仕事を続ける中でお金の大切さがわかってきたからこそ、投資にハマりすぎたり、逆に節約だけで人生が終わるのはむなしい。一度しかない自分の人生を豊かにするために、最新のマネーリテラシーを身につけよう!
ファイナンシャルプランナー
高山一恵さん
Money&You取締役。女性向けWebメディア『FP Cafe』『Mocha』やYouTube「Money&You TV」の運営、女性にお金の知識を伝えるための講演や執筆など幅広く活躍。24万部のヒット作『はじめてのNISA&iDeCo』(頼藤太希氏との共著・成美堂出版)のほか著書多数。
金銭感覚をアップデート中
編集T
数々のマネーテーマ企画を経て、’24年からNISAで積み立て投資を開始。資産の上下変動に一喜一憂している。
1.お金の価値観の変化と今のトレンド
お金は“ひたすら貯める”から“有意義に使い切る”の時代へ!
昭和、平成、令和と私たちのお金とのつきあい方はどう変わった? 「使い方」の変遷と今の価値観を考える!
【TOPIC1】日本は人口減少&不況を機にお金に対する価値観が変わった
「日本の生産年齢人口がピークに達したのは1995年。総人口は2008年を頂点に減少中です。こうした国内の人口減や不況の影響もあり、お金の価値観も1990年代から少しずつ変化。“いっぱい働いて稼ぎ、新しいモノを買う”スタイルから、“節約し、現金を蓄える”のが主流となりました。そして2020年代に入り、また新たな価値観へと転換の兆しが。さらなる人口減少が見込まれ、将来の社会保障は不透明なままではある中で、“老後の備えも大事だけど、今もちゃんと楽しんでおきたい”と思う人が増えている気がします」(高山さん、以下同)
日本の人口推移とマネーリテラシーの変化
バブル全盛期
1986年~1991年頃
人口約1億2300万人(1990年)
好景気に沸く世の中。稼いで使う時代!
国の経済が右肩上がりとなり、会社員の給料もアップ。人々の消費行動も活発化。特にブランド品や海外旅行などそれまで"贅沢"だったモノやコトが身近に!
平成不況→デフレ
1992年〜2020年頃
人口約1億2808万人(2008年)
景気後退の中、日本人の総人口はピークに
1991年にバブルが崩壊。経済が失速するとともに雇用状況も不安定に。不況から給料や物価が下がり続けるデフレが続き、「節約」ありきの消費活動が当たり前に。
少子化とインフレ
2021年〜
人口約1億2378万人(2024年)
モノやサービスの価格が高騰中。給料は?
人口減少による労働力不足が顕在化し、同時にインフレも加速中。誰もが将来への不安を抱える中で、「かけがえのない今を楽しむ」という新たな価値観も生まれている。
【TOPIC2】今、お金の使い方は“自分軸”の時代に
「経済が右肩上がりだったバブル期の頃までは、“新型のテレビが出たらみんなが買う”、“流行っているモノやコトには、とりあえずお金や時間を使わないと!”というような、世の中の価値観に合わせた消費の仕方をしている人が多かったと思います。でもその後の経済低成長の時代とライフスタイルの変化を経て、お金の使い方が激変。この30年の間で人々の生き方や価値観、趣味も多様化した結果、おのおのの暮らし方の中で、何が欲しいか・何が欲しくないかを判断できるようになりました。たとえば自分の“推し”にお金を使ったりと、消費も自分軸へと移ってきていると思います」
Q.お金に関する考え方で、当てはまるものは?(複数回答可)
投資で賢くお金を増やしたい 43人
一生大事にできるものは高くても買いたい 43人
お金の使い道で後悔したくない 38人
経験にお金を使いたい 35人
節約してでも貯金をしたい 26人
消耗品は安い物でもいい 24人
たくさん稼いでたくさん使いたい 20人
老後資金を貯め切って早くリタイアしたい 18人
貯金が最優先 15人
なるべく子どもや子孫に財産を残したい 11人
お金を使い切って死にたい 10人
借金をしてでもいい生活をしたい 1人
(回答数76名 2024年8月16日~8月23日に実施)
バイラ読者を対象にしたアンケートでも、「高くてもいいと思えるものを買いたい」「使い方で後悔をしたくない」「経験することにお金を払いたい」など、自分軸を大事にする人が多かった!
