ：お家騒動に巻き込まれ、身代わりとなって死んだ助国（染五郎）と恋人の小槇（團子）。その死後の旅路を蝶となって美しく舞い踊っているが、やがて地獄の責め苦が二人へとおそいかかり……。

劇場：東京・歌舞伎座
日程：2025年7月5日～26日　※18日は休演
昼の部　午前11時～
夜の部　午後5時～
『蝶の道行』は夜の部で上演

『火の鳥』
あらすじ：永遠の力を持つ火の鳥を探す旅にでる兄ヤマヒコ（染五郎）と弟ウミヒコ（團子）。次期王位の座をかけて闘う二人。演出・主演を坂東玉三郎がつとめる話題の新作。

劇場：東京・歌舞伎座
日程：2025年8月3日～26日　※12日、20日は休演

第一部　午前11時～
第二部　午後2時15分
第三部　午後6時15分～
『火の鳥』は第二部で上演

取材・構成／バイラ歌舞伎部　
撮影／尾身沙紀〈io〉　
ヘア＆メイク／桂川あずさ（染五郎さん）、森 智聖（團子さん）　
スタイリスト／中西ナオ　取材・文／佐藤裕美

（染五郎さん）ブラウス￥38500・パンツ￥41800／サーディ ヴィジョンピーアール（ガラアーベント）　その他／スタイリスト私物
（團子さん）シャツ￥24970／アバハウス 池袋パルコ店（アバハウス）　ジャケット￥72900／デザインワークス 六本木ヒルズ店（デザインワークス）　靴￥33000／アバハウスインターナショナル（アルフレッド・バニスター）　その他／スタイリスト私物