従来の婚姻スタイルにとらわれず、ライフスタイルに合った結婚生活を送る夫婦にインタビュー。それぞれが導き出したふたりらしい“結婚の形”とは!? 今回は、別姓で生活するため「ペーパー離婚」し事実婚を選んだ二人にクローズアップ。
《事実婚》別姓で生活するため「ペーパー離婚」したふたり
DATA
□出会い 友達の友達
□交際期間 1年
□結婚 2019年に法律婚。2020年にペーパー離婚し事実婚へ
BLAST Inc. CEO
石井リナさん(33歳)
現代アーティスト
三澤亮介さん(32歳)
“夫婦別姓”を求めるふたりが対話を重ねることで導き出した事実婚という今できる最良の選択
法律婚による改姓で失われたアイデンティティー
世界で唯一、“夫婦同氏”の義務がある日本。石井さん、三澤さん夫妻は結婚1年目に“夫婦別姓”を選択するため、法律婚から事実婚に移行した。
石井 もともとは、お互いに夫婦別姓を希望していました。でも、事実婚では共同親権が持てなかったため、将来子どもができたときのことを考慮し、私が彼の姓に合わせる形での法律婚を選びました。ところが、公的書類の提出時や病院の受診時など、日常のあらゆる場面で、相手の姓で呼ばれるたびに、自分のアイデンティティーが失われていくのを感じたんです。また、女性のエンパワーメントを掲げる活動をしている自分自身が、家父長制に加担しているような感覚にもなり、耐えられなくなって、私からパートナーに「ペーパー離婚」を切り出しました。
三澤 リナを見ていて、僕も苗字が一緒であることがなぜ必要とされているのかと、モヤモヤが募っていました。別姓に戻すべきではと考えていた矢先だったので、提案に賛成しました。
現在、結婚して姓を変える人は、女性が圧倒的多数で、全体の約95%。ペーパー離婚という決断に対する周囲の反応は、男女間で違いがあったそう。
三澤 姓の変更に直面したことのある女性からの賛同が多く、改姓経験のない男性からは、「そうなんだ」といった薄い反応が目立ちました。自分ごととして捉えていない感じでしたね。
パートナーシップとは自立した大人同士が結ぶ契約
「事実婚」への移行にあたって、懸念したことはまったくなかったという。
石井 戸籍上の離婚で「バツイチ」になることは気にしなかったし、私たちの関係性についても不安はありませんでした。私はパートナーシップを、自立した大人同士が結ぶ契約だと考えていて、その時々で自分たちに合うスタイルを話し合い、選べばよいと思っています。今は、自分たちを大切にするために、「夫婦別姓」ができる事実婚を選びましたが、もし将来、法律婚のほうが、自分たちに適していると感じれば、またその選択をする可能性もあり得ますね。
三澤 僕は、どんな婚姻形態であれ、血縁関係のない人間と生きていくことの本質は、“心のつながり”だと思っていて。法によるしばりがない事実婚は、それがより試されている気もします。
従来の価値観に左右されないよいパートナーシップを結ぶコツは、“対話”。
石井 やっぱりお互いを尊重し、同じ方向に向かって足並みをそろえることは重要。私たちは、自分自身や社会のことなど、日々意見交換をしています。
三澤 意見が似ている部分もあれば、異なる部分もある。そこを認め合えば良好な関係が築いていけると思います。
撮影/森川英里 取材・原文/海渡理恵 ※BAILA2024年8・9月合併号掲載