【TOPIC3】アメリカ発“DIE WITH ZERO”の考え方が浸透中!
Q.“DIE WITH ZERO”を知っていますか?
「自分軸の金銭感覚の先にあるのが“お金は使えるときに経験へ投じたほうが有意義”という話題のマネー本『DIE WITH ZERO』に代表される価値観です。人生が終焉を迎えるときに数千万円の貯金があっても、使える額や支払い先は限られますよね。また、同じ100万円で旅行をするにしても、30代と70代では行ける場所やできること、旅先で感動する力も変わってきます。特にバイラ読者の年代は行動力も感性も高まっている頃。人生の思い出が節約&貯金だけになっていいのかよく考えて、バランスよくお金を使っていきましょう!」
注目!
『DIE WITH ZERO 人生が豊かになりすぎる究極のルール』
人生で最も豊かで賢い生き方は、蓄財に捉われずに、若いうちから経験に投資し、お金を楽しく“使い切る”こと――。新たなお金の価値観を提示し、話題沸騰となっている一冊。
ビル・パーキンス著 児島 修訳
ダイヤモンド社 1870円
2.100人に聞いた!お金を使ってよかったコト&モノとその値段
バイラ読者100人に調査!リアルケースから消費の価値観をアップデート
バイラ読者たちはどんなことにお金を使い、充実感を覚えている? バイラ読者100人に調査! その成功例&失敗例から見えてくる、後悔のない消費とは。
経験
海外留学や旅行など「安くはないが、かけがえのない思い出になる」ことへの出費には満足感が。
学生時代の海外留学 70万円
「オーストラリア40万円、タイ30万円へそれぞれ、1カ月ずつ。自分の世界が広がったことはもちろん、世界中に友達ができて今でも交流が続いているのが嬉しい」(33歳・メーカー)
コロナ禍明けの海外旅行100万円
「社会情勢や自分の健康状態によって、この先“行きたくても行けない”場合があると感じ、奮発してヨーロッパ周遊旅行に。結果、かけがえのない経験になりました。旅行は、行きたいときに行く、行けるときに行くことが大事だなとあらためて実感!」(36歳・会社員)
ワンランク上の旅館宿泊15万円
「思い切って、老舗の高級温泉旅館に宿泊。部屋の居心地のよさとホスピタリティの高さに感動し、想像以上のリラックス効果が得られました。今でもいい思い出として心に残っています」(38歳・事務職)
海外フォトウエディング150万円
「憧れだったのでケチらずにやりたいことをすべてやりきり、一生の思い出に。後悔のない使い方ができ、同時に働いてお金を稼ぐ意味をいちばん感じられた経験」(34歳・マスコミ)
チャレンジングな転職で下がった年収120万円
「20代の頃、当時の年収を下げてでも選んだ挑戦。今では実を結び、倍近くの年収まで上がりました。経験や出会い、成長を考えると安い投資だったと思っています」(34歳・PR)
自分にはムダだったこと
日々の飲み代 30万円
「ちょこちょこした出費ですが、ちりつもで使っているなと。振り返って“ムダだった”と思うなら、行きたくない会は断ったほうがいいと感じています」(31歳・医療事務)
離婚した結婚式 350万円
「その時点では想像できなかったから仕方のない部分もあるけれども、離婚した今となっては、本当に意味のないイベント&出費だったと思ってしまう」(35歳・事務職)
学び
キャリアアップした人、資格取得が心の安定になった人など、学び系への投資も身になる例が多い!
キャリアアップのための大学院進学200万円
「時間や労力、入学後もさらにお金がかかったけれども、可能性やスキル、人脈が広がったことを思うとやってよかった! 変化の多い時代ですが、自分の将来やキャリア構築が楽しみに!」(33歳・IT)
仕事に役立つ講義受講と検定試験50万円
「証券アナリスト1次、2次そしてキャリアコンサルタントの資格を取得。キャリアを再考慮するきっかけになったことに加え、今後の自信にもつながった。無形ではあるけれど、とてもいいお金の使い方だったと思います」(29歳・外資金融)
国家資格受験のための教材費5万円
「合格したのち、その資格を生かした仕事に就いているわけではないけれども"いざとなれば別の職種に転職できる!"と、気持ちや将来の選択肢に余裕が持てるように。ケチらずにお金をかけた価値はあったと思う」(33歳・事務職)
薬剤師資格取得800万円
「薬剤師は住む場所が変わっても就職先が見つかりやすいので、長い目で見たら元が取れる。心の安定面から考えても自分のためになる出費だったと思う」(39歳・医療)
自分にはムダだったこと
やみくもな資格取得10万円
「とりあえずあったら便利かな?とあまり調べずに教材を買ったが、結局使いこなせなかった」(35歳・事務)
続かなかった英会話スクール5万円
「結局続かず、身につかなかった。教材代とレッスン費用がムダに……」(39歳・レジャー業)
美容・医療
値段の安い・高いにかかわらず、自己肯定感が上がったり、日々の生活が快適になったと感じている人が多数。
レーシック手術 70万円
「近視がひどく乱視もあったので、あれこれオプションを付けてこの価格。安心はお金に変えられないと思い、奮発してよかった!」(34歳・PR)
歯列矯正 12万円
「35歳から始めてまだ進行中。ずっと気になっていたので、コンプレックスが解消できてよかった!」(38歳・語学関係)
医療脱毛60万円
「効果を感じることができてお手入れがラクに。ファッションも楽しめるようになり、満足度大」(36歳・経理)
ICL手術(眼内レンズ)50万円
「人生でどれだけコンタクトレンズ代がかかるか計算したらお得だった!」(29歳・マスコミ)
スキンケア約3万円
「月に約3万円の美容液を使用中。自己満足かもしれないけど、肌の潤いやリフトアップを実感!」(34歳・事務)
小陰唇縮小手術37万円
「自転車に乗るときや下着がこすれて痛くなることもなく、気にすることがなくなり生理のときも快適に。悩みの種がひとつ減り生活の質が上がったので、もっと早く受ければよかったと思った」(37歳・販売員)
ボディメイク108万円
「ホットヨガとバイクフィットネスに月約3万円。2年通ったら体力がつき、メンタルもスッキリ!」(32歳・金融)
自分にはムダだったこと
痩身エステ50万円
「ストレスですぐリバウンドしてしまい、お金をドブに捨てたようなものだった」(38歳・出版)
美容医療の毛穴治療 25万円
「期待していたほどの改善が見られず。ほかのやり方があったかもと後悔した」(35歳・会社員)
モノ
自分だけのご褒美に対する幸福感や、手に入れて初めて「お金を出してよかった」と実感した場合も!
バッグ 80万円
「自分へのご褒美に買った憧れブランドのバッグ。持つと気分が上がり、まさに一生モノに」(35歳・IT)
マットレス 45万円
「体に合わせたオーダーメイドものを購入。睡眠の質が一気に上がりました!」(38歳・製造事務)
ポルシェの車 1000万円
「車は必須ではない生活ですが、特にこの真夏や、子どもができたことで移動の快適度が180度異なるため購入してよかったもののひとつです。どうせ買うなら……とデザインや見た目も気に入ったものを選んだので、乗るたびに気分も上がります」(29歳・外資系金融)
ドラム式洗濯機 35万円
「乾燥機能が優れているものに買い替え、洗濯時間が短縮。生乾きを防げて、ストレスが軽減されました」(33歳・IT)
ロレックスの時計 100万円
「父から二十歳の誕生日にもらったものをなんと紛失してしまい、大人になってから同じものを自分で購入。価値が落ちにくいと感じている上、大切な思い出でもあったので、思い切って買ってよかった」(34歳・PR)
ソファ 15万円
「在宅ワークなので、住む場所や家具にお金をかけていますが、快適さも満足感も違うのでよかったと思っています」(39歳・自営業)
自分にはムダだったこと
愛猫のための自動トイレ 5万円
「ニオイケアや掃除がラクになると思って購入するも、猫たちは“隠れんぼの場所”と認定! 一日中トイレにこもって遊び、猫砂も排泄物も部屋に撒き散らし……即処分となりました」(33歳・IT)
空気清浄機 5万円
「性能はいいものの掃除がとにかく面倒。使う意欲が落ち、結局しまいっぱなし状態に」(39歳・会社員)
中途半端なバッグ 12万円
「いちばん欲しい35万円のバッグをあきらめて、いったん物欲を抑えるために背伸び程度のバッグを購入したが、逆効果。結局35万円のバッグが欲しいままで、再度貯金中……」(31歳・インフラ)
《総論》安くてもムダなものには後悔がつきまとう! 金額より大事なのは自分の「納得感」
バイラ読者からの意見を集めてみると「使ったことでいかに自分が満足感を得られたのか」が大事だという結果に。逆に「安さだけに目がいき、本心ではあまり納得せずにお金を払ってしまって後悔した」という声もちらほら。自分が本当に求めているコト・モノを見極めて、そこに資金を投じるのが、大人にとっての適性価格&賢い消費行動なのかも!
3.新NISAと積み立て投資の正しい知識をおさらい!
2024年の新制度開始からスタートした人も多い新NISAでの投資運用。株価が変動したときは? そしてこれから始める人は何を意識すればよい?
新NISAを始めたが投資信託の含み益がマイナスに!どうしよう!?
《Advice》2024年8月初旬の暴落はアメリカ経済のネガティブなムードがカギになった
「今年8月の暴落には複合的な理由があるのですが、中でも大きかったのが、月始めにアメリカで発表された経済指標。数値が思わしくなかったことを受けて経済悪化の不安が高まり、世界中で株の売却が加速。それにつられて日本株も売られてしまい、一気に株価が暴落しました」
【キホンのキ】 S&P500やオール・カントリーなどの世界の株式市場に投資する商品はつまり「円を売って外貨を買う」ということ
「S&P500はアメリカの主要企業500社、オール・カントリーはアメリカを含む全世界の株式市場の値動きに連動した投資信託です。私たちはこれらの商品を日本円で購入しますが、投資先は日本以外の国がメイン。証券会社を通じ、円を売り外貨を買っているので、ある程度は世界経済の流れを把握しておくといいでしょう」
【たとえば投資先が海外(アメリカ)だったら】
つまり
手持ちの円を売って→ドルを買って投資をする
外貨(ドル)の需要が増加! 円安・ドル高に
ちなみに、逆のことが起きると
円を買って投資をする←手持ちのドルを売って
円の需要が増加! 円高・ドル安に
《Advice》下がっているからといって慌てて手放すのはNG!現金化の軸は「自分が必要なとき」
「8月の株価暴落と金利動向の影響で円安から円高となり、マイナスに驚いた人は多いはず。でも急に下がったからと焦って手放すのは損。長い目で見れば復活しない市場はめったにないので、値動きに一喜一憂するのではなく、売りどきは“まとまったお金が必要になったとき”など、自分軸で運用を続けましょう」
【キホンのキ】積み立て投資で慌てないために「ドル・コスト平均法」を理解せよ!
「毎月決まった金額で購入し続ける積み立て投資は、ドル・コスト平均法という仕組みが当てはまります。株価が下がったとき、評価損益が下がったことばかり注目しがちですが、実は1株の金額が安くなったことにより、その月は同じ金額で多くの口数を買いつけすることができているのです。また一定額の買いつけをコツコツと続けることで平均取得単価を下げる効果があり、上昇局で利益を出しやすくなります」
【りんごで考えるドル・コスト平均法】
たとえば…価格が変動するりんごを毎日1000円出して買えるだけ買う
価格が100円のまま毎月10個ずつ購入していた場合、100×40個で4000円。下がったときに多くのりんごが買えているので、結果的に910円の利益に!
リスクもあるとわかったところで…今からでも始めるべき?
《Advice》非課税で投資ができるのは、やはり メリットが大きい!小額・つみたて投資枠から始めてみては
「株式投資などの投資は特定口座で買いつけをした場合、利益が出ると約20%の税金が引かれます。NISA口座を利用した場合は、同じ利益が出た場合でも税金は非課税に! 『それでも何だか不安』と思う方は、まずはつみたて投資枠を使い、ごく少額から投資信託の買いつけを始めてみるといいでしょう」
【キホンのキ】
「2024年1月からスタートした新NISAは、つみたて投資枠と成長投資枠、合わせて年間360万円の投資が可能。全体で1800万円まで投資でき、その利益が非課税となり、無期限で保有できる仕組み。2023年までの旧NISAや、特定口座を利用した株式投資などよりも、メリットが大きい」
Q.どうして日本政府はNISA制度をつくったの?
A.個人の資産形成を促すためだと私は考えています
「国も国民の老後を考えて年金制度をつくっているので制度自体が破綻する可能性はないと考えていますが、老後資金のすべてを年金で賄うには厳しい時代に突入しています。個人でも資産を増やす努力をしたほうがいい、という意向だと思います」
《Advice》上がり下がりに振り回されたくない初心者におすすめなのは 安定型のバランスファンド
「“株の上下変動に恐怖心がある”という人は、国内外の債券など株以外の金融商品を組み込んだバランス型の投資信託を買いつけてみましょう。年間の平均的なリターンは株式のみの商品よりも低くはなりますが、その分、値動きの変化が激しくなく安定傾向にあるので、資産形成の初心者におすすめです」
【キホンのキ】年金保険群の一部を運用している機関と同じバランスの投資信託を購入してみる
「実は我々の年金の一部もGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)という機関によって運用されています。初心者は、この“大きく減らさずに安定して増やすお金”の投資先の配分(左)を真似た投資信託の商品を選ぶのも手」
Q.米国株式(S&P500)や全世界株式(オール・カントリー)などの外国の投資信託は、今後どうなるのでしょうか?
A.長期的に見て、下がり続けることはないと考えています
「2024年前半の上昇相場からの8月の暴落話を聞き『外国の投資信託は怖い!』と思った方もいるかもしれませんが、私は否定的に捉えていません。投資の基本は“成長にお金を投じる”こと。先進国の中でも人口が増え続けているアメリカや、産業の伸びしろがある諸外国へ分散投資をするメリットは大きいです。長期目線から考えても、下がり続けることは考えにくいと思います」
4.金融政策で住宅ローンはどうなる? 金利のキホンを再履修
「家を購入したい」など、高額の買い物をするときに利用するのがローン。銀行などの金融機関から借り入れをするときに気になるのが金利のこと。2024年、政策金利が17年ぶりに「マイナス」から「ゼロ」へ。この金融政策で住宅ローンはどうなる? あらためて考え方や仕組みをおさらいしよう!
《Advice》金利が上がるとはいえ、変動型ローンの月々の返済額が急に増えることはない!
「日銀は2024年の3月、17年ぶりにマイナス金利の状態を解除しました。この影響で、住宅ローンの際に発生する、個人が抱える金利も上昇傾向に向かいます。とはいえ、現時点の国内の経済状況では、急激な金利上昇は現実的ではありません。変動型ローンの返済額が、爆上がりする可能性は低いと思います」
【キホンのキ】 住宅ローンの種類をおさらい
固定金利型
額内で利息の割合は変わるが、完済まで毎月の返済額が同じタイプ。市場経済に左右されず、返済額を一定にしたい人向き。
変動金利型
半年に一度、利子の見直しがあるのが変動金利型。現在は0.5%前後と史上最低水準。ただし政策の影響で今後は微増方向へ。
固定金利期間選択型
5年、7年、10年など一定期間の金利は固定、その後は変動金利に変更可能なローン。両方のメリットを得ることができる。
【変動金利と併せて知りたい2つのルール】
5年ルール
つまり5年間で未払いが発生。予定よりローンが長引く
最初の5年の返済は固定だが、金利が上昇すると返済額内で利子の割合が増加。元金返済が遅れて、長期化する可能性が
125%ルール
金利の変動による返済額の見直しは6年目からになるが、その際どんなに金利が上昇していたとしても支払額は前回の1.25倍までしか増やせない。返済額の急な増加を防ぐための規定。ただし1.25倍を超えた分はのちに支払う必要あり
《Advice》金利は景気や物価、“お金の需要”などに合わせて変化。市場を調整する役割も
「景気がいいと物価が上がり、経済活動も拡大傾向に。するとお金を借りる機会が増えてお金の需要が高くなり、金利は上昇。また、金利が低い=利子が安くお金が借りやすい&返済もしやすい状態、ということになるため、景気が悪いときの経済活動を促す政策として利下げを行うなど、市場を調整する側面も」
【キホンのキ】金利の基本の考え方
企業⇄銀行であれ個人⇄銀行であれ、お金を貸す側は“元本+利息をつけて返してもらいたい”というのが基本の考え方。元本に対する利息額の割合を金利と呼び、たとえば元本1万円の利子が1000円の場合、金利は1000÷10000×100=10(%)となる
【金利が年10%で、1年後に返済する場合】
Q.マイナス金利ってなんですか?
A.0%よりも低い利子。不況下での経済活性化には有利に動くことも
「金利が0%を切った状態のことです。ただし適用されるのは日本銀行が民間の金融機関から預かる当座預金の一部に対して。企業がお金を借りやすい状況をつくることで経済の活性化を狙う、デフレ脱却政策のひとつでした」
5.【お金の価値観アップデートQ&A】貯金、資産運用、老後資金のこと
手元にある貯金の行方、バランスのよい資産運用の比率、気になる老後資金についてなど、悩みを一気に解決!
Q.銀行口座にただ置いているだけの300万円。どうすべき?
A.1年分の生活費を確保し、残りを個人向け債券やネット銀行に移行しては?
「生活費の半年~1年分は、現金として手元に残しておきましょう。そのほかで10年以上使う予定がないお金ならば、投資に回してもいいですね。ただし企業にお金を投じる株式投資は元本割れのリスクが。抵抗感がある人は、元本割れがなくて期間や利回りが決まっている個人向け国債を購入し、お金を増やす経験をしてみては。またマイナス金利解除に伴い、ネット銀行などは金利が上がってきているので、そちらに移行するのも◎。派手さはありませんが多少はお金が増えると思います」
Q.貯蓄型生命保険は入るべき?
A.今からなら掛け捨て型でOK。すでに加入している場合は予定利率の確認を
「貯蓄型生命保険は手数料や運用コストが高いです。今は運用の利回りも低く、新たに入るのはおすすめしません。保険は掛け捨てのみで大丈夫です。とはいえ貯蓄型生命保険は、30年前は予定利率が3%〜5%くらいでした。親が子どもの名義で契約している可能性もあるので、確認してみましょう」
Q.遺族厚生年金の改定はどうなるのでしょうか?
A.男女格差をなくす方向に徐々に変わっていきそうです
「現在の法律での遺族年金の場合、夫を亡くした30歳以上の妻は終身で受給ができます。一方で男性は、55歳以上からが対象年齢となり、支給は60歳からになります。共働きが進んでいる今の社会では、男性にとって不平等な制度なので、改正される可能性は高いと思っています。何となく女性側としてはモヤモヤしそうですが、悲観することはないですよ。性別に関係なく、個人で稼ぎ、資産を築ける可能性が増えたことの裏返しだと思います」
Q.景気って、なにがどうやって変わるものですか?
A.実は人の気持ちで動く部分が大きいんです
「デフレ経済と不況の中で育ち、節約しながら働いてきたバイラ読者には、今のインフレや物価高に戸惑うかもしれませんが、人は“世の中の羽振りがいいぞ”と感じられれば、消費活動にも前向きになるし、そのことで企業の収益が上がり、経済も上向きになっていく。景気は、人間の気持ちや雰囲気に左右される部分が大きいんです。だから私たちも、気持ちを上げて、納得いくようにお金を使いましょう。とはいえ、お給料も上がってほしいですね(笑)」
Q.結局、定年までにいくら貯金したらいいのでしょうか?
A.約2000万円はあると安心ですが、持ち家やリタイア後のパート・アルバイトで賄えることも
「総務省が示す“年金受給を前提とした最低限の生活”の額を参考にすると、毎月3万円は受給額から足りない計算に。このマイナス3万円を30年分(老後を65歳〜95歳と設定)医療費なども考えると約2000万円あると安心という勘定にたどり着きますが、実際は人それぞれ。2000万円貯められなくても持ち家の人は家賃の支出がないし、65歳以上でもパートやアルバイトなどで稼げるケースも。これからの時代は“定年以降に健康でいること”のほうが重要かもしれません」
Q.お金の知識がまったくなく、身につけたいです。まず何をすればいいですか?
A.YouTubeやTikTokから学ぶのもあり!大事なのは一人の言うことだけを信じすぎないこと
「自分が親しみやすいメディアを使って情報収集をしましょう。YouTubeやTikTokから学ぶのもいいのではないでしょうか。ただしインフルエンサーの場合は、一人だけの意見を盲信するのは危険。その人の成功話や資産運用法が万人に通用するとは限りません。必ず複数の人の意見や見解を聞いて。ある程度理解力が上がってきたら、書籍や金融庁のサイトなども確認し、偏りのないマネーリテラシーを身につけましょう」
Q.資産はどんなバランスで持っておくのが理想ですか?
A.現金をある程度キープした上での「コア・サテライト戦略」がおすすめ
「やはり何かあったときの備えとして、ある程度の現金は手元に残して。その上で資産運用の割合となると、7割~9割は市場の指数連動型やバランス型の投資信託や債券、定期預金、不動産などの比較的安定度の高いもので固めておきましょう。残りの1割~3割で少し冒険し、仮想通貨のような値動きに幅があり、タイミング次第では大きく増える可能性が高い商品に挑戦してみても。これを『コア・サテライト戦略』と言います。安定のコアと、冒険のサテライトを上手に振り分けてみて」
高リスク
●株式
●FX
●仮想通貨など
低リスク
●国債
●定期預金
●不動産●インデックスファンドなど
【編集後記】「自分らしく生きていくためにも、マネーリテラシーを学ぶのは大事!」
「消費の仕方とお金の増やし方について新しい情報や正しい知識を学ぶことは、自分らしい生き方につながるとあらためて実感。お金に振り回されずに過ごしていきたいからこそ、アップデートしていくことが大事だと思いました。無理なく投資もしながら、ファッションもメイクも経験も、人生が楽しくなることにはお金を使っていきたい!」(編集T)
イラスト/サレンダー橋本 取材・原文/石井絵里 ※本文に記載されている金額、数字、データ等は2024年9月末時点のものです ※BAILA2024年12月号掲載